翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その13

今回は、「仮想通貨の取扱いに関する規則」の要点を紹介します。この規則は総則、取扱審査体制、新規取扱、取扱開始後の対応、取扱中止等、その他という6章計13条により構成されます。

「仮想通貨の取扱いに関する規則」の目的

この規則は、会員が仮想通貨の売買等その他の仮想通貨関連取引の対象として取り扱う仮想通貨(以下「取扱仮想通貨」という。)の決定及び廃止その他仮想通貨の取扱い業務に関し、必要な事項を定めることを目的とします。ちなみに、この規則における「会員」とは第一種会員を指します。

「仮想通貨の売買等」の範囲

この規則によると、主たる適用対象となる「仮想通貨の売買等」は、以下のとおりです。

1 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換(仮想通貨又は決済資金の貸借を伴う仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換を含みます。)

2 仮想通貨又は仮想通貨指数を利用したデリバティブ取引

3 上記の1又は2の行為の媒介、 取次ぎ又は代理

4 上記の1から3の行為に関し行われる仮想通貨の保管を指します。

すなわち、資金決済法における仮想通貨交換業の定義範囲をいわゆるデリバティブ取引にまで拡張した範囲となります。

また、注意すべきは、仮想通貨の売買等以外の仮想通貨関連取引に関しても、例えば、仮想通貨の貸借サービスや仮想通貨のウォレットサービス等の利用者保護を図る必要のある取引については、当該取引によって利用者に生し得るリスクの内容に応じ、この規則の定めに従って取扱審査や取扱開始後の対応を図る必要があります。

取扱いに慎重な判断を要する仮想通貨

この規則によると、会員は、取り扱おうとする仮想通貨の特性に鑑み、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合には、その適否を慎重に判断しなければなりません。

(1) 法令又は公序良俗に違反する方法で利用されている又は利用されるおそれか高い仮想通貨

(2) 犯罪に利用されている又は利用されるおそれが高い仮想通貨

(3) マネーロンダリング及びテロ資金供与に利用されている又は利用されるおそれが高い仮想通貨

会員は、取り扱おうとする仮想通貨の特性及び会員自身の態勢に鑑み、次の各号のいずれかに該当すると認められる場合には、当該仮想通貨を取扱ってはなりません。

(1) 移転・保有記録の更新・保持に重大な支障・懸念が認められる仮想通貨

(2) 当該会員において、公認会計士又は監査法人による適切な監査が実施できない又は困難な仮想通貨

(3) 当該会員において、システム上その他安全な保管及び出納ができない又は困難な仮想通貨

(4) 前各号のほか、当該会員において資金決済法上の義務を適正かつ確実に履行できない又は困難な仮想通貨

ちなみに、第1号については、取り扱おうとする仮想通貨の特性に鑑み、移転・保有記録の更新・保持に重大な支障・懸念がある仮想通貨については、利用者の財産的利益の保護が困難であることから、取扱いを禁止することとします。また、第2号から第4号については、取り扱おうとする仮想通貨の特性及び会員自身の態勢に鑑み、当該会員において、当該仮想通貨を取扱った場合に、資金決済法上の義務を確実に履行することができない又は困難と認められる場合等において、取扱いを禁止するものです。                        

    (次回へ続く)