翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その8

銀行や証券会社と仮想通貨交換業者との関係

前回は仮想通貨交換業に関する罰則について紹介したが、今回は銀行や証券会社と仮想通貨業者との関係について詳しく紹介したい。銀行の業務は、固有業務(預金の受入れ、資金の貸付け、為替取引)、一定の付随業務、及び法律上認められる他の業務(他業証券業務等及び法定他業)に限定されており、これら以外の業務を行うことは認められていません(他業禁止規制)。仮想通貨交換業は、固有業務、法律上認められる他の業務のいずれにも該当せず、付随業務として列挙された業務にも該当しません。もっとも、銀行法では付随業務につき、具体的な列挙業務以外に、銀行は「そのたの銀行業に付随する業務」も行うことができるとされていますので、仮想通貨交換業が「その他の銀行業に付随する業務」として認められるかが問題となります。この点仮想通貨の販売、投資、勧誘等の業務が法令で銀行に認められている業務に該当するかどうかは、その業務について、銀行の固有業務との機能的な親近性やリスクの同質性があるかどうか、また、その業務規模が銀行の固有業務に比して過大ではないかなどの観点から業務の態様に応じて判断されていくべきものであるとの見解が示されています。

また、銀行本体ではなく、銀行の子会社または銀行持株会社の他の子会社が仮想通貨交換業を営むことができるか否かについて、銀行または銀行持株会社が子会社とすることのできる会社の類型は、銀行法で限定列挙されており、仮想通貨交換業を営もうとする会社が、当該類型の1つである「金融関連業務を専ら営む会社」に該当するか否かが問題となります。この点、「金融関連業務」とは「銀行業、有価証券関連業、保険業又は信託業に付随し、又は関連する業務として内閣府令で定めるもの」であるところ、これに関する銀行法施行規則17条の3第2項の定めのうち、仮想通貨交換業が該当する可能性がある業務は、「法第10条第2項に規定する業務」と考えられますので、結局、仮想通貨交換業を銀行が付随業務として行うことができるのであれば、当該業務は子会社の行うことができる金融関連業務に該当することになると思われます。

第一種金融商品取引業者が行うことのできる業務は、金融商品取引業のほかは、付随業務、及び届出業務に限定されており、これ以外の業務を行うためには内閣総理大臣の承認を受ける必要があります。そこで、証券会社が仮想通貨交換業を行うことができるか否かについては、付随業務または届出業務に該当するか、あるいは承認業務として認められるか否かによることになります。

この点、仮想通貨交換業は、届出業務の類型には該当せず、「その他の金融商品取引業に付随する業務」に該当するかも必ずしも明らかではありません。このため、仮想通貨交換業を第一種金融商品取引業者が行おうとする場合には、現実的には、個々のケースに即して、業務が公益に反すると認められないかどうか、あるいはリスク管理の観点から問題がないかなどの観点から当局の承認の可否が判断されるものと思われます。

次回へ続く