翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その4

 

仮想通貨と「ブロックチェーン」

「ブロックチェーン」はビットコインを支える基幹技術であり、「ブロックチェーン」という用語は、「分散型台帳(Distributed Ledger)」が「ブロックチェーン」を含む形式で広く使われ、支払、決済及び関連経済活動において、かつてのインターネットの登場のようなインパクトを与える可能性がある技術として、民間事業者のみならず、中央銀行などの政府機関や国際機関からも注目されている。2016年に米国の連邦準備理事会(FRB)、証券監督者国際機構(IOSCO)などでブロックチェーンや分散型台帳技術の研究を推進することが公表された。日本でもほぼ同時期に、全国銀行協会、日本銀行、日本取引所グループ、金融庁などがブロックチェーン技術⁄分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology、以下「DLT」という)を活用する金融サービス、金融分野におけるDLTの活用可能性などに関連する研究を進めることを発表した。

ちなみに、DLTの下で仮想通貨を代表する「ビットコイン」を再評価すると、ビットコインとは、その残高の記録及び更新の完全性がシステムにより担保された、ビットコインという価値記録に関する世界中で共有されている帳簿システムということになる。したがって、DLTのおおもとは、ビットコインであることは広く知られた一方、仮想通貨が注目を集めるようになったのは、「ブロックチェーン」の登場によるところが大きいともいえる。現在、DLTに対する理解が進みるとともに、仮想通貨を代表する「ビットコイン」と、これを支えるDLTを意味する「ビットコイン」の両方が世界中に広がっている。

 

「仮想通貨」の売買交換

仮想通貨に関する代表的なサービスは仮想通貨の売買と交換であり、上記のDLTに対する理解のとおり、ビットコインにおける帳簿の残高表示そのものは、単なるデータ記録に過ぎず、何らの価値も有しないが、そのデータ記録の変更に価値を認めた者同士が、帳簿の更新に対して何らかの対価を支払う場合、帳簿の残高記録に対して市場価値が創出され、この市場価値をもって不特定の者に売買する又は他の財産との交換を行うと、それは支払、決済の手段としての機能を持つことになる。

日本は2017年4月1日に改正資金決済法を施行し、「仮想通貨」による支払、決済の手段を法体系上に取り込むとともに、「仮想通貨」が支払、決済手段として機能するために必要な「交換」を専門に取り扱う事業を「仮想通貨交換業」として定義し、また、「仮想通貨交換業」に従事する者に対して登録制を採用し、該当する者を金融サービス業者として管理する法制を導入している。すなわち、改正資金決済法は、 DLTに表示された残高を、不特定の者に売買する又は他の財産との交換に用いることができるという通貨的な側面に着目した。

今回の上記に述べたように、ビットコインに代表される仮想通貨と「ブロックチェーン」の関係を究明し、次回から日本の「仮想通貨」の売買交換を専門に取り扱う「仮想通貨交換業」に関する法制度を紹介したい。

[次回へ続く]