翁 道逵 ベリーベスト法律事務所パートナー(中国弁護士)
日本の仮想通貨に関する法制度ガイド その2

 

「仮想通貨」規制法令の制定

2014年以降、国際的にはビットコインをはじめとする「仮想通貨」のビジネスが進められてきた。「仮想通貨」がその有用な可能性(移転の迅速性及び容易性、利用の匿名性など)が認識される一方で、通貨危機等に陥った国で自国通貨を忌避してビットコインに逃避する現象、違法取引の決済、マネーロンダリング、テロ資金の調達などに悪用される動きがある状況において、国際社会では問題視されるに至った。

このような中、2015 年 6 月8日のドイツのエルマウでのG7 サミットでの国際合意がなされ、2015年6月26日、この国際合意を受けたマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force 。略称FATF) がカイタンスにおいて、各国は「仮想通貨」と法定通貨を交換する交換所に対して、免許制または登録制による規制をすべきこととされ、顧客の本人確認義務などのマネーロンダリング、テロ資金の調達に関する規制も課された。

上記の国際的な動きとともに、日本では、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(2016年6月3日法律第62号。前回に述べた FinTech 法)が施行され、これによって、「資金決済に関する法律」(資金決済法)及び「犯罪による収益移転の防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)も改正され、2017 年4 月1日に施行された。

「仮想通貨」の定義

2012年、ヨーロッパ中央銀行が「未制御だが、特殊なバーチャルコミュニティで受け入れられた電子マネー」という暗号通貨の定義をはじめ、2013年、米国財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は「本物のお金」の対義語と位置づけ、どの司法組織においても法定通貨としての価値を持たないものとして、「仮想通貨」に関するガイダンスを発表した。その後、欧州銀行監督局は、2014年に「仮想通貨」を「デジタルな価値の表現で、中央銀行や公権力に発行されたもの(不換紙幣を含む)でないものの、一般の人にも電子的な取引に使えるものとして受け入れられたもの」と定義した。

さらに、上述のFATF のガイダンスにおいて、「仮想通貨」は交換の媒体、計算単位、価値の蓄蔵として、デジタルに取引可能であり、かつ機能するが、いかなる法域においても法定通貨としての地位を有しないものと定義されたが、法律用語として定義されたのは、日本が世界に先駆けた。

上述の「資金決済に関する法律」(資金決済法) 第2条第5項によると、「仮想通貨」とは、

1、「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」

又は2、「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」。

上記の定義のとおり、「仮想通貨」はデジタル通貨の一種としており、その特徴について次回に紹介したい。

   [次回へ続く]