~「日本のデジタル社会へ向けての課題と展望」その11~
「自治体DXとその具体化について」
藤原洋 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO 一般財団法人インターネット協会理事長

今回から、前回より連載を始めた日本型DXのうち動き出した行政DXの最初として、「自治体DX」について述べる。「自治体DX」は、日本政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が示された。このビジョンの実現のための住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村が実行するDXの具体化施策について述べる。

 

●自治体におけるDX推進の意義

①政府で決定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」の実行主体として市区町村を位置づけたこと。

②自治体が担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性の向上と業務効率化を図ること。

③データが価値創造の源泉であることについて認識を共有し、データの様式の統一化等を図りつつ、多様な主体によるデータの円滑な流通を促進することによって、EBPM等により、行政の効率化と共に民間のデジタル・ビジネスの新価値創出を図ること。

*EBPM:Evidence-Based Policy Making、統計や業務データ等客観的な証拠ベースの政策立案

 

●自治体DX推進計画策定の目的

①政府決定の「デジタル・ガバメント実行計画」における自治体の情報システムの標準化・共通化などデジタル社会構築に向けた各施策を効果的に実行するには、国が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体として、足並みを揃えて取り組む。

②総務省は、「デジタル・ガバメント実行計画」における自治体関連の各施策について、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化し、総務省及び関係省庁による支援策等をとりまとめ、「自治体DX推進計画」として策定し、デジタル社会の構築に向けた取組みを全自治体において着実に進める。

 

●自治体DX推進計画と対象期間

①2021年1月から2026年3月までを本計画の対象期間とする。

②本計画は、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討、デジタル庁の設置など国の動向を反映させるよう適宜見直しを行うとともに、自治体の取組状況に応じたPDCAサイクルにより、進捗管理を行う。

③総務省は、国の施策展開を踏まえつつ、業務改革(BPR)を含めた標準化等の進め方について、「(仮称)自治体DX推進手順書」として、2021年夏に提示する。

●市区町村のDX推進のため、都道府県に次の4点を特徴とする推進体制を構築するとしている。

①組織体制の整備として、首長、CIO、CIO補佐官等を含めた全庁的なマネジメント体制を構築する。

②デジタル人材の確保・育成のために全庁的なDX推進体制構築に外部人材の活用・職員の育成を推進する。

【国の支援策】総務省・デジタル庁の連携による「共創プラットフォーム」の創設・自治体職員への研修等の実施、新たに市町村が外部人材を雇用する場合の経費について特別交付税措置(措置率0.5)

③国の動向(標準仕様策定等)を踏まえ工程表の策定等による計画的な取組みを行う。

④都道府県による市区町村支援としてデジタル技術の共同導入、人材確保について支援を行う。

 

DX推進のための法改正を行うため、図1に示す公的個人認証サービスに着手している。

 

図1.公的個人認証サービスにおける本人同意に基づく最新の住所情報等の提供に関する法改正の概要

 

 

プロフィール

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学学長、東京大学大学院数理科学研究科連携客員教授。