日本のノーベル賞科学技術について(その24)~天野浩博士~
~ノーベル賞受賞以降もGaNの応用展開のリーダー~~青色発光ダイオードを世界で初めて輝かせた~
藤原洋 株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO

スウェーデン王立科学アカデミーは、2014年10月7日同年のノーベル物理学賞を赤﨑勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大学教授(1954年生まれ、当時60歳)に授与すると発表しました。青色発光ダイオード(LED)の発明と実用化に貢献した業績が高く評価されたのです。天野氏は現役の研究者であることから、その後も色々とご一緒になることが多くなりました。

授賞理由は「明るくエネルギー消費の少ない白色光源を可能にした高効率な青色LEDの発明」で、「20世紀は白熱灯が照らし、21世紀はLEDが照らす」とのこと。

LEDは1960年代に赤色、次に緑色も実現しましたが、青色は遅れ、あらゆる色の光を作り出せる「光の3原色」がそろわず、「20世紀中の実現は不可能」とまでい われていました。

その壁を破ったのが赤﨑氏と天野氏ですが、品質のよい青色LEDの材料を作るのが難しく、国内外の企業が取り組んでもうまくいかず、両氏は「窒化ガリウム」という材料を使い、明るい青色を放つのに実際の担当者として天野氏が中心となり、実験に成功しました。

名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了後、大学4年から指導を受けていた指導教官の赤崎勇教授から「実験の才能」があると高く評価され、博士課程に進学。1989年名古屋大学工学博士。論文の題は「GaNのMOVPE成長と光電物性及び青色発光素子への応用に関する研究」。名古屋大学工学部助手を経て、1992年から、赤崎研究室が名城大学に移ったことに伴い、退官し、名城大学理工学部講師に着任。名城大学理工学部教授を経て、2010年から名古屋大学大学院工学研究科教授に就任しました。

現在天野氏は、同氏のノーベル賞受賞を契機に設立された、未来エレクトロニクス集積研究センターの所長を務めています。同センターは、窒化ガリウムなどのポストシリコン材料を用いたデバイスに代表される先端的エレクトロニクス研究を推進すると共に、高度な人材を育成し、未来のエレクトロニクス産業の基盤を創成することを目的とした活動をしています。同センターは、天野氏のリーダーシップの下、6つの部から構成されており、各部において、それぞれの分野の世界トップクラスの専門教員など研究環境を整備し、材料・計測・デバイス・応用システムの基礎科学から出口まで一貫した連携研究・教育体制を構築しています。特にGaNに関わる研究コンソーシアムのセンター的機能を果たしており、青色LEDだけではなく、紫外線LEDによる汚染水の消毒への応用や、シリコンを上回るスイッチング速度を応用した電波通信デバイスや電力向けパワーエレクトロニクス分野への応用研究の世界のリーダーとなっています。

藤原 

<Profile>

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学副学長教授、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。