日本のノーベル賞科学技術について(その18)~大村智博士~
~地道な土壌の採取・培養・分析の繰返し作業の快挙!~~『抗寄生虫薬「イベルメクチン」』2015年ノーベル医学生理学賞受賞!~~日本人と中国人の同時受賞はアジアの平和への第一歩へ!~
藤原洋 株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO

スウェーデンのカロリンスカ研究所は、10月5日に2015年のノーベル医学生理学賞を大村智(さとし)北里大特別栄誉教授(80)と米ドリュー大のウィリアム・キャンベル博士(85)、中国中医科学院の女性科学者の屠呦呦(と・ゆうゆう)首席研究員(84)の3氏への授与を発表。受賞理由は、大村氏とキャンベル氏が「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」、屠氏が「マラリアの新規治療法に関する発見」。主に開発途上国で感染症対策に役立ったことから、「人類への計り知れない貢献」と位置づけました。中国籍の人の受賞でかつオリジナル受賞(貢献度50%、他の2人は25%ずつ)と自然科学部門の受賞は、初めて。

北里大学特別栄誉教授の大村智教授は、1935年生まれ、山梨県韮崎市出身で、山梨大学卒業、東京理科大学大学院の理学研究科で修士課程を修了、東京大学で薬学博士号を取得。北里大学の教授、北里研究所の所長などを経て、現在、北里大学の特別栄誉教授などを務めておられます。

微生物由来の有機化合物を多数発見し、開発に関わった抗寄生虫薬「イベルメクチン」は、熱帯病の治療薬として絶大な効果を発揮しました。

この成果を得るまで、大村氏は、1970年代に、伊東市川奈のゴルフ場の近くで土を約3000株/年に採取し、化合物エバーメクチンの発見をもとに、寄生虫が原因の熱帯病の特効薬=イベルメクチンの開発にこぎつけるまで、採取、培養、分析の地道な繰り返し作業を行い、約5年を費やしたとのこと。

同時受賞の屠(と)氏は、漢方として用いられていたキク科の植物から、世界三大感染症に数えられるマラリアに効く「アルテミシニン」という化合物を発見し、アルテミシニンを使った薬は今では世界中で使われています。

世界中の人々の命を救いつづける、日本と中国とアメリカ人(アイルランド系)の尊敬すべき人々が同時に受賞したのは素晴らしいことであり、西洋と東洋の協調の時代の到来を感じます。(おわり)

藤原 

<Profile>

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学副学長教授、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。