日本のノーベル賞科学技術について(その13)~南部陽一郎博士~<第2回>
~物理学分野を超えた自発的対称性の破れで2008年ノーベル物理学賞!~~湯川秀樹、アインシュタイン、ディラック型に物理学者を分類!~
藤原洋 株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO

南部陽一郎博士(1921-2015年)のノーベル賞の対象となった『自発的対称性の破れ』は、1960年に考え出されたものですが、48年間も受賞に時間を要したのは、当時評価できる人がいなかったからだったと思います。そんな孤独な南部博士が、ヒッポトラカレ言語研究所ニューズレターで語った興味深い物理学者の3分類があります。現代物理学を形成した湯川秀樹(1907-1981年)、アルバートアインシュタイン(1879-1955年、相対性理論)、ポールディラック(1902-1984年、量子力学及び量子電磁気学)の3人と交流があり、物理学の3つの段階と3人の物理学者のタイプについて以下のように分類されています。

「物理の理論を作るには3つの段階があり、まず、最初は新しい現象が出てきた時に、何か法則があるかどうかを色々調べる。次にそれを説明するモデルを作り、その後、いわゆる本質的な理論を考える、つまりその特性につながる数式を幾何的に表現する。その理論から計算すれば現象がちゃんと予言でき、理解できる、そうなって初めて理論が出来上がる段階になる。しかし、それで安住できない。自然は、面白いもので、何か見つけると必ずそれ以上に複雑で、説明のできない姿を見せる。だから、また我々は最初から探し始める。その繰り返し。物理学者を3分類すると、1つ目は「湯川型」。新しい現象に出あった時、その背後には新しい何かの粒子があると考え、その数式を見つける。湯川さんの場合は、新しい粒子「中間子」があると言い、以降何十年にもわたって、本当に次から次に色々な粒子が見つかった。その考え方は何十年も我々の頭の中に定着していて、我々の考え方の基礎になっている。現象からのボトムアップ。2つ目は「アインシュタイン型」。正反対で、トップダウンで、まず、理論をつくる。理論があるから実験で「何か」が出てくるはずだと言う考え方。アインシュタインは、重力場の理論をつくって、空間が曲がっていると言った。そこで予言したものが実際に見つかっている。3つ目は「ディラック型」。彼は、“自然の法則は美しくあるべきである”と言う考えで、美的観念から数式を作りだしてしまう。すると実際にその数式に合う現象が見つかる。ディラックが作った数式の1つに“モノポール(単磁極)”を示すものがあるが、これはまだ実際には見つかっていない。」・・・と。

そんな孤高の物理学者の南部博士は、東大4年の時、湯川朝永両博士に「素粒子を研究したいと」と話したら、「素粒子については、天才でないと理解できない」と言われ、プリンストン高等研究所時代に、2度アインシュタインに会い、量子力学が信用できないと必死に説明を受けたとのことです。

藤原 

<Profile>

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイビーエム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学副学長教授、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授。