日本の衰退(2)

先日、研究会があり参加した。講師は経世論研究所所長・三橋貴明氏。演題は『変わる世界の経済政策、変わらない日本』。

同氏によると日本の実質賃金は1996年を115とすると2015年に100、2020年には指標はさらに99に低下。25年間低下が継続し、ゆゆしき事態だ。これに比し、主要国の2018年GDPは2001年比韓国、豪州が2.5倍強。米国、英国、カナダが2倍弱。フランス、ドイツが1.5倍弱。日本のみ1倍強と長期低迷が明白である。2010年にGDPで日本を抜いた中国は2019年には日本の3倍の1500兆ドル。米国は2000兆ドルを超えた。2030年までには中国が米国を、インドが日本を抜くとの見方が現実味を帯びてきている。

  最近のコロナ禍での日本のPCR検査、ワクチン接種の目を覆わんばかりの世界的出遅れの主要な原因の一つが日本の一般職国家公務員の削減だ。2001年度の80万人から2019年度の30万人へ50万人強の極端な削減にその大きな原因があるとの指摘は注目に値する。

OECD諸国の公務員の労働人口比率でみてもノルウエー、スエーデン、デンマークなど北欧諸国の30%台、OECD平均の18%弱に比し、日本の5.9%は最低である。

  人口1000人当たりの公的部門における職員数でも日本は36.7人でフランス89.5人、英国69.2人、米国64.1人、ドイツ59.7人に比し、最低である。

  地方公共団体職員数も1994年の約328万人強から2020年には276万人強と50万人強削減されている。これらが日本の公立病院の削減と相まって、今回の日本政府のコロナ対策の後手後手の対応の一因であるというのが三橋氏の指摘するところである。

さらに令和元年2月と令和2年の歳出予算残高も34.6兆円と巨額に達しており、政府の対応のまずさを三橋氏は鋭く指摘している。

  21世紀に国家の競争力の雌雄を決する科学予算の推移をみても日本が1983年来、2019年に至るまで25年以上5兆円以下であるのに比し、米国は15兆円内外で推移。一方、中国は2019年には25兆円を突破、IOT、AI、EV、バイオ、宇宙科学などで総力を結集している。

これに比し、日本の文科省は大学の予算も年年削減。大学授業料も値上げしており、大学授業料は低額、もしくは無償としている先進各国にくらべても、日本の対応は日本の将来の技術革新、文化振興にとってもゆゆしき事態にあることを強く認識する必要がある。

これでは日本は21世紀に諸外国に太刀打ちできず、アジアでの衰える老大国、「年老いたゴールドメタリスト」となり、韓国、台湾はおろか、中国、インドなどの後塵を拝し衰退の坂道を転げ落ちるばかりではないかと危惧される。日本の奮起を望むのは無理だろうか。(続く)

プロフィール

鹿児島ラサール高校卒業、東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒。ニチメン(現双日)入社。米国ニチメンニューヨーク本店開発担当VPなど海外駐在20年を経て愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部、大学院教授。対外経済貿易大学大学院客員教授、大連外国語大学客員教授、国際アジア共同体学会学術顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長。『国際経営戦略』同文館、共著『知識情報戦略』税務経理協会、他多数。