~コロナ後の世界経済と平和の構築~
中川 十郎 名古屋市立大学22世紀研究所・特任教授

「世界平和の基盤としての経済」(1)

コロナ禍の現状

3月11日現在、世界全体の感染者数は米ジョンズホプキンス大のデ-タによれば1億1800万人強。死者数262万人弱。国別では米国が感染者2915万人強、死者53万人弱と最大だ。次いでインドが感染者1126万人(死者16万人弱)、ブラジル1120万(死者27万人強)、ロシア430万人強(死者9万人弱)、英国424万人強(死者12万強)、イタリア312万人強(死者10万人)フランス402万人強(死者8万人強)スペイン317万人強(死者7万人強)ドイツ254万人強(死者7万人強)とインド、ブラジル、メキシコを除けば欧米が圧倒的に多い。アジアではインドネシア140万人弱(死者4万人弱)フィリッピン60万人強(死者1万2500人弱)、日本44万2500人弱(死者8400人強)、中国10万人強(死者4800人強)と日本が中国の4倍以上に感染者が増加しているのは、日本のPCR検査が諸外国に比べて極端に少ない(PCR検査数世界で146位)ことも含めて問題である。

世界銀行によると変異コロナウイルスの感染も拡大しつつあり、発展途上国では特にサブサハラ地域を中心に、医療設備の不足、医療体制の不備により、コロナ禍の影響で、困窮が一段と加速し、保健のみならず、若者の教育にも甚大な影響を与えていると警告を発している。それはとりもなおさず、発展途上国の格差縮小、平和構築にも影響をもたらし、早急なる対応策が望まれる次第だ。

 

世界経済の現状と見通し

世界銀行によると、20年の世界のGDPは前年比4.3%減で、21年も4%増にとどまるとの見通しだ。先進国は20年5.4%減。21年3.3%増。米国は20年3.6%減から21年には3.5%増に改善見込みだ。打撃が大きいユーロ圏は20年は7.4%減。21年は3.6%増。日本は20年5.3%減、21年2.5%増と米国、ユ-ロ圏より回復の勢いが弱いのは問題だ。

コロナ禍をいち早く抑え込んだ中国は2020年のGDP成長率は2%のプラス、21年は7.9%増と独り勝ちの状態だ。しかし、3月の中国の全人代の予測では6%と控えめな数字を予測しているが7~8%増との見方が大勢を占めている。中国以外の新興・途上国は20年5%減。21年3.4%増にとどまる見込みである。途上国の政府債務は20年に急上昇し、南米などの債務危機が問題化した80年代後半以降で最も深刻である。

世銀は世界的な格差拡大や、新興国の債務危機の危険性について警鐘を鳴らしている。今回の不況について「過去150年間で、二つの世界大戦と世界大恐慌に次ぐ深刻さだ」との認識を表明している。

かかる状況下、昨年11月にG20は最貧国の債務を減免することで合意したが、世銀はこのような国際協調の必要性を強調している。

経済発展のエンジンとして期待されているアジア新興国の2021年の経済成長率は最近のIMFの予想では8.3%増と欧米を大きく上回る。マネ-の流入も活発になっている。国連主導のSDGsやESG投資も動き出している。先進国のESG投資が加速するとさらなる発展が見込まれるだろう。(続く)

 

中川 十郎

鹿児島ラサール高校卒業、東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒。ニチメン(現双日)入社。米国ニチメンニューヨーク本店開発担当VPなど海外駐在20年を経て愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部、大学院教授。対外経済貿易大学大学院客員教授、大連外国語大学客員教授、国際アジア共同体学会学術顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長。『国際経営戦略』同文館、共著『知識情報戦略』税務経理協会、他多数。