小川 浩平 大黒屋ホールディングス社長
ブランド品リユース事業で中国に貢献

今や世界最大のブランド品市場といわれる中国では、ブランド品購入のニーズが高まって来ている。日本で中古ブランド品販売などを手掛ける大黒屋ホールディングス株式会社は、本年3月、中国上海に子会社を設立し、「中国現地事業」の開始を盛り込んだ「5カ年事業計画」を発表した。今後どのように中国でビジネスを展開していくのか、小川浩平代表取締役社長に意気込みを伺った。

中国でナンバーワン目指す

―― 御社は中古ブランド品販売などを手掛ける企業として、中国でも有名です。コロナ禍において、日本経済に大きな影響が出ていますが、御社ではどのように乗り越えていますか。御社の事業の特徴と強みを教えてください。

小川 当社事業は質屋業をルーツとしています。コロナ禍においても、お客様の質屋業に対するニーズは高く、安定した金利収入のベースがありますから、売上高や利益への影響を抑えることができています。

大黒屋は、バッグ、時計、宝飾品などのブランド中古品の買取・販売で知られていますが、例えばブランド品のバッグであれば、在庫回転率は30日です。買い取ってから30日以内で売るためには、マーケットに近い値段でないと買い取れません。

また、当社の強みは、質屋業をルーツにしているからこそ、本物か偽物か、高額か低額か、商材の価値を見極め、適切な値付けをするノウハウとスキルをもっていることです。

 

―― 御社は既に中国でビジネスを展開されています。今や世界最大のブランド品市場といわれる中国では、中古ブランド品購入のニーズも高まってきています。中国市場、そして中国の消費者動向をどのように見ていますか。

小川 実は2025年に全世界のブランド品の5割を中国人が購入するといわれています。すでに、過去10年間3割以上を購入しています。25年に日本はわずか7~8%のシェアになるでしょう。以前は日本が3~4割を占めていましたが、今では中国が一番です。

当社は日本でナンバーワン、中国でもナンバーワンを目指します。両国を合わせると、世界の市場の6、7割になります。中国のマーケットは大きく、今後伸びると思います。中国は期待できる市場です。

中国で今、売れているのはヴィンテージブランドです。ハイエンドでプレミアムな商品を購入する傾向があります。企業トップの奥様や富裕層のお嬢様が、部下や友人より安いバッグや時計を身に付けるのはメンツが立たない、ということをよく聞きます。

 

リユースで中国社会に貢献

―― 本年3月、御社は中国の上海に子会社を設立されました。そして6月に発表された5カ年事業計画では、中国現地事業を開始するとあります。今後、中国でどのようにビジネス展開をしていくのか、具体的に教えてください。

小川 当社では本年3月、上海に100%出資の子会社「上海黛庫商業」を設立しました。

中古ブランド品の買取・販売のほか、中古ブランド品の販売業者への鑑定教育や鑑定代行サービスも行います。さらに、中国向け越境電子商取引(EC)業務を、Webマーケッティング――Tiktok, Red, Weiboなどメガプラットフォームにて大黒屋の紹介・店舗商品紹介・鑑定方法等の情報配信から、トラフィックの誘導まで――を通じて、ライブ配信型のインターネット通販「ライブコマース」を中心に支援しています。

まず、アリババグループの天猫・淘宝、Kaola、TikTok及びRedなど現地有力プラットフォームを上手く活用しつつ、現地GMVを伸ばし、早い段階で中国市場の売り上げナンバーワンになることを目指します。そのために今、越境ECの商品も、中国向けには免税で出品しています。ですから中国からわざわざ日本に買いに来る必要はありません。ネットで購入していただき、税金は当社が負担します。

コロナ禍になる前までは、年間売上高のうち中国人観光客による売り上げが約4割を占めていました。中国のお客様に大きな需要があることは実感しています。

 また、中国国内での買取・販売の実店舗展開も始めます。富裕層が多い沿海部だけでなく、成都や武漢などの内陸部も視野に入れています。行くとわかりますが、街の中にすごいショッピングセンター、世界規模のモールなどがどこに行ってもあることに驚かされます。

 

―― SDGs(持続可能な開発目標)が国際社会共通の目標になっています。各企業が取り組みを行っていますが、御社は中国ビジネスを展開する上で、中国社会にどのような貢献ができるとお考えですか。

小川 当社のビジネスはリユースです。ですからそもそもがSDGsです。そういう意味では貢献できると思っています。

また、中国において、当社のビジネスは、出来てきたばかりなので、やはり値付けとか、本物と偽物の区別など難しい面もあります。ですから、彼らと一緒になって、当社のノウハウ、真贋、値決め、透明性のリユースが促進されるような形の貢献はできるわけです。これがないと、結局取引量が増えないんです。

また、高価なものを当社が売買することによって、取引の流動性をつくることが可能です。これが大きいんです。例えば株式市場でも、いくら売りたいといっても、買い手がいないと売れません。当社は流動性を供与――売りと買いを促進するという意味でも中国市場に貢献できると思います。

 

成長する中国とともにビジネスチャンスを掴む

―― 日本と中国とのビジネスでは、両国の関係が影響すると言われますが、日中ビジネスの重要性についてどのようにお考えですか。

小川 日本と中国は兄弟だと思っています。もちろん兄弟はたまにはけんかをします。でも、基本的には2000年の歴史がありますから、兄弟は兄弟として仲良くできると思います。

私の場合、中国での仕事が長いんです。かれこれ30年になります。大学卒業後、総合商社に入り、その後、外資系とか、ゴールドマン・サックスとかでインベストメントバンカーとして働き、米国に6年、香港に4年駐在しました。

初めて中国に行ったのは90年代前半です。当時、華僑十大財閥の一つの企業の社長でした。ビジネスで香港から南京、上海に入りました。国際空港がある上海の浦東にまだゴルフ場がある時代から知っています。その後、浦東が発達していく様子を目の当たりに見てきました。あの頃から比べるとものすごい発展です。

日本の企業は、中国も含めて、これからグローバルで変わると思います。これまでグローバリゼーションと言いながら、本当の意味で、中国でビジネスができている日本の企業って少ないと思うんです。ですからやはりそれにチャレンジしたい。

中国はこれからますますグローバル化が進むんじゃないかと思っています。アリババしかりです。中国の人は頭がいいですから、見えない形ですっと市場に参入してくるじゃないですか。必ずグローバリゼーションが起きると思います。その中国と一緒にビジネスができることは、大きなチャンスだと考えています。

 

ビジネスを動かすのは人と人とのつながり

―― 中国にどのような印象をお持ちですか。

小川 ビジネス的にはものすごいペースが速いです。合理的だと思いますね。ある面では、日本と違って、新しいことをやるには、中国は日本より合理的だと思います。

日本で例えば、ベンチャーキャピタル、スタートアップしようとしたら、資金集めが大変なわけです。中国ではそれなりのポジションでも、ものすごい資金が集まりますし、勝負できる体制が整っています。インフラもありますし、すごい国だと思います。

そのうえで、決断が早いですね。日本のサラリーマンだと、いちいち部署に持ち帰って、稟議を上げて・・・これではなかなか先に進みません。この決断が速い点について、私が香港で働いているときによく言われたのは、「中国人はよくぱっと決めるけど、思い付きとかではなく実はその前に勉強をしている。結果として決めるところだけ見えるから、プロセスが無いように思われるけど、要するに自分で投資の軸が決まっている。一生懸命、人より、見えない形で、勉強しているんですよ」と。日本でいえば根回しの稟議でもないですけど、決断する際にはすでに方向性が決まっているということですね。

個人的には中国の人って、仲よくなるまでは時間がかかりますが、一旦仲間になると本当に日本人のつながりより濃いと思います。日本はいわゆるサラリーマン社会ですが、中国は仲間の社会という感じがします。

 

―― 今後の事業展開について抱負をお聞かせください。

小川 当社の進めるビジネスは、今後いろいろ変化する可能性はあると思いますが、すごく大きくなると考えています。

中国ビジネスはどんどん進めます。中国人の老朋友(古くからの親友)も多く、アジアにもたくさんいます。私の一つの役目かなと思っているのですが、中国に限らず、いろんな国の人とビジネスをする際に、お互いを理解しあうのはなかなか難しいですよね。時間かかるじゃないですか。第一段階、第二段階と時間がかかるわけです。その点、私には長年培った中国の、そしてアジアのネットワークがあります。ビジネスを動かすのは最終的には人と人とのつながりだと思っています。

日中の関係で言うと、日本は今GDPで3位、中国は2位です。でもこの3と2を足せば、1(米国)より上をいくわけです。ですから日本と中国がビジネスでつながることは大きな意義があると思います。