SBクラウド株式会社 代表取締役兼CEO 内山 敏 営業部部長 二宮 暢昭
中国ビジネスはSBクラウドに任せれば大丈夫

Alibaba Cloudは世界有数のECサイトであるアリババグループ(阿里巴巴集団)が、高度なデータ処理を実現するクラウド・コンピューティングサービスを提供するために2009年に設立した中国最大級のIaaS型クラウドサービスのプラットフォームである。そのAlibaba Cloudが2016年、日本のソフトバンクと合同出資で「SBクラウド」を設立し、いよいよ日本に上陸した。2017年8月、成長株として注目される同社を取材した。


代表取締役兼CEO  内山 敏

圧倒的なコンピューティングパワー

—— 御社の取り組みの現状について教えていただけますか。

内山 設立から約1年になりますが、サービス開始(商用開始)が2017年2月なので、今は7カ月目に入ったくらいの段階です。私自身は6月に就任していますが、それ以前の過程では、まずAlibaba Cloudとの「座組み」をつくるところから始め、あとは特に大事なプロダクトを投入させるための設備の構築でした。Alibaba Cloudのプロダクトの中から、何を日本側に持ってくるかという選定をし、その上でのサービスインです。

正直なところ日本のマーケットの中では、Alibaba Cloudの認知度はまだ足りていません。競合するのはAWS(Amazon Web Services)やGCP(Google Cloud Platform)などで、ガートナーの評価でも現時点で、Alibaba Cloudは4位です。日本市場には後発で入ってきたのですが、競合しながらも、やはりクラウドという世界はつながっていますから、足りないところをいかに補完し合うかという辺りに取り組んでいこうというのが現段階です。

しかし、後発とはいえAlibaba Cloud自体のコンピューティングパワーは、世界最大級のEコマースサイト「Taobao」で2016年の独身の日(11月11日)に購買量が1.8兆円を記録したプラットフォームであり、それをいかに日本で活用していくかということが、最大の武器になります。

—— 近年、クラウドサービスを利用する企業が増えています。日本のデータセンターからAlibaba Cloudを介して接続することで、中国のデータセンターにアクセスしやすくなりますが、クラウドサービスを利用するときの日中間ビジネスの課題について、どのように考えますか。

内山 日本から中国へ進出するお客様の場合、参入障壁の1つとして、例えば会社設立がありますが、それを日本から画面上で、日本からのガバナンスを利かせた形で中国側に展開できるというのが、経営層にとって最大のメリットであり、手間と時間が大幅に短縮されます。

その際の課題は、ガバナンスをどうやって効かせていくかです。日本側が本社であれば、コストやセキュリティーの観点からも、情報整理・把握をしておきたい、場合によってはITインフラストラクチャーをある程度共通化しておかなければならない、等のことがあります。そのような背景がある中で日中間ビジネスを行う際、類似した形のプラットフォームで運用できるということがまず基本にあります。

そのためのコスト並びにデータ量は様々ですが、Alibaba Cloudでは垂直統合的に必要になるもの、つまり自社で一手に行うべきものとして、例えばAI(人工知能)を独自に作っています。自分たちで作っていくというところに期待感があります。


営業部部長 二宮 暢昭

日本のクラウド市場の可能性

—— 営業部部長の二宮さんは、北京郵電大学の顧問でもあり、日中両国の架け橋的な役割も果たされていますが、日本のクラウド市場をどのように見ていますか。

二宮 まず、日本のクラウド市場では、自社サーバーでクラウドサービスを活用している企業は60%に過ぎません。

しかし、Alibaba Cloudのコンピューティング技術で、これまで以上に様々便利なことができるとなると、シェアも更に広がりますし、市場も伸びていきます。

特にその中で、クラウドサービスの将来性について、我々が最近注目しているのが、日本にいる中国のソフトウェア会社です。その方々と一緒にAlibaba Cloud、SBクラウドをもっと良くしていき、中国ビジネスはSBクラウドに任せておいたら大丈夫というような環境をつくっていきたいと考えています。これもまた日中の架け橋のひとつだと思います。

—— 今年は日中国交正常化45周年ですが、政治間交渉においては、さまざま問題や紆余曲折がありました。日中関係の良し悪しが、合弁企業に与える影響については、どのようにお考えですか。

二宮 最近、アジアの方から面白いことを言われました。日本はテクノロジーの進化に対して堅実的だが、中国はスピード感を持って広げていく。異なる環境のもの同士がタッグを組んでビジネスを行うと、実は一番怖い存在になる。

ソフトバンクとアリババ両者のアライアンスが成功することによって、当然日中の関係も更に良くなっていくと考えます。

内山 アリババグループの幹部も、日本のマーケットでの事業を成功させるために最大限の支援をしてくれています。私が就任するときに、アリババのある経営幹部から言われた言葉があります。

それは、アリババが日本のマーケットに進出する理由は、日本を成熟したマーケットと考え、日本で成功できればUSやヨーロッパでも成功する可能性が高く、そうしたことを考えて日本市場の勉強をするようにと。私への期待値は、何が足りないかの「差分(さぶん)」を明確にしてくれということでした。

そのために、営業部隊を持つべきだと。営業部隊を持っていれば、お客様の声を聞いて、その「差分」が明確になるだろう。それをフィードバックしてよりよいソリューションにしていくべきだと。つまりソリューションドリームで物を考えるべきだということです。

その上で、良いサービスを提供できれば、この業界は更に伸びていくと思います。その中でアリババグループとソフトバンクグループの良さを生かして、今後も日系企業のビジネスのお役に立てるようにしていきたいと考えています。

(撮影/本誌記者 郭子川)