森田 英克 KLab株式会社専務取締役 CGO
日本文化を中国に紹介していく入り口に

2016年12月、上海中心部の「大悦城」に日本の人気ラーメン7店が味を競い合う「ラーメンアリーナ(拉麺競技館)」がオープンし話題を呼んだ。その運営主体はKLab(クラブ)である。同社は『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や、『BLEACH Brave Souls』など、スマホ向けアプリを中心に、モバイルオンラインゲームを企画・開発する企業として有名だ。すでに2012年には中国に現地法人KLab Chinaを設立し、中国市場にも進出している。

 
撮影/本誌記者 洪倩 

次につなげる企業姿勢

—— 競争の激しいゲーム業界にあって、御社の強みは何ですか。また、中国のゲーム市場は世界最大規模と言われていますが、その発展の速度、業態などをどのように分析されていますか。

森田 当社の強みはいくつかありますが、一番は、誰よりも早く動いて、誰よりも失敗しながら(笑)、進んできたことです。ソーシャルゲームに参入したとき、スマートフォンアプリに時代が移ったとき、一時的に売り上げが下がって苦戦したとき、など、失敗も成功もありましたが、次につなげていくということを、絶えずやってきました。

中国のモバイルゲーム市場については日本より後発でしたが、ここ2、3年位で世界最大の市場になりました。世界のどの市場よりも類を見ない速度で成長をしています。ゲーム市場の成り立ち自体が、家庭用ゲーム機がない国でしたので、PCのオンラインゲームが発展してモバイルゲーム市場ができ上がっています。

当社が中国市場に進出した当時は、日本国内でブラウザゲームである程度成功をおさめ、とにかくつくり、展開しようと考え、海外に拠点をたくさん出していた時期でした。オフショア開発をして、日本市場でリリースするタイトルを増やしていくこと、中国やアメリカなど、これから大きくなっていく市場に進出するための入り口として拠点をつくっていくこと、2つの意味がありました。

中国市場で成功するには

—— KLab Chinaの業務はどういう内容ですか。

森田 中国でのゲーム関連のビジネス開発とマーケティング、ゲーム運営です。ビジネス開発とは、日本で当社が得たライセンスを中国に展開するときのパートナー企業を探したり、協業相手を探したりしています。

マーケティングは、中国大陸及び繁体字圏の中華圏全体を対象に活動しています。近い将来中国市場へ本格的に進出する準備として市場調査や研究を進めつつ、当社のタイトルで、台湾や香港等にゲームを出しているタイトルについては実際のマーケティング活動を行っています。

ゲーム運営については、日本で開発したタイトルの、英語、韓国語、繁体中国語などのグローバル版を運営しています。中国市場向けの運営は行っていませんが、日本式の運営を現地のスタッフが学びながらグローバル展開をしているので、次のステップとして自社で中国向けのゲームを運営する際、質の高い運営を行うことができると考えています。

—— 2017年3月、『BLEACH Brave Souls』は全世界2000万ダウンロードを突破しました。その後、中国崑崙ゲームズ社と共同で、完全なる新作の『BLEACH 境・界:中国・アジア版』(正式タイトル名『BLEACH 境・界-魂之覚醒』)を開発するとの発表がありました。これは中国だけに特化した中国版と考えていいのですか。

森田 完全に新しいものです。ゼロから中国向けにつくっています。キャラクターや背景設定はもちろんアニメのものを使っていますが、ゲームとしては全然別のもので、ほとんどの素材をつくり直しています。

パートナーの崑崙ゲームズさんとお話ししていく中で、中国市場で成功するためには、中国で定番となっているようなゲームモデル、ゲームロジックや、ゲームデザインなどを使った方が成功できるので、きちんとつくり直していくという話になりました。当社も、自分たちの作品を中国に持っていくことが目的ではなくて、『BLEACH』というライセンスをお預かりして、そのライセンスを使ったゲームを中国のユーザーに楽しんでいただきたいというのが本来の目的なので、、完全新作でつくり直しました。

 

中国のファンの方に

—— KLabグループとして、世界最大規模のモバイルオンラインゲームベンダーを目指すなど、事業をグローバル展開されていますが、中国市場に注力される場合の課題は何ですか。

森田 この10年、20年のことだと思うのですが、中国では、日本のコンテンツを受け入れてくださっています。ですから、当社が扱わせていただく作品は、日本市場と同時展開か、完全に同時は無理でも、半年、1年という短いスパンで中国市場にも展開して、そこでしっかりファンの方に届けていきたいと思っています。

課題としては、中国の市場で、例えば今の当社が日本で出している規模の売り上げをたたき出せるようになったと仮定して、そこから全額日本へ送金ということは難しいと考えておりますので、中国市場に再投資をしていくことを考えています。

あとはゲームにもガイドラインがあり、そのあたりの対応がやはり難しいです。しかし、そういう情報をしっかりキャッチして、しかるべく対応していけば、十分ビジネスになると考えています。

中国の会社とのやりとりで言うと、コミュニケーションのスタイルが全然違いますね。遠隔のオンラインを通したコミュニケーションのスタイルが全然違っていて、中国の方はQQとか微信(We chat)で何でもやります。打ち合わせも、チャットで、もうリアルタイムでやりとりしながら仕事を進めています(笑)。そのスピード感が日本とは違うなと感じます。

—— 中国でのCSR(企業の社会的責任)についてはどのようにお考えですか。

森田 当社が日本文化を中国に紹介していく入り口になっていければいいなと思っています。日本文化の入り口として、今まであまり中国の方が触れられなかったところも紹介できたらと思っています。

例えば日本国内でやっているイベントやコンサート、ミュージカルに海外の方が直接触れるには、ものすごくハードルが高いです。日本にお越しにならないと観られない。そういうところも、当社が関わっているコンテンツに関しては、もっと中国のファンの方に身近に感じられるような形でご紹介できたらいいなと思います。