後藤 博文 株式会社オークネット常務執行役員、 兼 株式会社AIS代表取締役社長
中国の中古車市場はまもなく黄金期に

ネットでの売買がショッピングの主流となりつつある今、サイトに出ている商品の品質問題も目立ってきた。誰が保証するのか、どのように保証するかがネット通販族にとって大きな問題となっており、また同時に業者が順調に売り上げを伸ばせるかどうかの生命線ともなっている。日本ではオークネットが1980年代に国内最大の中古車ネットオークション事業、国内初のTVオークション事業を始めた。その独特の車両検査システムは、日本中で認められ統一された中古車検査基準となり、揺るがない市場での信用と顧客の信頼を得ており、中国のネットビジネス市場の良いお手本となり得るだろう。先日、オークネットの後藤博文常務執行役員、兼株式会社AIS 代表取締役社長にお話をうかがった。

 

他人が考えないことを考え、やらないことをやる

―― TVオークションというアイディアはどのように生まれたのですか。

後藤 オークネットは1984年に創業しましたが、当時インターネットはまだなく、中古車オークションは、買い手、売り手、中古車が大きなオークション会場に集まって行われました。弊社の創業者である藤崎眞孝はそのやり方では大変効率が悪いと考えました。まず車を会場に搬入し、同時に中古車事業者が各地から会場にやって来なければなりません。中古車流通取引の成否を決定するのは車両の品質ですから、事業者たちは毎日朝から晩まで各地のオークションに出向かなければ良い中古車を手に入れられないため、時間ばかりかかって販売に手が回らなくなってしまいます。

そこで、創業者は中古車流通市場の効率を上げる新しい取引モデルを打ち出しました。それは、すべての中古車の情報と映像をレーザーディスクに収めて相手に送っておき、オークション当日はNTTの電話回線を通してオークションに参加するという方法です。会場に出向く必要はないのです。数年の研究開発を経てTVオークションが実現し、オークネットはコンピューターと先進的な通信技術を利用した中古車オークション業務を行う企業となりました。1990年代には、弊社のネットオークションでの取扱高は1500億円に達しました。

その後衛星回線でのオークションを経て、現在はインターネットを通じて多くの地域で同時に接続でき、またオークションの範囲も中古バイク、花き、中古ブランド品、中古医療機器などへと拡大しています。

 

独創的な検査システムが日本の基準となる

―― 中国でも日本でも、ネットビジネスは信用問題に直面しています。御社はどのように顧客の信頼を勝ち得てきましたか。

後藤 確かに、顧客の中古車の品質を信頼できるかどうかは、オークネットがまず解決しなければならない問題です。弊社のオークションは全てがオンラインで行われるため、画面と車両の情報を提供するだけです。どのように車両の情報が正確であるかを担保するために、弊社では非常に厳格な中古車検査評価システム、AIS(Automobile Inspection systems)を立ち上げました。

1997年、専門の車両検査員養成、検査基準と精密な技術を持つ会社を設立してAISシステムを開発し、検査測定の精度を上げました。中古車の売り手は電子オークションの前に、弊社の専門検査員による車両の検査を受け、AISによって車両に10段階の評価点を付けなければなりません。現車を見ずに車を取引できる検査を実現するのは大変でしたが、10年近い努力の結果、AISの検査基準は同業者から広く受け入れられるようになりました。日本の五大自動車メーカー、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバルの中古車事業会社からの出資も受け入れ業界のスタンダードとなりつつあります。AIS基準は自動車メーカーの中古車検査基準だけではなく、多くの中古車業者や海外の中古車業者にも一部提供しています。

 

中国の中古車市場はまもなく黄金期に

―― オークネットは2013年9月に伊藤忠商事、オリエントコーポレーションとともに深圳市の中古車市場に進出しました。2014年には上海で外資初の中古車品質検査会社を設立されました。中国の自動車市場をどう見ていますか。

後藤 弊社にとって、中国と東南アジア諸国は次の一大戦略的地域です。中国では日本式の流通モデルにはこだわりませんが、日本の先進技術を中国ユーザーが求める市場に合わせたモデルに融合させていきます。

近年、中国の自動車販売市場は急速に発展しており、販売量が年々増加していますが、このような発展過程はアメリカや日本などの先進国と同じで、最初はみんな新車を買いたがるのですが、次第に中古車市場が盛んになるのです。

日本と比べると、中国の中古車流通市場はまだニーズに追い付いていません。最大のポイントは、完全にユーザーの利益を守る事のできる車両検査基準がないことです。現在、売られている中古車は事故歴があるかどうか、金属板はどのメーカーのものか、新しいものに交換しているかどうか、エンジンの性能はどうか、どのくらい走行しているか、走行メーターは改ざんされていないかなど、すべてが内部情報に属しており、売り手と販売業者だけが知っていて、ユーザーには公開しないし、権威のある第三者機関の検査や評価もありません。

中国の多くの大手中古車販売業者もこの問題に気づいており、最近4、5年間は多くの業者が弊社の車両検査システムを視察しに来ています。しかし、中古車流通市場で信頼される車両検査システムをつくるのに20年から30年かかります。

中国市場は私たちにとって大変重要な市場です。弊社の中国進出の最終目標は、買い手と売り手ともに安心できるよう、中国中古車流通市場の健全な発展を保証できるよう、中国にも統一された車両検査システムを構築することです。

まもなく中国の中古車流通市場の黄金期が来るという予感がしています。中古車の市場規模は新車を超える日が近い事を確信しています。

 

中国は上を目指す活力に満ちている

―― 中国にどのような印象をお持ちですか。

後藤 私は20回以上中国に行っています。最初に訪れたのは上海です。それ以前にテレビで上海の古い町並みを見たことがありましたが、実際の上海は私の想像とはまったく違っていて、すでに超現代的な大都市となっており、上を目指す活力に満ちあふれていました。それが私の中国、上海に対する印象です。

写真/本誌記者 張桐