渡辺 朱美 レノボ・ジャパン株式会社社長
日本でも中国と同等のシェアを持ちたい

―― レノボは中国ブランドとして世界に知られています。日本において、レノボはどのようなブランド戦略を展開するのでしょうか。

渡辺 日本の消費者にはまだまだレノボの認知度が低いのが現状です。たとえば、ThinkPad (シンクパッド)のプロダクト名は浸透しているのに、レノボのブランドがあまり知られていないことは課題といえます。レノボの知名度を上げるために、昨年から中田英寿元サッカー選手を起用して“FOR THOSE WHO DO”キャンペーンを展開しています。今後もレノボブランドを浸透させるために、いろんなメディアを使ってプロモーションをやる予定です。

―― レノボ主力製品のThinkPadが発売されて20周年になります。今後どのようにして新たな「価値」を付加して行きたいと考えておられますか。

渡辺 大学卒業後から今年4月レノボに入社するまで、日本IBMに在籍していましたが、IBM入社直後は大和研究所のエンジニアとして製品開発に携わっていました。実は、ThinkPadの開発にも初号機から数年間関わっていました。当時は、ノートブックパソコンそのものが生まれた時代でしたから、日々新しいテクノロジーとの戦いでした。エンジニアはみんな泊り込んで、燃えて、日々開発に取り組んでいました。その後、私はThinkPadを売る側の責任者としての仕事をしました。いわゆる揺りかごから歩き出すまでの、この商品のライフともいえる全過程に携わりました。そういう意味で、私はThinkPadにたいへんな思い入れがあります。ちょうどThinkPad誕生20周年の今年にレノボ・ジャパン株式会社の社長として再びThinkPadの販売に責任を持つこととなり、深い絆を感じます。まるで「赤い糸で結ばれている」のではないかと、勝手に思っているくらいです。

ThinkPadには初代から脈々と受け継がれているこだわりがあります。一つは堅牢性、もう一つはトラックポイントなど使い勝手の良さです。ビジネスツールとして、いつ、どこに行っても安心して使えるのがThinkPadの良さだと思います。これからもThinkPadの堅牢性と使い勝手の良さにはこだわりながら、より薄く、より軽い製品に進化していきます。ThinkPadならではの良さを維持することが非常に重要です。

―― パソコンやハードウエア事業全般の将来性についてどのような考えをお持ちでしょうか。また、レノボが激しい競争の中で勝ち抜くためには、なにが必要だと考えておられますか。

渡辺 確かに今は、PC以外にタブレットとか、スマートフォンとかいろんな新しいデバイスが市場に出てきています。しかし、フルキーボートのPCじゃないと効率よく作業が出来ません。そういう意味で、PCの需要は継続的な安定を維持し、違う使い方をするデバイスは2台目、3台目として出始めてきたというふうに市場を見ています。

お陰様でレノボは、厳しい環境下にありながらも、グローバルPC市場で11四半期連続、業界最速のスピードで成長し続け、業界2位のポジションとなりました。また日本市場では、12期連続市場を超える成長率を達成しています。これは、レノボの『プロテクト&アタック(守りと攻め)』の戦略が功を奏した結果です。PCビジネスでは法人ビジネスをしっかり守り、コンシューマやSMBビジネスを攻めて参ります。PC以外のデバイスについても、これからどんどん魅力的でイノベーティブ的な製品を出して、ビジネスを拡大していくことを考えています。

―― 去年7月、NECと提携してNECレノボ・ジャパングループを発足されましたが、この一年間でどのような成果を得られましたか。

渡辺 合弁会社設立直後から、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータ(NECPC)とも出荷台数を伸ばし、市場シェアの拡大を実現できたという大きな成果が得られました。PC業界では、このような1+1が2を超えるのは非常にまれな成功例です。NECはカスタマーサポートの良さに定評がありますので、レノボはコールセンターをNECPCに委託し、より品質のよいカスタマーサポートを取り入れました。レノボのビジネスをさらに伸ばしていくことに繋げていきたいと思っています。

―― レノボはグローバル会社ですが、日本での経営現地化にはどんな特徴がございますか。特に気をつけておられるところはありますか。

渡辺 グローバル企業にありがちな問題は、本社のモデルを他の国でも押しつけることです。しかし、レノボにはそういう問題がありません。大きな戦略はグローバルで作りますが、かなりの裁量の余地がローカルにあります。レノボグループは他国籍の経営陣で構成されており、いろんな考え方を柔軟に取り入れる風土はトップから作られています。ですから、正直に言うと特に気をつけるところはありませんね。そもそも、レノボは国籍と人種などに関係なく、自由な交流ができる会社です。中国本社ともよくコミュニケーションをとっています。やはり、グローバル企業にとって一番大事なことは、そういった会社の風土作りだと思います。

 

編集後記:

渡辺社長に中国についてのイメージをお聞きした。「中国はうらやましいほど急成長しています。レノボは中国での市場シェアが35%ぐらいで圧倒的に高いです。日本でも負けたくない、早く追いつきたい」と熱く語った。