中国の若者たちに人気の「三坑」カルチャーとは
漢服、女子高生の制服、ロリータファッションの人気広まる


「清水溪漢初」オンラインショップより

ショッピングサイトにおいて、「漢服」の検索数が「シャツ」を超え、女子高生(JK)のスカートが数日で30万枚売れるなど、これら漢服とJKの制服、ロリータファッションという3種類が今、ハマってしまうとお金をどんどんつぎ込むことになるという意味から、中国で「三坑」(3つの穴という意味)と呼ばれ、一部のマニアの間だけでなく、幅広い人気を集め、年間の売上高が100億元(約1665億円)を超える市場に成長している。

ニッチな消費者から幅広い消費者へと広がり見せる「三坑」カルチャー

この「三坑」カルチャーは当初、特定のグループの間で流行していたが、ここ数年の間に幅広い人々から注目されるようになり始め、細分化されたアパレル産業の新たなジャンルを形成している。ショッピングサイト・淘宝には、漢服やJK制服、ロリータファッションなどを販売するショップが1000軒近くあり、大人気になっている。過去1年、漢服やJK制服、ロリータファッションを代表とする「三坑」市場で、購入者がそれら商品を「爆買い」したことで、その売上高は100億元(約1665億円)に達している。

他のジャンルと異なり、「三坑」の消費者はリピート率が高く、お気に入りのショップ1軒、または数軒で頻繁に購入し、淘宝店の会員グループや画像付きレビューなどで、他の購入者と意見を交換したりして、1軒のショップが同じ趣味を持つ人が集まるたまり場にさえなっている。

そして「三坑」を販売するショップのオーナーもこうしたカルチャーのマニアであることが多い。こうしたオーナーは、トレンドや人気の傾向をよく観察している。「三坑カルチャー」の発展について、業界関係者は、「新型コロナウイルスの影響で、ボトルネックに直面してはいるものの、前途は明るい。00後(2000年代生まれ)、ひいては10後(2010年以降生まれ)の若者が入ってくると、市場はさらに拡大するだろう」との見方を示す。

JK制服を代表とする「三坑」市場の人気は過熱の一途をたどり、「三坑カルチャー」が形成されていることは、若者が他の人の目を気にせずにそれらファッションを楽しむようになっていることや若者の親らがそのようなファッションに対して、寛容な姿勢を示すようになっていることと密接な関係がある。

漢服マニアが毎年10%のペースで増加

漢服マニアの多くは90後(1990年代生まれ)、95後(95‐99年生まれ)、00後などの若者で、平均年齢は22歳から34歳。漢服ブランド「清水溪漢初」の共同創始者・湯威さんは、「中国の経済や文化が発展するにつれて、若者は中国の文化に対する自信を高め、漢服を着たり、中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな国産商品を使ったりすることは、胸を張れることだと考えるようになっている。また、若者は新しいモノが大好きで、良いモノに対する自分の思いや体験談を他の人にシェアすることをとても好む。そのため、若者の親や教師なども漢服や中国文化の要素が詰まった商品を好むようになり、トレンドになっている」と分析する。

漢服界のメディア「漢服資訊」の統計によると、漢服の会員だけでも453万人が登録し、毎年10%以上のペースで増加を続けている。漢服関連の事業者数も急増中で、2014年の196軒から、2017年には655軒、2020年には1518軒にまで増加し、毎年、2ケタペースで増加している。

湯さんは、今後の漢服市場の発展に対して、楽観的な見方を示し、「漢服は元々、マニアックなジャンルではなく、中国文化の一部。漢字や中国語、中国医学、食事用の陶器と同じだ。どんな大衆的なものでも、初めはユーザーが少ない。例えば、スマートフォンや新エネ車、今話題の人工知能、モノのインターネット(IoT)などもそうだ。中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな商品が社会消費財全体に占める割合は現在、10%未満で、まだまだ発展の余地とチャンスがある。社会各界がさらに注目し、応援することを願っている」と語る。

JK制服が女子学生の間で人気に

JK制服は通常、洋服やセーラー服に分類されており、その種類にはシャツや合服、セーター、ワンピース、ブレザー、コートなどがあり、それにネクタイやリボンといった付属品もある。これらは「三坑」の中では最も安価な部類になる。ロリータファッションや漢服と比べると、JK制服はデザインがシンプルで、コーディネートしやすいというのも、多くの若い女性の間で人気となっている理由だ。また、学生の間で流行するため、大ヒット商品が登場しやすい。マニアは一線都市と二線都市に集中していて、年齢は18歳から24歳。その人気は拡大して、三線都市から五線都市にまで波及し、低年齢化も進んでいる。

姫系ロリータがアニメファンの間で人気に

花柄のレース生地にリボンや蝶結びのリボンが付いたスカートといったようなお姫様のようなスタイルが、ロリータファッション。姫系ロリータのほか、クラシカルロリータ、ゴシックロリータなどのジャンルもある。中国のマニアは北京や成都、重慶など経済が発展した都市や一線都市、二線都市に集中している。年齢は16歳から25歳で、女子高生や女子大生、就職したばかりの若い女性などが中心となっており、アニメファンで、新しいモノを寛容に受け入れる世代だ。

ロリータ専門店・圓点点小姐洋服社のオーナーで、メインデザイナーの練さんは、「今後5年から10年の間、市場はさらに拡大するだろう。中国は人口が多く、ニッチ市場だとしても、そのマニアの数も非常に多い」と展望する。現在、三線都市、ひいては県級市でも市場のニーズを満たそうとロリータファッションを仕入れている店が増えている。そのため、圓点点小姐洋服社も、業界の垣根を超えて、ミュージカルやアニメなどと提携を展開し、共に発展していく計画だ。