「のんびり就職族」は就職逃避の「ニート」か

「のんびり就職」とは、大学生が卒業後にすぐに就職したり、能力をつけるために進学することもなく、遊学、教育支援、両親と一緒に過ごす、起業計画を練るなどして、のんびりとこれからの人生について考えて過ごすような現象だ。今では、従来の「卒業後すぐに就職」というスタイルから離れ、「のんびり就職族」になる90後(1990年代生まれ)の若者がどんどん増加している。

 

なぜ「のんびり就職」を選ぶのか

2015年6月、中国社会科学院が開催する討論会で某研究所が発表した「2015年中国大学生職業報告」によると、2014年度卒業の大学生の卒業後半年間における就職率は92.1%。進学を考えている卒業生以外の多くが「のんびり就職」を選んでいるという。

同報告によると、卒業生が「のんびり就職」を選択する理由として一番多かったのが「満足できる仕事が見つからない」というもので、アンケート回答者の57.7%に上った。二番目に多かったのが、「自分の能力向上のための目標を探そうと頭では思っているが、それが見つかる前に就職して拘束されたくない」で、三番目に多かったのが「起業の準備中」というものだった。「大学院を受験する」、「フリーターになりたい」などの理由も上位にランクインした。

 

待ちぼうけタイプ

今年6月にある芸術学校を卒業した張さんは、クラスメートたちが焦って仕事を探しているときに、就職に関して焦ることはなく、かなり暇を持て余していた。今では、携帯アプリのライブ中継プラットフォームの人気がどんどん過熱し、張さんはいくつかのアプリでライブ中継を行っているという。「普段1回のライブ中継で約1000元(約1万5000円)が稼げ、特に何もすることがない時はライブ中継をして、仕事があればイベントの司会に行く」と張さんは語った。たとえ仕事がなくてもこのように自給自足はできるという。さらに現在の張さんの月収は、就職したばかりの張さんの同級生よりも高いそうだ。また、張さんは、「普段は微信(Wechat)で微商(微信を利用して販売や宣伝する電子商取引)をしているか、もしくは稼いだお金で海外旅行に行って、ついでに購入代行を行う」と語った。張さんは海外旅行のときに、ついでに他の人に頼まれた化粧品や服などの購入を代行し、代行サービス費としてもお金を少し稼いでいるという。このように、張さんは卒業しても焦って就職せず、「のんびり就職」する状況を満喫している。

 

恵まれタイプ

四川師範大学を卒業したばかりの張恒さんは、昨年大学院を受験したが合格できなかった。しかし大学卒業後も、張さんは焦って仕事を探すこともなく、成都市内に部屋を借りて生活している。

張さんは、「自分は特別勉強ができるというわけでもないので、別に大学院受験をしたいと思っていなかった。両親が大学院受験をしきりに薦めてきたので、その要望に応えただけ。焦って仕事を探したくないという理由で大学院受験を受けることにした」と語った。両親は張さんが受験に失敗したことを今でも知らないため、張さんは大学院受験の準備をしているということを口実に、両親に成都の家を借りてもらい、そこに住み、手持ちのお金が無くなれば両親に援助してもらっているという。そんな張さんは、「実は仕事探しに関しては全く焦っていない。いずれは実家に帰って父親の跡を継ぐつもり」と話した。張さんの実家は電子ケーブルを製造しており、工場も持っているという。

 

夢追いタイプ

自分自身の状況や家庭環境が恵まれていて就職するプレッシャーのない人とは対照的に、自分が持つ独特な考えから、「のんびり就職族」になってしまう卒業生も少なくないようだ。頼強さんは、卒業後に特にやりたいという仕事もないので、バックパッカーで半年間かけて四川から西蔵(チベット)自治区を旅行した。収入もないので、頼さんは道中でアルバイトをしながら旅行を続けたという。

頼さんは、「就職したら、休暇は少なくなると思った。休暇があったとしてもそれほど長くはないので、そうしたら自分の夢を永遠にかなえられないと思った。そこで1年を費やして自分の夢を叶えてから、現実的な生活に戻ろうと思った」と話した。頼さんの実家は四川省宜賓市の小さな町で、暮らし向きのいい家庭の同級生とは違い、旅行のためにわがままで仕事を辞めたりすることができない。だからこそ頼さんは仕事を本格的に始める前に、自分のやりたいことをやって満足したかったのだという。

 

「のんびり就職」は一種の多元的な選択肢

現在では、卒業後に焦って就職しない人がますます増え、従来の就業観とは大きく異なってきている。これに関して、四川省社会科学院の胡光偉教授は以下のように語っている。

「現代の経済や文化が発展していくにつれて、社会の多様性と寛容性が増し、大学生の就職スタイルも多元的に変化してきている。卒業後すぐに就職して、家を買って結婚する準備をする生活はもはや過去のスタイルとなった。今では多くの大学卒業生が1990年代生まれで、家庭環境に恵まれ、多くの卒業生がお金を稼ぐ必要性に駆られなくなった。そのことから、自分の能力を高める、または自己発展を追求していくという考えが増えていった。そのような人たちは、サラリーマンとして働くというような環境に限定されることはなく、新しいメディアまたはネット有名人のような仕事を選ぶなど、多くの大学生は新しい考えを持っている」。

そして、「現代の若者は、卒業後にすぐに就職することを要求せず、自分でお金を稼ぐ能力さえあれば、『ニート』や『すねかじり族』にはあたらないので、『のんびり就職族』でもたいていは批判されることはない」と話した。