中国の就職市場に「異変」


福州にある公園で集まっている若いお母さんたち

中国では現在、今年卒業予定の大学生が「就活」に奔走している。複数の合同企業説明会を取材すると、博士課程卒業者より学部生、海外留学して帰って来た人より、中国の大学の卒業予定者、独身よりも子供のいる既婚者のほうが有利であることが分かった。これまで有利と見られてきた「条件」に大きな変化が生じているのだ。専門家は、「就活で遭遇するこれらの現象は、中国の就職市場が成熟し、理性的になっていることを示している。学生が盲目的に周りに流されるのではなく、就職においては、実際の状況に応じて自分に適したキャリア成長の道を選ぶよう促す」と指摘している。

子供ありのほうが有利

これまでは、独身の卒業予定者は、子供のいる既婚者より就活においては有利と考えられてきたものの、今は後者の優位性となっている。大学院生の時に結婚し子供を出産したという余甚蘭さんは、「面接の時に、子供がいるというのは大きな加点材料になると感じた。結婚休暇や育児休暇を取る必要がないので、安定しているというのが競争におけるメリット。企業が採用を決める際の重要なポイントとなっている」と話す。

これまでは就活を有利に進めてきた多くの優位性が劣勢に変わってきている。清華大学(北京)新聞・伝播学院の博士課程を卒業した馮若谷さんは、就活において学部生のほうが有利と感じており、「博士課程を卒業する時には30歳くらいになっている。頭の切れや精力の点で若い人に劣る。学部を卒業してすぐに就職した同級生らはすでに企業の中間幹部になっている」と話す。

「高学歴」が逆に「負担」となることがあるようで、中には募集要項に「学部生のみ」と明記する企業もある。北京のあるインターネット企業の人的資源部で働く何さんは、「新入社員を募集する時は、高い能力が求められる技術系のポスト以外は、『実力』を重視する。運営や商品系のポストでは、頭が切れ、精力的な学部生を求める」と説明する。

高学歴者が「挫折」を経験しているのと同様、海外留学をして戻ってきた人も就職を有利に進めることができていない。英シェフィールド大学を卒業した郭培晶さんは帰国して就活をしているものの、「留学は加点材料にならず、中国国内での実践の経験がないのに、給料に対する要求が高いため、不利な状況が続いている。中国国内の大学卒業予定者に何度も『負けた』」と不調を嘆く。

企業は博士課程卒業者を敬遠

黒竜江省の万家宝鮮牛奶(投資)有限公司の人事マネージャーである程雨佳さんは、「同じ条件の場合、子供がいる人のほうが有利なのは、落ち着いていて安定しており、転職する確率が低いから」と説明する。

子供を持つ卒業予定者が就活において有利なのとは異なり、学部生の能力は博士課程卒業予定者におとるものの、実践性の強いポストでは、重宝されている。黒竜江大学政府管理学院の曲文勇教授は、「博士課程の卒業予定者は、高待遇を求める。しかし、博士課程卒業者が生み出す価値と、学部生が生み出す価値がそれほど変わらない業界もある。負担と成果の比率が合わないとなると、企業は博士課程卒業者を敬遠するようになる」と分析する。