「単独二孩」は中国をどう変化させるか

2013年11月に開催された第18期3中全会の閉幕後、中国各地で「単独二孩」の実施が始まった。現在の時点で、政策が実施されてから1年が過ぎた。中国の現状はどうなっているのだろうか。

 
「単独二孩」政策実施中、1人目の子供の反応が注目されている

「単独二孩」政策の始動

第18期三中全会で採択された『決定』においては、計画生育という基本的国策を堅持し、一方が一人っ子である夫婦は子どもを二人育てることができる政策の実施を始めることが打ち出されていた。

2013年12月28日に開催された第12期全国人民代表大会常務委員会第6回会議において、出産育児政策の調整完備に関する議案が審議・通過し、夫婦の一方が一人っ子であれば2人目の出産が許される「単独二孩」政策がスタートすることとなった。2014年、各省(自治区・直轄市)では、関連地方法規の改定あるいは新規定の制定が行われた。

 

実施から1年過ぎ出産ラッシュ起こらず

北京で「単独二孩(夫婦の一方が一人っ子の場合、2人目の子供の出産が認められる)」政策が実施されてから今年2月21日でまる1年を迎えた。しかし、2人目出産の申請数は、予測を下回っており、出産ラッシュとはなっていない。また、「未年生まれは縁起が良くない」という中国の伝統的観念の影響を背景に、同市の産婦人科の診察数は1月と2月、昨年同期比19%減となった。

 

「80後」「90後」の半数が「2人目はいらない」

中国青年報社会調査センターは2014年、全国の住民2052人を対象とした調査を行った。 「80後(1980年代生まれ)」と「90後(1990年代生まれ)」の調査対象者のうち、「子供はいらない」あるいは「こどもは一人で十分」、すなわち「2人目はいらない」と答えた人の割合は56.8%と、回答者全体の割合(47.3%)よりずっと高かったことだ。

 
養育費が高すぎることが「単独二孩」の申請条件を満たす夫婦が申請しなかった理由のトップ

1人目が2人目の子供出産に猛抗議

2015年1月19日,江蘇省徐州市の13歳の少女が、リストカットによる自殺未遂などで、母親の肖さん(44)を脅し、13週目のお腹の赤ちゃんを中絶させたというニュースが話題になった。また、同月29日には、河南省のあるネットユーザーが、「一番好きなのは永遠にあなた」という「保証書」を8歳の子供に書き、同意を得てから2人目の子供を産むというニュースがネット上で話題になった。

ある小学生720人を対象にした、「2人目の子供」に関する調査では、22%に当たる158人が「2人目ができてから、両親が前ほど自分によくしてくれなくなった」と感じていた。現代の子供は、弟や妹ができることを特に嫌がっているようだ。

 

「単独二孩」政策で女性は就職難

「単独二孩」政策実施後、一部の女性は産休を2度取らなければならず、企業にとっては女性を雇うと余分なコストが必要になるため、男性を優先して採用する企業も増加している。また、「2人目出産」が就職活動をしている女性のネックになっているほか、職場でバリバリ働いていた女性も「2人目を産む」か「昇進を目指す」かの選択を迫られ、困惑している。

 

「2人目出産の全面解禁」今年は試行無し

中国政府は14年3月から一人っ子政策の一部緩和を実施したものの、その効果は予想したほど上がっておらず、一部の専門家はすべての夫婦に2人目の子供を認める政策への変更を唱えている。

2人目出産の全面解禁までどのくらいかかるのだろうか。全国人民代表大会代表、国家衛生・計画出産委員会科学技術研究所所長の馬旭氏は3日、「今年は2人目出産全面解禁の試行を行うことは無いだろう」との見方を示した。

北京市衛生・計画出産委員会副委員長の鐘東波氏は「政府が以前発表した予想データは出産の意志に基づくものであり、実際の出産に結びつくにはまだ多くの要素が必要になる。3~5年しないと同政策の出産に対する具体的な影響は見えてこない」としている。

 

「単独二孩」は中国をどう変化させるか

南開大学人口・発展研究所教授、高齢発展戦略研究センター長の原新氏は、「単独二孩」政策は出生政策の微調整の範ちゅうに属し、中国の人口発展の総体的すう勢を変えることはないが、人口構造の改善、人口の質の向上、家庭発展の促進に有利になる、と示した。

第一に、毎年の適度な出生人口増加は、低出生率を人口維持出生率に近づけることを促す。中国の現在の出生率(女性1人の平均出産数に相当)は、すでに1.5~1.6にまで低下している。「単独二孩」政策施行後、年間出生人口は1800万人に達し、出生率はより人口維持出生率に接近し、人口そのもののバランスある発展に有利な可能性を秘めることになる。

第二に、人口ピラミッドの改善に適している。まず児童・少年人口のすみやかな増加により、年間出生人口の増加は、0~14歳人口規模にただちに影響を与えるのは必然だ。つぎに、徐々に労働人口が増加する。そして、新たな出生政策は2074年以降の高齢者人口総量のみに影響するが、人口高齢化水準にはすみやかに影響する。2030年には高齢化は、0.4ポイント減速する可能性がある。

第三に、出生人口の性別比低下が促される。新出生政策により出生数の適度な増加が可能となり、出生人口性別比は必ず低下するが、出生人口性別比を完全に正常に回復させるのは不可能である。

第四に、家庭の世代間人口構造を改善する。新出生政策により家庭における世代間構造の矛盾が緩和され、家庭内人的資源が増加し、家庭の経済社会での機能発揮などに有利に働く。