史上最も厳しい北京市の大気汚染対策条例
施行開始月の摘発で罰金総額約5000万円

4月12日、我々が乗ったタクシーの運転手が言った。「2日前、西四環を走っていたら、環境保護部の排気ガスチェックに出くわして罰金を取られたよ」。この運転手も、3月1日から施行された『北京市大気汚染予防対策条例』によって処罰された一人だ。4月10日までに北京市環境保護当局と都市管理当局が合同で行った4月の「環境執行ウィーク」では、北京市環境保護当局は193件を摘発し、さらに、多くの「単位」が都市管理当局に書類送検された。

 

罰金に上限なしの厳しさ

「罰金の方がコストが安くつく」という実情が、環境保護法令違反が繰り返されてきた主要な原因の1つだ。3月から実施されている『北京市大気汚染予防対策条例』は130条から成り、うち処罰に関する条項は40条ある。『条例』では違法行為に対する処罰を厳しくしており、罰金額を50万元(約823万円)も引き上げた条項もある。さらに、故意に違反したり、違反を繰り返したり、悪意をもって汚染物質を排出した場合は倍の罰金を課し、金額に上限を定めていない。また、企業に対しては企業評価に反映させ、深刻な環境汚染を犯した企業は刑事罰に処される。したがって「史上最も厳しい」条例と称されている。

北京市環境監察総隊の晏向陽調査研究員は本誌の取材に答え、『北京市大気汚染予防対策条例』が施行されて最初の1カ月で、北京環境保護当局が条例に基づいて摘発したのは100件で、罰金総額は301.3万元(約5000万円)にのぼり、64件が審議中であると述べた。

3月の1カ月の間に北京市は「零点行動」、「環境執行ウィーク」などを実施し、「執行ウィーク」の1週間で78の「単位」が環境保護当局により罰せられることとなった。それらを整理してみると、ボイラー排煙の基準超過が35件で最も多く、全体の44.9%を占めた。次に、石炭灰の防塵措置未設置が26件で33.3%であった。その他に設備管理が不正常、排ガス処理設備の未設置、クリーンエネルギーの未使用、環境保護設備ユニットの未検収などがあった。

当条例で初めて摘発されたのは北京宏翔鴻熱力公司で、北京市環境保護当局が行った「零点行動」で、基準を超えた汚染物質が検出され、10万元(約165万円)の罰金を課せられた。

 

市民からの告発と

警察との連動

晏向陽調査研究員は以下のとおり紹介した。「取り締まりの一部は市民からの告発によるものです。レストラン、入浴施設、中小企業の燃焼設備からの黒煙は、クリーンエネルギーを使用せず、石炭や薪、布きれなどを燃料に使用しているため石炭ボイラーの排煙は基準を超えてしまうのです」。

「小型ボイラーの制御は難しいのです。1つには、環境保護監察には限界があり、中小企業が多いため容易にリバウンドが起こるためです。2つには、都市周辺部の管理の遅れにより、企業の環境保護設備も間に合っていません」。

「すでに処罰を受けた企業は北京市環境保護局のサイト、微博、新聞、テレビ、ラジオで公表されています。これまでに再検査を行った結果、改善が見られなかった例はありません。ただし、執行の過程では協力的でなかったり、暴力や威嚇を受けることもあり、我々は現在、警察との連動システムを構築しているところです」。

 

持続性のある仕組みを

策定し再検査を実施

「執行ウィーク」以外にも、北京市環境保護局は社会監督の確立、部門間連携による法律の執行、法律の執行の周知、監督指導、地域間連携による法律の執行など多項目の持続性のある仕組みを研究・策定し、『条例』の遂行を図っている。「通報-取り締まり-公開」の検査システムも確立され、市民の通報を奨励する。

法律の執行や検査の重点は、季節や気象条件、汚染の規則性に従って調整し、業種ごとに企業の違法行為を厳しく取り締まる。

4月に環境保護部門が法律の執行・検査に重点を置くのは、飲食業、入浴施設などのサービス業の石炭コンロやかまど、セメント工場、コンクリート撹拌場、鉱物採掘などの工業企業の粉塵である。都市管理部門は、工事現場の粉塵、道路への撒き散らし、野焼きなどを重点的に検査する。5月から12月にかけては、環境保護部門はさらに、防水材、自動車製造、自動車修理、飲食業、家具製造、石炭ボイラーなど、排気量の多い業種への検査を行い、都市管理部門は工事現場の粉塵、道路への撒き散らし、野焼き、露天屋台などの取り締まりを強化する。

最新の4月の「執行ウィーク」の調査結果によると、4月10日までに環境保護部門から摘発・処分を受けた全市93「単位」のうち、主たる違法行為として、揮発性有機化合物と飲食業の油煙排気が24「単位」で25.8%を占め、飲食、入浴施設などのサービス業は36「単位」で、3月の結果とは異なる特徴を示した。

晏調査研究員は、「処分決定後、環境監察総隊は違反を犯した『単位』への再検査を改善期限満了後、業務日で10日以内に実施し、再び基準超過が見られた場合には、倍の罰金を課します」と述べた。