復興へ踏み出した中国アニメ

四角い顔で一本足の男の子が、古書のほこりを払うと、「ありえないことなんてありえない」という意味の漢字が現れてくる。先日、中国初のクラウドコンピューティングによるアニメ映画『v』が国際3D映画協会の2013年度の傑出功績賞を受賞した。中国アニメが世界的な賞を獲得することは不可能だと見られていた。『昆塔』が、ありえないことを可能にしたのである。

 

 

一心に技術を磨き、中国色を出す

2004年以来、テレビアニメの年間生産量は20%ずつ増えているが、多くの作品は政府補助金をねらったものである。

こういった雑なやり方が12年になって変化。同年のアニメ生産量は22万分で15%減少し、5年来初めての減少。業界では、アニメ産業は中国経済と同じく、ギアチェンジを開始して構造改革を図ったことを意味するとしている。

浙江博采伝媒公司の会長で、『昆塔』の監督でもある李煉氏によると、『昆塔』は撮影技術面で大胆に新しいアニメ制作方式を取り入れ、初めてクラウドコンピューティング技術を採用した。

超高画質の画面は阿里雲高性能コンピューター6700台により、全編のレンダリングが完成したという。『昆塔』はすでに海外の配給計画を締結し、韓国、米国などの主要映画館で上映される予定だ。

中国色が濃厚な3Dアニメ『兎侠伝奇』は、すでに99の国と地域に販売され、この30年で中国映画の最高の輸出成績を上げた。

このほか、『熊出没』はディズニーチャンネルに入り、同時にロシアのKuresel、イランのIRIBなど多くの国のテレビ局で放映されている。

「以前のような誰も知らない、力不足の時代は過ぎた。中国は自信を持って強い勢いでアニメ強国に乗り込んでいる」と国家新聞出版局宣伝管理司の高長力司長は力説する。

 

クリエイティブな人材を育成

1950年代には中国色が鮮明なアニメ作品が発信されていたが、90年代に米国と日本のアニメが大量に流れ込み、中国アニメ学派は沈んでしまった。

「その間、みんな中国アニメを復興しなければならないと言いながら、業界には覚悟が必要だった。近道をせず、浮つかず、長い修練期間に心を落ち着かせることでようやく達成できた」と『大閙天宮』の原画作者である厳定憲は話す。

現在、すでに『昆塔2』の制作が始まっており、制作期間は3年前後の予定だ。「前作ではハリウッドに限りなく近づくことを目標としたが、2作目はストーリーを改善して、子どもと大人ともに楽しめる映画にしたい」と李煉監督は語る。

その李煉監督は、「アニメ就業者として、私たちは先輩たちのあの年代をうらやましく思う。干渉されず、好きなようにやっていた」と、現在のアニメ業界は各方面からの圧力が大きく、人材の成長に時間を要すると言う。

人材の育成と備蓄は、中国アニメが良い軌道に乗るための重要な推進力である。しかし、教える側と教わる側の力不足で、アニメ学校の卒業生がアニメ制作会社に就職しても、さらに勉強しなければ使い物にならないということが多い。

しかし、多くの高等教育機関ではそうした状態を改善しようとしている。杭州師範大学文化創意産業研究院の夏烈院長は、カリキュラム上では学生たちにアニメが技術にとどまらず、多くの分野の内容を含んでいることを意識させ、「アニメ学部に、シナリオ科、アニメ表情訓練科を設け、学生たちに新しいメディアのアニメ制作、自作、自演、撮影、ネットへのアップ、コンクールに参加するよう指導している」とのことだ。

 

合作映画の制作にも主導権

委託は一時中国のアニメ企業の主要な仕事であった。長期的に委託された仕事ばかりをしていると、オリジナルなものを作る力がなくなり、人材が流出し、良い作品が生まれない。

しかし、そのような情況もまさに変わりつつある。先日、中国とオーストラリア両国のアニメ映画分野での初めての戦略的提携が上海で実現した。中国のアニメ会社、河馬動画、炫動伝播、金鷹カートンの3社がイーストオーストラリア映画局とオーストラリアの映画会社2社と提携し、共同で7500万ドル(約78億円)を投資し、大型アニメ6作品を制作する。

それらは、ファンタジー、歴史、科学ファンタジー、ファミリーコメディーなどさまざまなテーマで、2014年下半期に次々に全世界で公開される。そのうち、『マルコ・ポーロ冒険記』、『水地球』は全世界を視野に入れた国際的にもトップレベルのもので、『81号農場2』、『カンフーマスター李多多2』、『緑林大冒険2』 は中国市場ですでに成功したアニメの続編である。

上海アニメ業協会の副会長で、河馬動画の設立者であるツイ・ハーク氏は3年間をかけて書いた『マルコ・ポーロ冒険記』に、米国のアニメ会社が追加投資し、提携に参加したことを明らかにした。この映画はマルコ・ポーロが中国を漫遊したストーリーを通して、東方文明が世界に影響を与えた輝かしい記憶を重んじたものだという。

『水地球』は未来のある日、地球上の水がすべて盗まれ、深海が日にさらされ、上海やニューヨークなどの都市はすべて天上の宮殿のように雲の上にそそりたつ……という内容である。

ツイ・ハークは、「中国側はこれらの6作の合作映画について主導権を持ち、脚本、イメージ、作品からキャラクターまでの著作権を享受する。今までの中国の合作映画プロジェクトにはあまりないことだ」と述べている。

上海文広局映画処の張?処長は、「これは中国アニメ映画が『舟を借りて海に出る』重要なチャレンジだ。今回の提携の背後にある最大の変化は、中国アニメ映画会社がオーストラリア映画産業と資本、アイディア、制作、配給などの各ルートで高度に適合したことで、もう簡単に海外の加工、委託先にはならないということだ」と述べている。