経済成長だけでは幸福感をもたらせない

国連は第2回「世界幸福度レポート」を発表した。世界で最も幸福な人たちはスカンジナビア半島に住んでおり、1位がデンマーク、続いて僅差でノルウェーとスイスが続く。米国は17位、中国は93位で評価点数は4.978点(10点満点)と平均の5.1点よりも低くなった。

昨年に発表された2011年の全世界国民幸福感調査でも同様の結果で、中国人の幸福感はランキングの下の方であり、平均よりも低かった。これを深刻に受け止める必要はないとはいえ、国連のレポートは全世界の150余りの国々の2005年からの幸福度データを分析しており、一定の科学的根拠がある。

1つの国の幸福感と経済成長とはある程度関係していることは認めるべきだ。中国は近年、経済成長のスピードが世界1位であり、GDPも世界第2位まで躍進している。しかし、国民の幸福感は決して経済だけで決まるものではなく、1つの家庭が幸福かどうかは、金持ちであるかどうかだけでは決まらないのと同じである。「幸福経済学」の始祖であるイースタリン教授の有名な「イースタリンの逆説」は、「幸福の逆説」とも言われる。経済成長が早いほど、人は幸福になるとは限らない。それは国家の経済成長が生活を満足できるように改善できるとは限らないからである。

その角度から見ると、GDP世界第2位の中国で、国民の幸福度が世界平均よりも低いというのは正常なことではある。問題は経済成長と国民の幸福との格差を直視し、経済と国民の幸福とを同調させることができるかどうかという点にある。

では、いったい何が国民の幸福を盗み取っているのだろうか。ある調査によると、中国の幸福感アップに最も影響を与える社会的要素として、社会保障システムの不完全、各地域の経済成長の不均衡、社会の変化が人びとに大きなストレスを与えていることの3点が挙げられる。

専門家によると、何かを得た時に感じる幸福感はそれほど高くなくても、失った時にはすぐに不幸な感情が生じる。確かに、社会保障システムの不完全は中国国民に危機感を与えるだろう。収入が以前より増えても、20数年前より幸福になったとしても、病気になって有効な治療が受けられないことを心配したり、また老後の心配もある。「単純な経済成長は幸福感をもたらすとは限らず、社会保障の安心感こそが本当の満足をもたらす」と、イースタリンの言うとおりである。

また、各地域の経済成長の不均衡は人びとに貧富の差が広がり続けることを感じさせる。人と人との間で知らず知らずのうちに、仕事の地位、住宅、財産などを比べ、その結果、心には欲望だけが残り幸福感はなくなってしまう。

さらに社会の変化が人びとに大きなストレスを与え、不動産の高さ、物価の高さ、学費の高さ、それらが低収入に耐えている人びとの幸福感をそぎとってしまうのである。