深刻な都市の“光害”

都市のネオンサインやサーチライトの光に眼が痛くなったことはないだろうか? パソコンを長時間使用してドライアイになったことはないだろうか?  都市化の加速とともに光源も増え続け、“光害(こうがい)”という聞き慣れない言葉が人々の健康にも影響を与えている。ある報道によると、東洋の真珠―香港の光害は基準値の1200倍を超えているという。また、今年4月、2歳半の男の子が1年間iPadで遊んだ結果、500度の近視を引き起こしたというニュースが人々の関心を集めた。こうした光害は眼に悪いだけでなく、騒音のように、心身を蝕む新たな原因の一つとなっている。

 

どこにも潜む“光害”

一般的に、自然環境に影響を与えたり、人の正常な生活、仕事、娯楽、休息に悪影響を及ぼしたり、天体観測を妨げたり、人体の健康を害する光を“光害”と呼ぶ。現在、光害は主に太陽光反射光害、照明光害、カラー光害の3つに分類される。

内装に凝ったオフィスは特に光害に晒されている。建築材や塗料装飾が反射する光に眼が眩む。現代のオフィスワークにPCは欠かせない。職場のPCは朝から晩まで画面が点いたままで、オフィスワーカーは光害環境に身を置いている。光に晒されたまま長時間仕事をしていると、網膜と瞳孔がダメージを受け、眼精疲労はオフィス環境によるところが大きい。この状態が長く続けば、めまい、食欲不振、抑うつで医者の世話になることになる。

中華医学会眼科学分会角膜学組の孫旭光副組長によると、パソコンによる眼精疲労は“VDT症候群(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル・シンドローム)”と呼ばれる。医学会における定義にはまだ論争があるが、眼精疲労に悩まされるオフィスワーカーが次第に増えている事実からも、その影響は明らかであり、思考力や作業効率にも影響を及ぼすことは間違いない。運転手であれば、交通渋滞を引き起こしたり、生命に危険も及ぼしかねない。

夜の灯は更に深刻だ。町に夜の帷が降りると、ネオン灯がちらつき、広告灯が灯り、大きなビルは強い光の束で煌々としている。暗い夜は過去のものとなり、人工的な昼間が作られてしまった。人は日の出と共に活動し日が落ちると休息するというように、体内時計は太陽の動きに従っている。暗くなると、体内時計が自律神経を調整し眠くなる。夜が昼間のように明るいと、体内時計が間違ったシグナルに従い眠りに就けない。この状態が続けば必ず健康を害する。

昼間は職場で忙しく働き、夜も休むことなくパーティーやクラブに出入りする。夜遅くまで、きらびやかな光や薄暗い灯の中で光害に晒され、飲酒雑談にふける。クラブのブラックライト、回転灯、蛍光灯、ストロボライトなども光害だ。

「ブラックライトの発する紫外線は太陽光よりはるかに強く、長時間当たると白内障や鼻血を誘発したり、癌を発症する恐れもあります」と、国家中西医結合腫瘍重点学科、南京軍区福州総院腫瘍科の欧陽学農主任医師は忠告する。

また、カラーのストロボライトは、眼に良くない上に、中枢神経に影響しめまいを引き起こしたり、皮膚の老化を加速させたり、ひどい場合は嘔吐吐き気、不眠などの症状が現れ、精神的・肉体的悪影響を及ぼすという。

 

個人でも光害予防を

人類に光が必要である以上、光害を根絶することは不可能であるが、光害をできる限り減らすことはできる。

北京市労働衛生職業病予防治療研究所がかつて行った調査によると、パソコンワーク従事者の60%が眼精疲労や視力低下を訴えており、20%~30%に骨格筋損傷などの症状があった。これまでは、緑内障や白内障は高齢者に多く見られていたが、今では20代~30代にも珍しくない。また、白内障のほとんどが中度から一気に進んでいる。パソコンやインターネットの普及によって若者が過度の眼精疲労を引き起こしていると見られる。

専門家は、光害による眼精疲労防止についてアドバイスする。眼に負担をかけないために、パソコンスクリーンやメニュー画面を淡緑色にする。パソコンに向かう時は、多めにまばたきをし、1~2時間に一度は休息をとる。長時間の使用や近距離で画面を見ることは避ける。長時間パソコンワークをする場合はコンタクトレンズを避ける。眼が疲れたら、擦って温めた両手で眼を覆ったり、熱いタオルで眼の周りを軽く押さえると眼精疲労を緩和できる。

建材の反射や照明器具による光害について、グリーンテクノロジーを推奨する朗詩不動産の責任者を取材した。内装には白色や金属など光を反射するタイルや磨いた大理石はあまり使用しない。研磨タイルを使用した場合は、できるだけ小さな照明にし、反射光が発生しないようにして、光害を最低限に抑える。柔らかい白熱灯、ミラー白熱灯、蛍光灯の光害は比較的小さく、リビングにはこれらの照明が多く用いられる。局部照明には、遮光性に優れた電気スタンドを用い、これらの光源が出す赤外線をブロックする。

 

国は光害の法整備を

現在国は、騒音問題、大気汚染、水質汚染は法律により取り締まりを行っている。しかし、光害に対応する法律はまだない。光害防除のための法律を整備すべきである。

中国科学院国家天文台研究院の王俊傑氏は指摘する。「光害の取り締まりに関しては大筋の規定があるのみです。呼びかけだけで、具体的な予防措置や事後処理については言及されておらず、罰則もありません。体系化しなければコントロールはできません」。

中国国内には光害の取り締まりついての明確な法律はまだ無いが、一部の都市で先駆的な取り組みもある。天津市では、2012年5月に『天津市都市照明管理規定草案』が公布され、景観照明の設置に関しては光害を引き起こしてはならない、公共の安全を脅かしてはならないと明記されている。また、深?市都市管理局が公布した『深?市福田区、羅湖区、南山区、塩田区、北駅地におけるLEDディスプレイ設置規定』では、住宅地でのLEDディスプレイの設置は禁止され、市民への光害被害を防止している。こういった地方の取り組みは、生活環境を破壊する光害を効果的に軽減させるための参考となる。