中国産粉ミルクへの信頼は回復されたのか

外国産の粉ミルクの代理購入が盛んで、中国産粉ミルクは愛想をつかされている。国産は市場の信頼は欠如しているのに、消費への自信をアピールしている――これが目下、国内の人々の乳幼児用粉ミルクに対する一般的な意識だ。これに対して中国乳製品工業協会副理事長の劉美菊氏は、「2012年には合計11回の抜き取り検査を行った。その結果、市場の主流ブランドの乳幼児用粉ミルクはすべて品質に問題がないことが示された。100%合格であるから、消費者は安心して使うように」と語った。

信頼回復への問題点

国産粉ミルクブランドに対する消費者の信頼を拡大するために、乳製品企業・政府・業界団体ともに大きな努力を払ってはいるが、根本的な制度の問題が本当の解決をみていない。そのため、一般大衆の国産粉ミルクに対する警戒と傍観は続いており、庶民の国産粉ミルクに対する信頼の立て直しに大いに影響している。この根本的な制度的問題は、主に次の5つになる。

 

(1)「国家基準」の不信感

「国家基準」と「国際基準」の問題である。社会通念からすると、中国国民が粉ミルクに関して「西洋崇拝」している以上、国産粉ミルクの信頼立て直しには、西洋の粉ミルクと同等の安全基準を、ひいては、さらに厳しい基準を採用する必要があるということだ。しかしながら、いまだに国産粉ミルクの「国家基準」は低く、2011年に制定された乳製品新国家基準は「全世界最低基準」とまで言われ、これにより中国国民の国産粉ミルクの品質に対する不信感を増加させたのは間違いない。

 

(2)情報の信憑性

品質検査の情報の信憑性の問題である。品質検査部門と業界団体が国産粉ミルクに対しての抜き取り検査を厳しくし、2011年から「毎月の実施」としたが、庶民は検査・測定機構本体の信頼性に疑問を持っている。加えて発言が一貫しておらず、3月3日に、中国政治協商会議スポークスマンの呂新華氏が「国産粉ミルクの99%は安全である」と言ってから間もなく、「100%が合格である」と変わるなど、数字上の違いだけでなく、「安全」と「合格」の概念の置き換えさえ出現してきた。これによって中国国民の信頼を増強するどころか、逆に品質検査の情報の信憑性に対する疑いが深まることになったのだ。

 

(3)品質検査の透明性

品質検査の透明性の問題もある。呂氏が「99%は安全なものだ」と言ったことに対して、中国政治協商会議委員でCCTV司会者の崔永元氏は、ざっくばらんにこう言う。「もちろん信用されないさ、だって1%がどれなのかどうしてわかる? 今だって同じだ。『主流ブランド』は100%合格、だけど『主流ブランド』というのは何なんだ? どれが『主流ブランド』なんだ? 消費者にはさっぱりわからないよ」。

 

(4)食品の安全への不信感

そして、食品安全への心配全体が重なり合っている問題。長年、中国の輸出製品の検査・測定は国内販売製品に比べて厳格で、輸出食品の合格率すべてが国内販売の合格率を上回っていたことはまぎれもない事実だ。これに加えて、国内で頻発している食品の安全に関する事件が、中国国民の国産食品に対する信頼に深刻な影響を与えている。国民の国産粉ミルクに対する不信感は、中国食品の安全への不信感の1つの縮図に過ぎないのだ。

 

(5)懲罰制度の欠陥

さらに、食品安全の懲罰的損害賠償制度の欠陥という問題。世界では、多くの国が非常に厳格な「懲罰的損害賠償制度」を設け、食品生産企業に一線を越えさせないようにしており、いったん食品の安全に問題が発生すれば破産することになりかねない。中国では、「消費者権益保護法」の「二倍賠償」であっても、「食品安全法」の「十倍賠償」であっても、あるべきはずの懲罰の効果がなかったのだ。

 

信頼の再構築に向けて

根本的な制度問題が未解決のまま、「声が潰れるほどアピールする」だけで国産粉ミルクの信頼を取り戻すことは明らかに難しい。的を射た政策を行うことこそが、本当の改革であり、「信頼できる制度」および「制度に対する信頼」が構築できる。そうした意味で、国産粉ミルクの信頼再建は「全力」で取り組まなければならず、国産粉ミルクが社会に対する信頼の再構築の見本になることを人々は心から期待しているのだ。