どこもアニメ作りで、お金儲けに忙しい

2月25日、記者は北京市朝陽区三間房郷にある全国で初のアニメ産業団地を訪ねた。ここは北京郊外の都市との境にある小さな町で、582軒のカルチャー系の企業が集まっている。年間のアニメ生産は2万分を越え、北京の半分を占めている。昨年、ここで創作されたアニメ映画『淮南子伝奇』(図を参照)は、現在も中央テレビの子供向けチャンネルで大人気番組となっている。一般庶民が参加し制作に従事したことで、ここのアニメ産業は発展した。元宵節(げんしょうせつ、春節〈旧正月〉から数えて15日目、日本の小正月にあたる)が過ぎると、次々とアニメ研修班が開講し、お正月を楽しんでいた産業団地も、にわかに活気を取戻した。

 

産業の発展は住民の力

40歳の劉方正さんは産業団地のアトリエで忙しそうに制作している。しばらくするとコンピュータの画面上に美しい仙女が躍り出た。彼は振り向いて、「以前はアニメといってもみんな手さぐりで、マウスを握る手も震えていましたよ」と話した。劉方さんは2011年、はじめて団地のアニメ制作研修班に参加した。そして、去年、数人の仲間の住民と一緒にアニメ映画『淮南子伝奇』の制作に携わった。

産業団地の責任者である劉艶さんは、次のように語った。「アニメ産業団地は実際には住民に文化的なサービスを提供する「架空の団地」で、水郡長安、芸水芳園など4つの行政区をカバーしています。ここでは、アニメ文化が劉方さんのような中年の人に影響を与えただけでなく、住民の暮らしの中にまで浸透しているようです」


謝さんと夫が孫といっしょに、巧娘工房でアニメキャラクターのビーズ手芸をしているところ。(撮影/王越)

66歳の謝さんは、産業団地にたくさんある研修班の常連の一人である。「非凡アトリエ」でスケッチを学び、巧娘工房でビーズ手芸を学んだが、やがて夫の卜さんまでさそって、いっしょにアニメ制作を学び始めた。彼女は「最近は先生が教えてくれた布の貼り絵に、はまっています」「お正月に、私が作った貼り絵をアメリカに持っていったのですよ」とうれしそうに話してくれた。

北京師範大学管理学院の王洛忠副教授は、次のように考えている。三間坊郷はアニメという日の出の勢いの産業を導入したことにより、住民たちの持つ潜在力を発掘した。このような正しい指導が、庶民の文化的素質が高めたばかりでなく、周辺の文化創作産業を発展させる起爆剤になったと。

産業が庶民の生活を育てる

産業の急速な発展により、住民たちは実益を得ている。かつての三間房には、今のような活気はなかった。農村の都市化によって、村民はマンションに住むようになり市民になった。数年前には、ここは土地がなく、産業が少ない地域になっていた。三間房郷の劉静副郷長は、次のように語った。「新しい都市機能の位置づけと、新たな地域産業をどのように地域と結びつけるかが、郷政府の重点的な仕事になっています」と。

中央テレビ局と北京テレビ局が東部に移り、鳳凰衛星テレビが地元に入ったことで、三間房郷にチャンス到来と思わせた。2011年に「アニメ産業団地」が成立し、その後次々に企業の参入が進んだのである。

現在、ここには582軒のカルチャー企業が集まり、年間生産額は3億元を超えている。昨年6月には正式に「国家アニメ産業基地」の看板を掲げた。

また、昨年の第7回文化博覧会は三間坊郷に分会場を設け、住民のためにアニメ関連グッズの展示即売コーナーを設けた。産業団地の住民が制作した工芸品は大人気で、売れ行きは上々であった。

以前「アニメ制作研修班」に参加したことのある10人の障害者は、彼らの努力と産業団地からの推薦によって、万豪アニメーション会社と労働契約を結ぶことができ、在宅で就業するという夢が実現した。

王洛忠先生は次のようにみている。三間房郷は産業と工業団地と住民とを結びつけて、もともとの行政区画の壁を取り払い、アニメの産業団地に発展させた。企業は自発的に集まって、さらに政府の後押しが加わり、アニメの夢を実現させた地域として、中国の文化産業の発展モデルとなっている。