中国武術が叶える“アメリカンドリーム”


2008年北京オリンピックエキシビションで、中国武術を披露する中国女子剣術チャンピオンの馬霊娟。

アメリカ国籍の中国人で、現在、国際武術連合会副主席を務める呉廷貴氏のアメリカンドリームには、中国への思いが詰まっている。1979年から彼は、アメリカで中国武術教育の普及、中国武術文化の宣伝に力を入れ始め、この道一筋30余年である。

彼の最大の願いは、中国武術がオリンピックの正式競技種目になることである。「中国由来の競技種目は少ないですが、中国を最も象徴しているのは中国武術だと思います」。

しかし、中国武術をオリンピック種目にする道のりは決して平坦ではない。中国武術とオリンピックの初めての出会いは1936年に遡り、ベルリンオリンピックでエキシビションを行った。ところが、本腰を入れ始めたのはわずか20数年前である。中国武術がオリンピック正式競技種目に採択されることを目標に、1990年に国際武術連合会が発足したが、折悪しく、オリンピック競技種目縮小計画とぶつかってしまった。2001年、北京がオリンピック開催地にエントリーし新たな希望が見えた。しかしながら翌年、競技種目申請は再度否決され、中国武術は2008年の北京オリンピックでのエキシビションにとどまった。

中国武術をオリンピック種目にするには大変な苦労があるが、国内外の関係者の努力が止むことはない。

1996年と2002年、国家体育運動委員会は二度にわたって『武術競技規則』に大きな改訂を行った。競争システムを導入し、武術競技規程の質的改革を行い、ルールを全面的に、科学的に、系統的に高いレベルにした。

さらに、呉廷貴氏らの積極的な働きかけにより、武術競技の採点基準や競技規則および競技場、器具などすべてを明確に数量化・等級化し、完全な判定体系を打ち立てた。

中国の四大固有文化の一つとして、柔道やテコンドーのようにオリンピック種目に採択されないことは、国内外の華人にとって非常に残念なことである。

しかし我々は、現在の競技武術の試合体系は、オリンピックの競技種目の要求にまだ達していないことを知るべきである。中国武術競技の認知度の低さが中国武術発展のネックとなっている。同時に、中国武術が中国文化として明確でないことが、外国人に中国武術の攻防の所作の文化的意味と内包するものを理解しづらくしている。

嬉しいニュースもある。武術太極拳が他の7競技とともに、2020年のオリンピック新規競技候補となった。近く呉廷貴氏は国際武術連合会の仲間とともに、オリンピック組織委員会に申請陳述を行う。最終的に選ばれるのは1競技のみであるが、武術太極拳史上、未曽有の快挙である。

海外の華人が中国武術を国際社会に広める使命は大きい。呉廷貴氏のような中国武術の国内外の関係者のたゆまぬ努力のもとに、武術太極拳が願いどおり正式種目に採択され、中国武術独特の魅力を世に知らしめ、この文化遺産が大いに発揚されることを期待したい。