2012年は中国にとっても世界にとっても特別な1年であった。中国共産党第18回全国代表大会、「チャイナ・ドリーム」、莫言氏のノーベル賞受賞、地域外大学受験、祝日の高速道路無料化など、すべては共通のテーマを志向している。それは「幸福」だ。莫言氏はノーベル賞を受賞し、幸福かどうかを聞かれた。幸福都市ランキングで、どこの市民が幸せかを比較した。高速道路の無料化は人々に幸せな旅行をもたらした。中国人は幸福について熱く討論し、幸福について考え、政府も国民の幸福を政策の目標とした。習近平総書記は、「人民のよりよい生活に対するあこがれが、われわれの奮闘目標だ」と述べ、中華民族の偉大な復興という「チャイナ・ドリーム」を実現し、全国民の幸福を育むとした。
「幸福」をめぐる論争
2012年の中秋・国慶節の連休に、中央電視台は「末端を行く 庶民の声」キャンペーンの特別番組『幸せ?』を放映、9月29日から9日間の幸福度調査を連続して行った。庶民の回答がそのままテレビで公開され、「幸福」をめぐる全国的な論争を引き起こした。街頭や路地からの回答は多種多様であり、一般庶民の最も素朴で生き生きとした真実の幸福感を提示した。
清華大学高校徳育研究センターの馮務中教授によると、多くの学者が改革と発展の過程では人々の幸福問題を重視する必要性を強調しているが、その影響には限界がある。しかし、「テレビのわずか9日間の番組により全国民に幸福論争が巻き起こったことは、非常に大きな功績であった」と言う。
2012年、国民の幸福感を上昇させるため、中央と地方はともに国民生活のための施策を打ち出し続けた。3月には「財政性教育経費支出をGDPの4%とする予算編制」の政府報告が出された。8月には都市農村住民大病保険が新たに公布された。中秋・国慶節の連休に、全国の高速道路で普通乗用車の無料化が初めて実施された。2012年1月~10月、全国での政府の補助がある低中所得者用住宅722万戸が着工し、505万戸が完成し、2012年計画指標を前倒しで達成した。
「公共の幸福とは一般庶民が公共のものを享受することで得られるもので、政府はこの種の幸福の最大の創造主である」と、国家行政学院経済学部の張孝徳副主任は述べている。
チャイナ・ドリームとは何か
一人ひとりがみな幸福を願っており、より良い生活という夢を追っている。しかし、個人の発展は国家の発展・進歩と切り離すことはできない。個人の幸福と国家の夢とは密接に関係している。
「チャイナ・ドリーム」とは何か。習近平総書記は11月29日、国家博物館の「復興の道」の展示を視察した際、「中華民族の偉大な復興の実現こそ、中華民族の近代以降の最も偉大な夢である」とした。
中央党校党建部の蔡霞教授は、その発言は中国共産党が民族復興という基盤の上に全民族の力を集結させ、民族の偉大な復興という「チャイナ・ドリーム」の実現のため引き続き奮闘していく表明であると言う。
近代以降を回顧すると、国家は滅亡の危機に直面し、民族は「アジアの病人」と嘲笑された。そんななかで個人が幸福を求められるわけがない。新中国が立ち上がってから、改革開放で豊かになるまで、そして21世紀に強国となるまで、国家と民族の隆盛は個人の幸福に堅固なよりどころをもたらした。国家が良く、民族が良いことで、個人も良くなる。
中央党校国際戦略研究所の周天勇副所長は「チャイナ・ドリーム」についてこう語っている。「一人ひとりの中国人が自己の創業と就業の中での奮闘を経て、自己の安定した生活を実現し、事業の成功を実現することである。そしてエコで美しく、衛生的で、空気のきれいな環境のなかで生活し仕事をすることである。われわれの家は美しい中国なのだ」。
チャイナ・ドリームと幸福
2020年には全国的に安定した社会を建設するという目標実現のため、中国共産党第18回大会では「GDPと都市農村住民の1人当たり所得を2010年の倍にする」と発表された。このなかで、「2つの同時進行」も発表された。これは国民所得と経済の発展を同時進行する、労働報酬アップと労働生産性アップを同時進行するというものである。
習近平総書記は11月15日の中国共産党の新常務委員と記者との会見の席上、「人間社会のすべての幸福は厳しい労働から生まれるものだ」と述べた。そして11月29日、習近平総書記は国家博物館の「復興の道」の展示を視察した際、「空論は国を誤らせる。国家振興を実行しなければならない」という強力なコンセンサスの形成を目標に掲げた。
清華大学電子系の大学院生である呂志強は、「国家振興の実行」には科学技術の進歩が求められており、「製造業から科学技術のイノベーション(新機軸)による経済発展へと転換すること。それと同時に、科学研究の環境と研究人員の待遇を改善し、国内のハイテク産業の継続的な発展とイノベーションをサポートすることだ」と考えている。
「実行とは、よく働くこと」と山東省?坊市の農民である呉玲は言う。「政府も庶民の現実問題の解決をもっと助けてほしい。例えば農村でもみな水道水が飲めるようにしてほしいし、山間部でももっと道路を修繕してほしい」。
「もし中国が発展しなければ、一般庶民が夢を実現する機会はさらに小さくなる」と北京大学中文系の張頤武教授は語る。「同時に、もし一般庶民が夢のために堅実に努力することがなければ、中国の進歩と繁栄もあり得ない」。
幸福とは、庶民のより良い生活へのあこがれである。チャイナ・ドリームとは、中華民族の偉大な復興であり、中国人代々の宿願であり、一人ひとりの幸福な生活のよりどころである。労働の中に個人の幸福を創造し、実行の中でチャイナ・ドリームを実現する。幸福についての永遠の問いは2012年だけのことではない。その問いは未来においても人々に、さらに長く続く思考と行動を促すに違いない。
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