生活用品は高級化、携帯・パソコンはブランド品
「入学にかかる費用」は20年で100倍近くに

「学費5500元(約6万7800円)、生活費4000元(約4万9300円)、電気製品7500元(9万2500円)、衣類や靴帽子2000元(2万4600円)、寝具一式700元(約8600円)、交通費1400元(約1万7200円)」

最近、江蘇省出身の朱秀華さんが、ネット上に娘の入学でかかった費用を公開した。入学と同時に新入生と親は入学用品をそろえるのに奔走する。たちまち「新入生お買いものブーム」が巻き起こる。学費、住居費、交通費、生活用品からコンピュータまで、新入生にはいったいどのくらいお金がかかるのか。

ダントツの出費は携帯とパソコン

大学が始まると、北京の大型ショッピングセンターは人でごった返す。どこの親も晴れて大学生になった子どもとともに、入学必需品の買いものにやってくる。王府井の商店街では海淀区からきた崔さんが、山ほどの買い物を手に、目を細める。「息子がもうすぐ大学に入学するので、布団、洋服、携帯、どれも必要でしょう。1万元(約12万3400円)以上使ってしまいましたよ」。

崔さんのような人は決して珍しくない。毎年入学シーズンになると、どこのショッピング街でも「新入生お買いものブーム」が巻き起こる。北京交通大学で学ぶ曹越哲君はこう言う。「大学に入ったら洋服や靴も全部新しくしないと。携帯、パソコン、布団なども買わなければならないし。故郷を出て一人暮らしを始めると、いままでかからなかったところにも金がかかります」

調査によれば、最近の大学の学費は年間5000元(約6万1700円)前後で、入学許可が届いた時点で納めなければならない。しかも入学にかかる費用は7000元(約8万6100円)前後になり、それに交通費、生活費などが加わり、少なくとも1万5000元(約18万5000円)は用意しなければならない。1990年代初め、大学生の入学費用はたった数百元だったが、この20年間で、入学にかかる費用は100倍近くになった。

特に携帯やパソコンなどデジタル製品の費用がダントツに多い。最近は大学に入る前にかかる費用もどんどん増えており、デジタル製品は、2、3年前の「三大グッズ」から「五大グッズ」に変わった。つまり、携帯、MP4、ノート型パソコンだけでなく、デジタルカメラ、ゲーム機などが加わるのである。さらに注目されるのは高級品が大学生のお気に入りになっていることだ。中関村地区(北京の秋葉原)のアップルショップでは、7月以来、売れ行きがうなぎ登りだ。アップル製品について言えば、買い手の主力は大学生だという。

親の消費意識にも変化

「入学ビジネス」は何が火をつけたのか。南京大学社会学院の胡小武副教授は、このような現象が現れた背景には、多くの要因があると指摘し、次のように分析する。時代が変わり、子どもの進学がもたらす出費は免れられない。生活必需品はどんどん拡大している。一人っ子家庭が多数を占める今日、こうした消費ブームの主な原因は子どもに対する親心にある。

この問題については、朱秀華さんも語る。「子どもは12年間も必死に勉強して、やっと大学に合格したのよ。欲しいものを買ってやって、励ましたい。子どもが遠いところへ行けば親は心配ですが、必要なものを全部そろえてやれば、多少安心できますよ」。

物質的なレベルアップと家庭の購買力の強さが消費ブームを支えている。昔に比べ、現在の入学必需品は全く異なる。

新入生の必要経費も6000~7000元(約7万4000~8万6000円)から10数万元(10万元は約123万4000円)とさまざまで、高価な電気製品のほかに、子どもに車を買い与える豊かな家庭もある。北京師範大学の王英傑教授は「家庭に経済的な余裕ができたことと、市場経済によって価値観が変化したことにより、今の親の消費意識に変化が起きた」という。

このほか、企業によって研究しつくされた販売戦略も、入学消費ブームに関係している。 胡小武氏は「ネットがあおる『入学特別優待』でも、商店の『新入生売り場』でも、いずれも企業が消費者に刺激を与えている。 こうした販売戦略が保護者の消費をあおる大きな原因となっている」と指摘する。

新入生に節約の呼びかけ

新入学の消費ブームは衰えないが、四川省出身の大学生・呉奇仍さんは、パソコンは自分で稼いだお金で買いたいという。贅沢な買いものができる家庭はそれほど多くなく、物を買うときは自分の家の家計簿と相談しなければならないと考える人もいる。

王英傑教授は、「入学準備の買いもの」は理性的で適度なものでなければならない。そうでなければ、大学生が持ち物を競う風潮をあおることになると考えている。すべての家庭の経済状況がよいというわけではない。派手な消費を追い求めるのは、学生の心理状態や大学の学習環境にも悪影響を与える。大学は教育の一環として学生を正しい価値観に導き、入学に必要な買い物は経済状況に応じて、分相応にするように注意しなければならない。

「入学が決まったからといって、親は最初から一気に買う必要はないし、すべての必需品が高級品である必要もない。電気製品の中には必要でないものもある」。

悪い風潮を懸念して、胡小武氏は次のように提言する。「社会は新入生が節約し、軽装で大学生活を送るように呼びかけなければならない。大学は学生の人格形成に力を入れ、学生が学習に励んで質素な学生生活を送るように指導していかなければならない」。