「豊かになる前に老いる」問題をいかに解決するか

中国老齢協会主催の「人口高齢化対策戦略研究会」が、7月1日に北京で開催された。全国人民代表大会常務委員会の華建敏副委員長、国家人口高齢化対策戦略研究課題組専門家委員会の蒋正華主任、民政部の李立国部長など、高齢化問題を研究する専門家や学者200人以上が出席し、人口高齢化に対応するためのアイディアを出し合った。

60歳以上の高齢者が18500万人

李立国氏によれば、「昨年末までに中国の60歳以上の高齢者は1億8500万人に達した。2050年頃には4億8000万人前後になり、人口の3分の1を超え、人口の高齢化が高い国の一つになる。しかも、先進国と比べて中国の高齢化は複雑で、課題は重く、時間は切迫している」。

さらに華建敏氏は次のように分析する。「“十二五”(第12期5カ年計画)の期間中に中国は高齢者が増大する最初のピークを迎える。年平均して860万人ほど増え続け、全国の高齢者人口は“十二五”の末頃には2億2100万人に達することが予想され、それは全国総人口の16%を占める。2021年から2035年までに、高齢者増大の第2のピークとなり、年平均で1100万人以上増加していく見込みである。現在、全国の60%近くの高齢者が農村で暮らしており、農村における高齢者は、都市の5%よりも高い16.3%を占めている」。

?正華氏は予測する。「人口の高齢化は労働力構造、消費の需給構造、国の税源構造を変え、国民貯蓄や資本蓄積を低下させ、高齢者の社会的なコストを引き上げるだろう」。

 

ますます必要となる高齢者向け産業の計画化

中国社会科学院数量経済・技術経済研究所分析室の李軍主任も予測する。「“十二五”の期間中、中国の15歳から59歳の労働年齢人口は、上昇から下降へと転じて、その後、数十年は低下を保持したまま推移するだろう。2021年から2025年までは、人口の高齢化が中国経済の発展に最も厳しい影響を与える時期となり、この時期に、潜在的な年平均経済成長率は約2.2%下がるだろう。そして、これからの40年間、つまり2011年から2050年までは、人口の高齢化によって、中国の潜在的な年平均経済成長率は約1.7%下がるだろう」。

北京大学老齢者健康・家庭研究センターの陸潔華副主任が問題点を指摘する。「高齢者向け産業の発展は楽観を許さない。第1にはっきりしない産業政策のため、政府、社会、市場の分業が不明確である。第2に、産業の発展は投資を必要とするが、この投資も効果が現れるのが遅い。それまで、いかに財政、金融、科学技術がサポート力を発揮できるかが、ネックとなる課題である。第3に、現段階では産業計画が欠如しており、基本的にはやみくもな発展状態にある。第4に、豊かになる前に高齢化問題が起きて、高齢者の消費能力にも限界がある。第5に、高齢者向け産業に関わる専門家の人材が手薄であり、産業発展を後押しする人材が足りないこと。第6に市場参加のシステムがまだ整っていない」。

 

養老保険制度は公平であるべき

全人代内務司法委員会副主任委員で経済学が専門の辜勝阻氏は指摘する。「高齢者をグループは4つのグループに分けられる。“能力喪失、高齢、三無(労働能力、生活保障、子ども)、空き部屋(子ども世代が巣立って同居していない、または夫婦だけの世帯)”であり、世話を必要としている。現代の家庭規模や構造の変化により、家庭で高齢者の面倒をみることが難しくなっている。しかも農村の若者が都市に流動しているため、農村で留守を守っている高齢者が4000万人もいる。そのため、農村の養老問題は非常に厳しい」。

中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡昉所長は提案する。「“豊かになる前に老いる”のは中国独自の問題だが、解決しなければならないのは「まだ豊かになっていない」ということである。持続可能な成長を保持し、養老保険制度の加入率を高めることは、養老金の支出を節約することよりずっと重要である。一部の高い技能、高い教養を有した人材を活用するとともに、教育を受けることが不十分だった一般の労働者を保護するよう、退職制度は柔軟に実施しなければならない」。

中国人民大学社会保障研究センターの鄭功成主任は提案する。「中国では、年間の養老保険基金の収支不均衡がいつ現れてもおかしくない。養老保険制度がカバーする広がりが拡大するのに従い、養老金支払いのピークが、すでに人口老齢化より遅れている。当面、より重要なのは、養老保険制度に対する信頼を打ち立て、人々の不安や焦りを減らすことである」。

中国人材資源・社会保障部社会保障研究所の何平所長は次のように語る。「現在、養老保険制度が十分でないのは、主として機関事業の公務員と企業労働者の待遇に差があることである。制度の公平化を強化し、適時に機関事業の養老改革法案を出すことを提起しなければならない。制度が活動するには、事前に予告が必要である。養老保険制度の実施については、機関事業と企業における養老保険制度が公平でなければならない」。