位置情報付き携帯電話で住民センターに直通
高齢者介護は「デジタル時代」に突入

年老いた趙水鳳さんは、連れ合いが道で倒れたのにどうすることもできず動転していたが、住民センターから配布されたお年寄り携帯電話のことを思い出して、赤のボタンを押した。社区民生サービスホットラインは直接住民センターにつながっている。幸いなことに10分後にセンターの介助者が現場に駆けつけて救助してくれた。

この「救急救命高齢者介護携帯電話」は、浙江省が初めて高齢者介護にデジタル化を採用した杭州市下城区潮鳴街道が高齢者に配布したもので、位置情報サービス付きである。科学技術が飛躍的に発展する今日、杭州の社区サービスはデジタル化が進み、高齢者介護にもデジタル化の時代が到来している。

 

特製携帯電話でサービスに直通

 集合住宅の東園社区37号棟に住む鈕継傑さんは今年68歳。1998年に最初の脳卒中で倒れて以来ずっとベッドから起き上がれず、妻の呉美娥さんの世話になってきたが、最近やっと少しベッドから降りて歩けるようになった。子息は寧波で働いており、正月に里帰りして親の顔を見に帰ってくるが、普段は「高齢者のみ世帯」だ。

 「これは高齢者のための携帯電話です。上の方に赤いボタンと緑のボタンが付いていて、日常の情報サービスを受けるときは緑のボタン、緊急事態には赤いボタンを押せばいいのです。住民センターは電話を受けるとシステムが作動して私たちの居場所を探してくれて、対応がとても早いのです」と呉さんは語る。

 この介護電話はすでに人々の暮らしの中に溶け込んでいる。「連れ合いが歩けるようになってから、毎朝公園に散歩に行かなければなりませんが、私が忙しくて行けないときは緑のボタンを押して介助者にお世話をお願いします。また車イスを出してもらい病院へ検査に行ってもらうこともあります。介助者は我が家の家族みたいですよ」と呉さんはうれしそうに話す。この住民センターでは300人以上の高齢者が介護電話に登録している。

 

情報化管理が「デジタル介護」を実現

突発的な急病の緊急電話、水漏れの電話、政策に関する相談の電話、隣人とのもめごとの発生など、「潮鳴デジタル民生ホットライン・システム」は開設以来、大小様々な問題について、毎月数十から数百本の電話がかかっている。

 潮鳴街道の林立副主任は「潮鳴街道は九つの住民センターで民生ホットライン・サービスを展開しており、全体で132人の介助者が配備されている。東園社区だけでも15人の介助者が当番制で、24時間体制で対応しています」と説明してくれた。

 街道障害者連絡委員会スポークスマンの劉麗さんは、記者に対して、コールセンターの仕事の流れを紹介してくれた。住民がホットラインや介護電話でコールセンターに連絡すると、GPRS(位置情報システム)が作動して、「民生ホットライン」のコールセンターは、画面上ですぐに住民の居場所や氏名、電話番号、疾病状況など住民の基本情報を確認できる。それから係員が近くにいる介助者の業務用携帯電話に送信して、介助者がただちに現場に赴く、という仕組みだ。

 住民の問題が解決すると、介助者は携帯電話を通じて「実態報告」を行う。これによりコールセンターの管理システムでは、住民からの要求がうまく処理できたかどうか把握するのである。

 記者が取材のため呉さん宅を訪問したとき、ちょうど東園住民センターの介助者の厳旭峰さんが呉さんに携帯の充電器を届けようとしているところだった。厳さんは、まずスキャナーで住宅棟に張り付けてあるバーコードをスキャンしてから、記者を案内して呉さんの家に入った。

 介助者は住民の家を訪ねるときに「介助者カバン」を持っていく。その中には業務用携帯電話、住民生活状況の連絡カード、バーコードスキャナー、(室内用の)靴カバー、メモ用紙とペンが入っていた。

 住宅を訪問するとき、介助者がバーコードスキャナーで住宅棟の壁面に張ってあるバーコードをスキャンするだけで、この家の住民の具体的な状況、例えば障害者が何人いるか、障害のレベルなどを把握することができる。同時に、訪問時間や場所をコールセンターに送信できるのである。

 

「住民センター・チャンネル」が好評

 上羊市街住民センターの情報宣伝担当の莫飛丹さんは、家庭用デジタルテレビをつけた。画面はこの住民センター専属の「チャンネル」である。

 「住民は住民センター・チャンネルを通じて、テレビを使い、暖房費や携帯電話使用料、公共交通情報などを簡単に調べることができます。身動きが不便な高齢者は在宅のままこれらの社区情報や、福祉サービス情報を一目瞭然で知ることができるのです」と莫さんは語る。 

 この住民センターのチャンネルで、「命の旅」という番組が高齢者に好評だ。住民が知っておくべき基本情報――たとえば、高齢者はどのように高齢者優待証を受け取るか、高齢者介護の手続き、企業退職者の異動手続きなど――を問い合わせできる内容だ。

 

「デジタル社区」は「パラダイス」

 杭州市初の「デジタル住民センター」(下城区潮鳴街道)が誕生してから、わずか1年もたたないうちに翆苑、古?、採虹、余杭新城など10の街道が相次いで「デジタル住民センター」を結成し、杭州市西湖区、下城区など8区県(市)をカバーすることになった。

 サービス内容は住民センターによって、それぞれ特徴が異なる。例えば、デジタル潮鳴は民生に重点を置き、湖墅デジタル住民センターはリモート医療看護に重点を置き、郊外県の桐蘆では、デジタル社区に農村ならではの特徴が現れている。商業の中心地に位置する武林デジタル社区では、労働保障や都市管理が占める比重が高い。(中国新聞社発)

 

*社区=もともと英語の「コミュニティー」の訳語。都市部の「区」や「鎮」の下部行政単位の名称。社区内には高齢者の看護施設や医療センターが設置されている。

*街道=「市」「区」の下部に位置づけられる行政単位。「街道弁公室」は日本の市役所の出張所に相当。街道の下に位置する社区とは上下ではなく協力・指導の関係。