認知症ケアの注目度アップ
日本企業が中国の介護市場に続々参入

 

 

人は年齢が上がるほど認知症になる確率が高まる。これは医学の世界では、争えない事実であり、そのうちよく知られたアルツハイマー病は認知症の代表的な病気だ。

日本は1990年代に世界に先駆けて高齢化社会に突入した。それから30年あまり、退職年齢の段階的な引き上げにしても、高齢者の退職後の生活の質の確保にしても、日本は「高齢者にやさしい社会」の構築を模索し続けている。

その中には、急速な高齢化がもたらす認知症患者の増加リスクへの対応も含まれる。中国でも、認知症のリスクがますます注目されるようになってきた。

 

認知症ケアが中日の介護分野の協力の突破口に

日本の認知症研究の第一人者の長谷川和夫氏は1974年に認知症診断の基礎となる「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発し、今や世界的に幅広く使用される認知症初期のスクリーニング検査のツールの一つとなっている。

一方、3年前、90歳近くになった長谷川氏は長年研究してきた認知症を自らも発症し、嗜銀顆粒性認知症(AGD)であることを公表すると、日本社会で大きな反響を呼んだ。

急速に高まる認知症のリスクに対処するため、日本政府は2019年に「認知症施策推進大綱」を可決した。同大綱の策定は、アルツハイマー病を含む認知症の問題が日本の国家戦略の一部に格上げされたことを示しており、関連の研究や治療に大きなサポートを提供することになった。

日本企業の責任者は取材に、「認知症のケアで、日本政府はこれまでにも一連の対応による総合的措置を打ち出しており、その中には専門の医療従事者の育成、新薬の研究開発、定期的な自宅訪問サービス、家庭での介護の担い手への支援が含まれる」と話した。

薬物治療で朗報がある。6月7日、米食品医薬品局(FDA)は日本の製薬会社エーザイと米製薬会社バイオジェン社が共同開発したアルツハイマー病の新治療薬「アデュカヌマブ」を承認した。

これまで症状を一時的に和らげる薬はあったが、疾病発生の原因に働きかけて認知機能の悪化を遅らせる薬は世界初だ。分析によると、18年後に米国はアルツハイマー病の新薬を承認するとみられ、高齢化が進む世界が認知症に対応する上で大きな影響を与えると予想される。

6月末、バイオジェン、エーザー、米製薬会社のイーライリリー・アンド・カンパニーが開発したアルツハイマーの新薬2種類も、相次いで飛躍的な治療法として承認を受けたことが発表された。

上述した責任者はさらに、「医薬品の研究分野で認知症と闘うだけでなく、患者とその家族に対する社会の理解と支援も非常に重要だ。認知症分野の研究と経験の交流が、中日介護分野の協力の突破口の一つになることを願う」と述べた。

 

中国の事情に合わせた介護サービスモデルを構築

今年の「中日高齢者産業交流会」では、日本企業32社が中国社会に向けてオーダーメイドの介護製品を打ち出した。羅婷さんが所属する青島愛克薩高齢者サービス科技有限公司も、中国の事情を踏まえて、日本の介護分野の転倒防止をテーマにした製品である「歩遊軽」と「霊閃護」を打ち出した。

歩遊軽は歩容分析を通じて転倒リスクを評価するとともに、適切な運動メニューを提供するものだ。一方で、霊閃護は転倒のモニタリング・警告機能を備え、生活シーンのモデリングに利用できる。

日本貿易振興機構(ジェトロ)は2014年から中国各地で、「中日介護産業交流会」を開催し、日本の介護サービス、介護製品及び理念を紹介して、双方の協力を強化し、中国の事情に合った介護サービスモデルを共同で模索してきた。

19年6月末に日本・大阪で行われた主要20カ国・地域(G20)首脳会合では、中日双方が10項目の共通認識に達した。

両国指導者は中日が科学技術イノベーション、知的財産権保護、経済貿易投資、財政金融、医療ヘルスケア、介護、省エネ・環境保護、観光など幅広い分野で互恵協力を強化することに合意した。

今年5月、中国国際経済交流センターと日本の国際協力事業団(JICA)中国事務所は、中日の高齢化社会医療介護分野の協力を推進する覚書に調印した。

同センターの張大衛副理事長兼事務局長は、「中日両国が医療介護を切り口として協力を展開することは、両国が人的資源、産業、技術などの面でそれぞれの優位性による相互補完を実現する上でプラスになる。私たちは特に一部の重要問題の研究において、たとえば政府の政策、制度建設、教育研修、産業協力などで、日本の一部の重要な(医療介護の)製品、医薬品、医療機器、サービス項目などを含む面で、中国の一部の地方や企業の教育機関などと踏み込んだ協力を展開してほしいと考えている」と述べた。

日本の経験を中国の介護市場に根付かせられるか

中国日本商会が発表した「中国経済と日本企業2020年白書」によると、「ますます多くの介護サービス産業分野の日系企業が中国の介護市場に進出しようとしており、カバーする分野は幅広く、サービス類(介護施設の運営、在宅介護サービス、人材育成)、介護施設の設計・建設、看護サービスなどの施設運営システム、補助具、補助用品、保健機能食品などがある。両国の事情の非常に大きな違いをどうやって克服するかが、日本の経験を中国介護市場に根付かせられるかどうかを決定づける」という。