日本はどうやってイノベーション環境を維持してきたか

日本はバブル経済が崩壊してから、経済成長率が長期的に低迷し、日本経済の「失われた20年」などと言われている。この時期には、資本投資の伸びも労働力投入の伸びもボトルネックに直面した。しかし日本政府は科学技術イノベーションを強化し、イノベーション環境の建設を充実させることで、経済成長を主導する要因が要素による駆動からイノベーションによる駆動へと転換するよう力強く後押しした。日本の経験は大いに参考になり、学ぶべき点がある。

国の指導を強化
国家イノベーション体系を構築

日本は常に科学技術の研究開発を牽引し、指導することを重視してきた。国家レベルから出発して科学技術発展計画を制定し、研究開発を強化すべき分野を指定し、日本のイノベーションと研究開発を促進してきた。

1995年には「科学技術基本法」を制定し、この法律に基づいて5年に1回、「科学技術基本計画」を策定し、長期的な視野で日本がイノベーションを通じて重点的にブレークスルーを達成すべき科学技術分野を詳細に検討してきた。

2016年には、「第5期科学技術基本計画」(2016-2020年)を策定し、日本の未来の科学技術分野におけるイノベーションは、ロボット、センサー、バイオテクノロジー、材料科学技術、モノのインターネット(IoT)システム、人工知能(AI)などの方面に集中させる必要があると指摘した。

また日本のイノベーション水準を引き上げるため、日本政府は国家イノベーションシステムの構築に積極的に取り組んできた。経済産業省、文部科学省をはじめとする政府部門が協力して、研究プロジェクトのオープンな申請が行える制度を導入し、日本の科学研究プロジェクト資金の分配制度を改善した。

これ以降、日本の大学と研究機関の科学研究プロジェクトの資金源は文科省に限定されなくなり、新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本学術振興会、新技術開発事業団など各機関の研究費を自ら申請することも可能になった。

これと同時に、日本政府は国家レベルの技術開発プロジェクト制度も構築し、工業、医療、環境などの分野の科学技術発展を促進した。たとえば大型工業技術研究開発制度、産業科学技術研究開発制度、医療福祉機器技術研究開発制度、地球環境産業技術研究開発事業制度などの構築を推進した。

財政と税制を併用
中小企業の研究開発を促進

中小企業は日本の企業を構成する重要な要素であり、企業総数の90%以上を占める。しかしここ数年、中小企業の全要素生産性の上昇率は大企業との差がますます大きくなっている。

1980年代中後期は1%前後の差だったのが、21世紀初めは縮小しなかったばかりか、さらに拡大して2%前後になった。そこで日本政府は中小企業の技術イノベーションを引き上げ、全要素生産性を引き上げる措置を取った。主な措置は次の3つだ。

1つ目は、税制改革を通じて、中小企業の研究開発を奨励することだ。
研究開発費増加率に基づいて税金の控除率を計算することとし、中小企業の控除率の上限を12-17%に引き上げた。研究開発費の増加率が5%を超えれば、控除率はさらに10%引き上げられる。また、「中小企業等経営強化法」に基づいて管理改善計画を制定した中小企業は、固定資産の減税措置や減価償却に関する優遇措置を受けられるだけでなく、設備投資に際して日本政策金融公庫の低金利ローンを利用することもできる。

2つ目は、基礎的研究開発に携わる企業に補助金を支給することだ。

先端製造、学際的新興産業、近代的サービス産業の中小企業が行う基礎的研究開発に対し、政府予算による補助金を支給した。2017年の補助金額は1130億円に達した。

3つ目は、中小企業技術革新制度(SBIR)を構築し、新興産業の発展を推進することだ。

新興技術の研究開発を行う中小企業に財政補助金を支給するため、政策金融公庫を通じて中小企業に低金利ローンを提供し、研究開発成果の商用化プロセスを促進した。

産官学協力で
イノベーション活動を推進

日本の各分野の人材と資源を十分に活用し、日本政府が策定した科学技術発展目標・計画を達成するため、日本政府はイノベーション分野の産官学協力を積極的に推進している。主な取り組みとして次の3点が挙げられる。

まず制度レベルで、イノベーション環境の建設を進めた。

1999年に「産業活力再生特別措置法」を、2000年に「産業技術力強化法」を制定し、財政補助金、税優遇などの措置を採用して日本企業がイノベーション関連の設備投資を実施したり、研究開発活動を展開したりするよう促進した。

次に、大学の制度改革を積極的に推進し、大学での研究成果の移転を推進した。

大学の教員と研究者が企業で研究開発を行う兼業を認め、国立大学によるスタートアップ企業への出資やスタートアップ企業設立を推進し、専門職大学院制度を設立して人材育成の柔軟性を高めた。

最後に、産官学分野の協力イノベーションプラットフォームを構築した。

「産官学連携推進会議」を開催し、「先進技術イノベーション拠点」、「科学技術移転拠点」などのイノベーション協力プラットフォームを設立し、産官学の三者が共同でイノベーション活動を推進するよう促進した。

こうした政策が推進・実施されて、21世紀になると全要素生産性の伸びの日本経済に対する寄与度が上昇を続けた。日本がまとめた統計データでは、2007年に全要素生産性増加率は2.75%に達し、日本の経済成長に対する寄与度を極めて大きく引き上げた。