日中間でモバイル決済のデータ争い激化

日本の複数の銀行はこのほど、2020年東京五輪までに新型のデジタル通貨を投入する計画であることを明らかにした。「Jコイン」との仮称の付けられたこの新通貨は、みずほフィナンシャルグループとゆうちょ銀行を中心とした銀行財団が発起し、日銀と金融監督部門の支持も取り付けている。

構想によると、Jコインは、円との等価交換が可能なだけでなく、銀行口座とも連結できる。ユーザーは、スマホアプリを通じて自分の銀行口座から円を引き出し、Jコインに直接両替し、コンビニやレストランでの支払いに使える。個人間のやり取りに手数料は発生しない。

業界関係者によると、日本の金融部門が取った今回の措置は、モバイル決済分野でアリババが日本側の機構に与えている脅威に対抗するためのものと考えられる。

支付宝(アリペイ)の関連データによると、今年の国慶節(建国記念日、10月1日)連休中、支付宝の海外消費取引回数は昨年同期の8倍を超え、一人あたりの消費金額も50%近く上昇した。

アリババは、スマートフォンに基づく電子決済サービスを2018年春に日本で投入し、3年で1000万人のユーザーの獲得をはかるとしている。支付宝や微信(WeChat)での決済は、日本だけでなく世界各地にサービスを展開している。最近ではパリの百貨店「ギャラリーラファイエット」でも微信での支払いが可能となった。比較的有利とされる為替レートで消費者を引きつけている。

 

モバイル決済の争いはデータの争い

「決済をめぐる争いは実質的にはデータをめぐる争いだ」。中央財経大学中国インターネット経済研究院の欧陽日輝副院長は、日本の金融機構によるJコイン打ち出しの最大の狙いは金融安全を確保することにあると指摘する。モバイル決済では大量のマクロなデータを収集することができる。政府が財政政策や通貨政策を制定するための重要な参考資料だ。

欧陽氏によると、経済発展という角度から見ても、モバイル決済データは、その分析を通じて、消費者の消費習慣や消費シーン、消費パターンへの理解を深めることを可能とし、企業による精密マーケティングに有利に働く。ネット上の資産運用など決済技術の進化から生まれた多くの金融モデルには巨大な市場がある。日本の金融企業の発展を護衛することも、Jコインが打ち出された原因の一つだろう。

日本の金融機構はすでに、Jコインの管理会社は、ユーザーの購入や口座振替の記録をビッグデータとして収集することになるだろうと述べている。これらのデータは匿名のデータとして加工され、ほかの企業や銀行と共有され、商品開発や価格戦略へと応用される。

欧陽氏によると、Jコインは実際には、円のデジタル化の一つの形と言える。Jコインは円と直接リンクされ、円と自由に両替できる。こうして価値付けられたJコインは、市場の需求変化で価値が極端に変動するビットコインのような事態は避けることができ、信頼性も高い。

「日本の多くの大型銀行がともに音頭を取り、日本政府の金融部門と中央銀行の支持も取り付けている。Jコインには国家の信用という担保がある」。欧陽氏によると、Jコインは、オンラインとオフラインの各シーンでの支払いが可能で、銀行間振込も手数料なしででき、流通コストも低い。使用できるシーンでは支付宝や微信より優れ、流通性では従来の紙幣を上回っている。

「支付宝と微信はすでに、日本の決済市場で一定の先発優位にある」。欧陽氏によると、支付宝などのモバイル決済とJコインとの競争は、ほかにも数多くの要素に左右される。支付宝と微信はすでに、巨大なユーザー規模と整った決済環境を備え、技術とサービスでもかなりの優位性を誇る。だがモバイル決済を海外で発展させるにはまだ、外国の法律法規や決済習慣、金融インフラ、消費者権益保護などでの違いが克服すべき課題として残っている。