日本人のファッション文化と心理

日本のファッション文化の中で、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは日本の制服だろう。全員が同じ服を着ることのメリットは何かと問われたら、日本ではファッションはアイデンティティーの基礎であるだけでなく、集団精神や仲間意識を育む保護フィルムのような役割があり、考える必要のない面倒な事から守ってくれるものだといえる。

制服というシンボルは自意識を見えない形で洗脳するものであり、異なる集団を巧みに区別し、集団を際立たせ、集団にいる一人一人にそれぞれの役割や集団意識を与えるのだ。

理想の職業や優秀な学校のシンボルとなっている制服を身につけることで、集団の一員になれるという優越感を感じることができ、他者から羨望や憧れの眼差しを向けられる。

制服はこのような視覚的統一性の中に心理的な同一意識を内在している。その一方で、制服の欠点としては個性を自由に表現できないことが挙げられる。この欠点に対しては、自分の制服が他者と区別されることで得られる優越感によって、心理的なバランスを取っている。

他の国では制服による他者との「区別」はあまり好まれないようだ。軍隊や警察など極めて高いアイデンティティーが求められる職業以外で同じ服装を身に着けることはほとんどみられない。どの国であろうと、交通警察や看護師は普段着で働くことは許されない。なぜなら、このような仕事は決まった制服を着ることで自分の職業の役割を相手に示す必要があるからだ。

学校における制服は経済的な条件があまり良好とは言えず、流行のファッションに興味の無い子供にとってはいいことだと言えるだろう。同様に日本の全ての小・中学校の昼食は学校統一の給食を提供することで、毎日の弁当を学生たちが比べ合うといった問題を効果的に解消してくれる。

また、学校の制服には、学生たちに規律を守る意識を芽生えさせようとする国の明確な要求が込められている。自由奔放な子供だったとしても、制服を着ることで、定められた規律をしっかりと守ろうと多少なりとも意識するようになるからだ。

制服は実際に、重要な道徳的役割を備えている。制服を着ることにより、社会においての身分を示し、社会人としての意識を芽生えさせるほか、自分の社会的地位を明らかにし、見えない形で公私をはっきり区別し、その職業への自覚を持つことが求められる。

日本人のサービス意識は世界一流レベルのものだといえる。日本で店員が自分に対して行き過ぎるほど礼儀正しいからといって、その人が自分に好意があると思ってはいけない。

それはその人の仕事だからであって、そこに私的な感情は一切なく、顧客に対しては誠心誠意のサービスを提供するというのは日本人の「仕事はしっかりと意識を持ってやる」という考えに基づいている。