日本の「漢方薬」が世界一流になった理由とは

日本では、中国医学の医師が「漢方医」、中国医学の薬が「漢方薬」と呼ばれている。1967年、日本政府は、健康保険法を改正し、59種類の漢方薬が保険適用の対象になったため、漢方薬が各大病院でも使用されるようになり、急速に普及していった。

80年代、漢方医学は日本で急速に発展を遂げた。漢方薬局は日本全国各地にあり、東京の街中を歩いていると、「鍼灸」や「マッサージ」と書かれたクリニックをよく見かける。また、中国医学を原理とし、漢方薬を原材料とした「薬膳」も、日本の若い女性の間で大人気となっている。

統計によると、日本では現在、約2万人が漢方医学を中心とした仕事に従事している。漢方を研究する学術組織や団体も100近くあり、うち大きな影響力を持つ日本東洋医学会は1万人余りの会員を抱えている。

長年、日本で医学研究を行っている順天堂大学医学部の汪先恩教授によると、日本の漢方薬メーカーは、高品質の漢方製剤を生産することを非常に重視しており、漢方薬の品質向上を開発戦略の重要な柱としている。

漢方薬の品質を確保するために、日本の漢方薬メーカーは、原料生薬から、漢方製剤ができるまでの過程で厳しい品質管理を行っている。日本の漢方製剤生産は、機械化や連動化、自動化が進み、最新の工芸技術、科学的な管理マニュアルがあるため、その生産は世界一流の水準になっている。

漢方医学が継続的に発展するにつれ、日本政府も漢方医学の応用や研究に一層注目し、サポートを行うようになっている。医療政策の面では、厚生省が、ほとんどの漢方製剤を健康保険の対象にしているほか、一部、鍼灸も健康保険の対象にしている。また、東洋医学の診療科を一般病院の中に設置することも認めている。

漢方医学の教育の面では、文部省が世界初の鍼灸大学を設立し、漢方医学を国家教育に盛り込んでいる。さらに、日本政府は大学の中に中国医学診療所や研究所を設置している。

汪教授によると、日本の医学界では現在、多くの若い医師やトップレベルの技術を誇る権威ある西洋医学の専門家も漢方に強い関心を示しているという。

例えば、杏林大学医学部第二外科学教室の鍋谷欣市教授は、日本の漢方の理論や治療に精通しているだけでなく、中国医学の考証理論も熟知している。また、著名な精神科医の故・大原健士郎教授も、「精神科領域における漢方療法の実際」という本を刊行したほか、入院患者に鍼灸治療を勧めていた。

汪教授は、「日本の庶民の間で漢方薬が人気となっているのは、日本が現代社会に突入して以降、『現代慢性病』が増加し、人々は漢方薬を通して良い治療効果を得たいと思っているから」と分析している。

民間調査では、日本人の約8割が漢方薬を使った治療は、慢性病に効果があると考え、6割が漢方薬は健康や長寿を促進すると考えていることが分かっている。

近年、漢方医学が急速に発展するにつれ、臨床で使用される漢方薬も日に日に増加している。漢方製剤は各大都市の薬局で良く売れる商品となっている。

日本の各大手漢方薬メーカーは有効成分を抽出して作った漢方薬の錠剤やカプセルを製造している。そのため、薬を煎じる手間が省け、いつでもどこでも服用することができる。ある調査によると、現在、日本の薬局6万軒の8割以上が漢方製剤を取り扱っているという。

多くの主婦や高齢者は、漢方に関するテレビ番組を見たり、各種漢方セミナーに参加したりして、ありがちな病気の治療に使用できる薬草について学んでいる。

日本は世界で「長寿国」として知られているものの、高齢化が加速し、老人病、慢性病が年々増加しており、治療が難しい一部の病気に対しては、西洋医学はお手上げ状態となっている。さらに、漢方医に助けを求める患者が増えているため、漢方医学にとってはこれまでにない発展のチャンスとなっている。