日本の漫画編集者とはどんな仕事か

最近ある日本のドラマが、近頃盛り上がりに欠ける日本ドラマ人気に火をつけている。ドラマ「重版出来」は松田奈緒子原作の同名漫画をドラマに改編しており、主演は黒木華、オダギリジョー、坂口健太郎ら。日本の漫画編集部の日々を描いた作品で、春クールで一番良かったドラマとの呼び声も高く、情報コミュニティサイトの豆瓣でも9.2ポイントの高得点を得ており、黒木華演じる新人の漫画編集者・黒沢心が奮闘するというストーリーもネットユーザーに前向きなドラマとして人気を集めている。しかし、ドラマとは所詮虚構の中でのこと。現実において、日本の漫画編集者はどんな日々を送っているのだろうか。6月22日、漫画家で漫画コラムニストでもある夏目房之介氏がそんな漫画編集者たちの舞台裏を紹介してくれた。


漫画家で漫画コラムニストでもある夏目房之介氏

夏目房之介氏は日本の大文豪、夏目漱石の嫡孫にあたるが、彼は漫画に魅せられ、70年代からは雑誌で漫画作品を発表していた。同時に「マンガはなぜ面白いのか―その表現と文法」や「夏目房之介の漫画学-マンガでマンガを読む」などの評論作品のほか、「漫画表現論」という原理を打ち立てるなど、日本漫画評論の第一人者とも言える人物だ。「漫画はなぜ面白くなるのか」という特別講座の中で、夏目氏は漫画家の背後にいる編集者が日本の漫画を更に面白くしていると紹介している。これらの人々の存在が、日本のアニメと漫画の創作領域において、編集者本人も気づかない特徴をもたらしているという。しかし、漫画家の背後にいる彼らの仕事は決して簡単なものではない。その大変さは夏目氏という日本漫画界の「古強者」をして、日本の漫画編集者はいくつもの仕事をこなし、多くの役割を担う大変な仕事であると言わしめるほどだ。

役割その1 原作者と原案者

漫画家の小畑健氏はその作品「バクマン。」の中で、高校生コンビが出版社にやって来て、編集者に彼らの作品を見せるシーンを描いている。高校生たちが持ってきたのは完成した作品だったが、編集者は彼らに鉛筆で描いた下書き(ネーム)を持って来れば十分だと告げている。

夏目氏は上記を例に、他の国と異なり、日本の漫画編集者はまず下書きで作品の良し悪しを判断すると紹介している。このほかに下書きをチェックした後で、編集者は漫画家に対し、「このセリフはこういう風に言った方が良い」とか「ここにもう一人女性キャラを加えるべきだ」といったような意見をする。そのため、程度の差はあるが、漫画編集者も作品の原作者あるいは原案者であると言えるだろう。


ドラマ「重版出来」のポスター

役割その2 不動産仲介業者

漫画家との交流の中で、漫画編集者は漫画家の不動産仲介業者としての仕事も担当しなければならない。夏目氏によると、日本の漫画編集者は将来性のある新人を発掘し、その新人が東京に住んでいない場合は、彼らのために住まいを探す。またそれにとどまらず、彼らを鍛えるため、有名漫画家のアシスタントの仕事をさせ、彼らの成長をサポートしていく。そして新人の作品が受賞し、雑誌への連載が決まると、今度は彼らのためにまた新たなアシスタント探しをしなければならないのだ。

役割その3 家政婦

漫画家の人気が出て、仕事を次々受けるようになった時、漫画編集者は何をするべきか。夏目氏によれば、編集者は漫画家の健康状態に注意する必要が出てくると紹介している。体にいい食べ物などを持って、漫画家の家を訪問し、体に気を付けるように忠告し、引き続き頑張るように励ます。このような家政婦の仕事も編集者の役割の一つなのだ。

役割その4 探偵

時と場合によっては、漫画編集者は探偵の役もこなさなければならない。夏目氏は優秀な編集者は漫画家の全てを把握しているとしている。例を挙げると、漫画家がどこで遊んでいるかなど、編集者には手に取るようにわかるのだという。

役割その5 ヤクザ

締め切りのストレスに耐えかねて、漫画家は時に精神が参ってしまうような状況に陥ることもある。漫画「編集王」の中では、漫画家が失踪し、それを編集者が追いかけるというシーンが登場する。

夏目氏はこのようなケースは実際にあることだとし、彼も以前、小学館のある漫画編集者から原稿催促の経験談を聞いたことがあるという。漫画家の家を訪れ、例えドアに鍵がかかっていて、カーテンがぴっちり閉められていたとしても諦めず、まずは電気メーターをチェックするのだという。もし電気メーターが動いていれば、漫画家が家にいるのは間違いないので、その時は思いっきりドアを叩き、「開けてください!いるのはわかっているんですよ!」と叫ぶのだ。夏目氏はこんな編集者はヤクザと大差ないとユーモアを交えて語っている。

夏目氏は冗談交じりで日本では漫画編集者は「労働基準法」が適用されないようなハードな仕事だと語り、それでも毎年多くの大学生たちがこの職業を目指してやってくることから、これらの人々が日本の漫画特有の味わいを生み出していると考えられるだろうとしている。ではどのような編集者が優れた編集者と言えるのかという質問について、夏目氏は、編集者は漫画を描かないが、漫画の良し悪しを判断する素養が必要であり、また読者の立場に立って作品を鑑賞できなければならないとしている。夏目氏は経験者として漫画に従事したいと志す人々に次のようなアドバイスをしている。「作品を生み出し、それを文化作品として社会に出そうとする場合、その作品はその時代の社会のニーズを満たすものでなければならない。これこそが最も重要な点であり、漫画家1人1人と編集者が追い求めなければならない目標なのだ」。