日本の「春運」圧力が中国より低いのはなぜか

毎年の春節の期間中、中国の交通システムは「春運」(春節の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)の巨大な圧力に直面する。今年の春節に、鉄道の広州駅には5万人が足止めされたという。日本でも西暦の正月やゴールデンウィークに中国の春運と同じような移動ラッシュが出現し、新幹線の乗車率が120%に達することもある。ただ地上から空までカバーする整ったインフラネットワークがあるため、日本の春運にかかる圧力は中国ほど大きくはない。

日本では国民が自家用車を買えるようになる前に交通ネットワークが完備した。20世紀の「所得倍増計画」が実施されていた時期に、今なお日本経済を支えるインフラが建設され、名古屋と神戸を結ぶ名神高速道路や東京と名古屋を結ぶ東名高速道路、東海道新幹線などが整備された。

1964年に開通した東海道新幹線は、日本で最初の新幹線だ。新幹線ネットワークは今や全国を基本的にカバーしており、北は北海道の札幌から、南は九州の鹿児島までが、近く新幹線で結ばれることになる。新幹線を下りて各地の電車に乗り換えれば、大体日本中のどこへでも行くことができる。

新幹線は速いが、生活のリズムが加速する日本社会では、よりスピードの速い飛行機に乗りたいと考える人がたくさんいる。日本には現在、国や地方自治体、企業などが管理する各クラスの空港が82カ所あり、本土から遠く離れた小島にも空港がある。日本の国土面積が37万平方キロメートルほどしかないことを考えると、密度は非常に高いといえる。


日本の新幹線

空港が多く、便数も多いため、日本人は少し遠い所に行く時には飛行機に乗りたがる。東京から福岡は新幹線でも5時間ほどだが、多くの人が羽田空港から飛行機に乗り、2時間足らずで到着する方を選ぶ。

鉄道輸送では、時速約300キロメートルの新幹線のほか、各地の鉄道交通も水準の高い安全性、正確性、迅速さ、快適さを実現させている。近郊電車は最高時速が100キロメートル前後に達する。東京の場合、近郊電車の起点は山手線の駅で、たくさんの起点がある。近郊や郊外に向かう近郊電車は、途中駅で快速、準快速、各駅停車などに乗り換えれば、どこの駅からでも都心部までそう変わらない時間で移動することが可能だ。

各地の近郊電車が総合的な交通ネットワークを形成している。理論的に言って、時間を惜しまないのであれば新幹線に乗る必要はなく、何度か乗り換えすれば、普通の電車で日本全国のどこへでも行くことができる。

2010年4月1日、日本の高速道路の総延長は9126.8キロメートルに達し、総面積約37万平方メートルで細長い形をした島国が、ほぼすべて高速道路ネットワークでカバーされるようになった。日本の国道は渋滞が少なく、車での移動が非常に便利だ。

毎年5月のゴールデンウィーク、8月のお盆、12月末から1月初めにかけての年末年始には、高速道路は非常に大変な状況になる。渋滞を緩和するため、国は道路の幅を広げたり、車線を増やしたり、近くに並行して走る2本目の高速道路を建設したりしてきた。第2名神や第2東名の建設により、名神と東名の渋滞が大幅に緩和された。高速道路は料金所のところで渋滞が起きることが多いため、優遇措置つきで電子料金収受システム(ETC)を大々的に普及させたことも渋滞解消に一役買った。


2016年2月26日、重慶駅の「春運」の風景

高速道路を走る長距離バスは価格が安く、日本人の重要な移動手段の一つだ。夜行バスはさらに便利で、東京から大阪まで、新幹線だと1万4千円ほどかかるところが、夜行バスなら3500円からと安い。まだ就職していない学生にとって夜行バスは日常的な足だ。

中国の春運圧力の大きさは、大勢の出稼ぎ者が春節休みに故郷に帰り、家族と団らんするという習慣と関係がある。日本にも戸籍制度はあるが、農村から都市への移動は完全に自由で、農村から都市への大規模な人の移動が可能で、都市部では各種公共サービスを平等に受けられる。

05年の日本の都市化率は86.3%で、圧倒的多数の人が都市交通システムの利便性を享受する。農村は自家用車の保有率が高く、1人に1台というところもある。農村での移動では自動車が極めて便利だからだ。

整ったインフラにより、日本は国内のどこでも、遠い島々でも、市内でバスに乗るような迅速で便利な交通手段を備えている。