「爆買い」ブームに在日中国企業はどうすべきか


来日旅行中の中国人団体客

日本内閣府が2015年12月28日に発表した「日本経済2015-2016」によると、訪日外国人観光客、特に中国人観光客の激増に伴う日本国内の消費の伸びが、日本社会でますます大きな影響力を発揮しつつある。2015年の新語・流行語大賞では、「爆買い」が年間大賞に輝いた。中国人観光客が押し寄せたことによる消費の爆発的な伸びがここからもうかがえる。こうした背景の中、日本の中国系企業はいかにチャンスをつかみ、波に乗るべきだろうか。

冷遇を受ける中国系企業

ビザの発給条件緩和や免税対象品目の拡大により、2015年年初以来、日本旅行の魅力が高まり続けている。共同通信の報道によると、2015年12月中旬の時点で、昨年の訪日外国人観光客数はのべ1900万人を突破、うち中国人観光客はのべ500万人を超え、過去最高を記録した。

中国人観光客に最も人気の高い日本の商品の一つに、炊飯器がある。日本の有名家電メーカーの象印は、2015年の販売額・純利益がいずれも過去最高に達した。

しかし意外なことに、日本市場が爆買いブームに沸く中で、日本の中国系企業は冷遇を受けている。中国留日同学総会の汪先恩会長は取材に対し、「爆買いで利益を得ているのは主に日本企業だ」と語った。日本天津経済発展促進会の杜有紅会長も「中国人観光客は、日本の中国系企業にはそれほど大きな利益をもたらしていない」とする。

その原因として、日本のブランドの多くは長い歴史の中で高い評判と人気を積み重ねているのに対し、中国系企業はこうした日本ブランドに太刀打ちするだけの競争力を持っていないことが挙げられる。また、日本の店舗の多くは中国人観光客に対応するために中国語が話せる店員を雇い、言葉の壁を最大限取り払い、中国系企業と同じ条件を整えている。

発展の可能性

2015年の「爆買い」では利益を獲得することができなかったが、中国系企業は依然として、後発優位性と発展の潜在力を持つ。日本の中国系企業の多くは、中国人との意思疎通が便利、同胞としての感情といった優位性を持つため、中国人観光客は潜在的な消費者と言える。例えば飲食業を見ると、中国と日本は食習慣が違うため、中高齢の観光客は日本の生食が受け入れられず、中華料理店に入りたがる人も多い。食べ慣れた食事は中国人にとって大きな魅力だ。在日華人の叶勛さんは、「華人のレストランで食事をすると、故郷の味を思い出す。店主はよく、同胞と聞くと特別なサービスをしてくれるため、他の華人の友人を誘って中華料理店に行くことが多い」と語る。

また、微信(WeChat)などを使った代理購入業も日本の中国系企業に新たなビジネス手段を提供した。日本を実際に訪れてショッピングをするよりも、代理購入という便利で素早いショッピングを好む顧客が増えている。顧客の心配を払拭するため、購入した物のレシートや購入する様子を撮影した写真を提供するなどして、徐々に市場を開拓している華人もいる。

日本の中国系企業は近年、一致団結して共同発展を模索している。例えば、日本中華総商会は2014年より集団化組織モデルによる発展を開始し、多くの中国系企業、社会団体組織を集めた。汪先恩会長は「日本でビジネスを営む華人は多い。日本中華総商会および各省市の商会などの団体は、その中で協調を図り、統一して計画する役割を発揮し、中国系企業のよりよい発展を手助けしている」と語る。

今後の見通し

「日本経済2015-2016」は、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日観光客数はこれからも大幅に増加する可能性があると指摘している。今の「爆買い」現象がずっと続くとは限らないが、長期的に安定した観光業の発展は、中国系企業にも大きな発展の空間を提供するだろう。

日本メディアの報道によると、日本観光庁などの関連当局は2016年より免税商品の購入記録などのデータを収集し、人気商品の種類やニーズを分析し、入荷・仕入れの参考とするという。汪先恩会長によれば、日本の中国系企業の多くはすでに消費傾向に合わせた生産の調整を準備し始めている。

経済のグローバル化を背景に、日本の中国系企業も、日本市場だけに注目し、孤軍奮闘する従来のモデルから、世界に目を向け、ウィンウィンを図るモデルへと転換している。長期的にみれば、クロスボーダーECの普及や自由貿易区の後押しを受け、華人企業は新たなチャンスに直面するだろう。中でも最も発展の可能性が期待されているのが微信などを使った代理購入ビジネスだ。杜有紅氏は「クロスボーダーECはいま、いくつかの制限や障害に直面しているが、今後は投資協力を通じて強みを最大限に発揮できるようになるだろう」と指摘する。