日本産の「抗日ドラマ」が 中日で話題に

TBS開局60周年特別企画として制作された「レッドクロス~女たちの赤紙~」が最近、中国のネット上で大きな話題となっている。計約4時間の同ドラマを日本産の「抗日ドラマ」としている中国のメディアやネットユーザーがある。


「レッドクロス‐女たちの赤紙-」のポスター

松嶋菜々子が八路軍の軍服姿日本のドラマではまれ

同ドラマで、「赤紙」を受け取り、赤十字の「従軍看護婦」 として中国東北部に赴いた女主人公を演じるのは有名女優の松嶋菜々子。赤十字の「博愛の精神」を信念に、敵も味方も平等に治療したナイチンゲールの精神に共鳴する女主人公は、治療を必要とする全ての人を助けたいという思いを持っていたものの、中国人が旧日本軍に殺害されるのを目撃したほか、夫の戦死や息子が行方不明になるというつらい経験をし、他の日本人と共に中国の八路軍と行動を共にするようになる。

同ドラマでは、出演者が八路軍の軍服を身にまとっているほか、「毛沢東選集」を読んだりするシーンもある。このようなシーンは、これまでに日本のドラマではほとんど先例がない。その他、主な中国人の役を日本人の役者が演じ、中国の多くの抗日戦争ドラマと同じく、各役者が吹き替えに頼ることなく、自分で中国語を話している。

同ドラマの企画を担当したTBSのプロデューサー・瀬戸口克陽氏は、「大きな時代の話をする時、小さな個人を描き切ることが重要」と脚本作りのポイントを挙げる。ドラマでは、子供のころに溺れた時中国人が助けたエピソードや旧日本軍の士官に見つかるかもしれないという危険を冒して、負傷した中国人を助けるなど、女主人公と中国人の平和で打ち解けた関係が描かれている。

実際にあった日本人八路軍

プロデューサーを務めた伊與田英徳氏は、「昨夏、戦争関連番組の打ち合わせの中で、『女性にも赤紙があった』との話を初めて耳にした」という。文献を調べると、従軍看護婦の召集令状が赤かったことから「女たちの赤紙」と呼ばれるようになったことが分かった。2014年9月、中国民政部が発表した「抗日烈士・英雄」300人のリストには、「日本人八路軍」と呼ばれる元日本共産党員・宮川英男など外国人10人の名前も含まれていた。

中日のネットユーザーが熱く議論

豪華出演者であるにもかかわらず、同ドラマの視聴率はそれほど伸びなかった。それでも日本でも一定の注目を集めた。日本の視聴者は、SNSで感想などを書き込んでいる。同ドラマの公式サイトだけでも、1000件近くのコメントが寄せられており、うち最年少の投稿者はわずか12歳だった。ある14歳の男の子は、「このドラマを見て、人類の尊厳やほこり、愛を奪った戦争についてよく考えなければならないと思った」と感想を述べている。

別の中学生も「これまでは戦争系の映画をあまり見ることはなかった。でも、今年は終戦70年で、重大な節目だから、見ることにした。今、多くの人が戦争のことを全く知らずに生きている。このドラマを見て、歴史の全てを知ったわけではないけど、少なくとも平和の大切さを知った」とコメントしている。

中国の大手SNSサービス・豆瓣(douban)にも、同ドラマを見た中国のネットユーザーからコメントが寄せられている。例えば、「このドラマは、抗日戦争をテーマにし、本質は普遍的価値が主旋律。センセーショナルや苦しい思い、博愛、平和などを訴えている。でも、デリケートな話題は避け、『敵』があまり登場していないため、中国人と日本人、両方の感情が考慮されている。近年では進歩とも言えるだろう。それでも、戦争の残忍さだけに偏っていて、客観的に、戦争について冷静に反省するという観点に欠けているという点は、はっきりさせておかなければならない」、「戦争をテーマにした日本のドキュメンタリー系の作品はたくさん見た。でも、日本は侵略戦争に対する反省の念を示すことはなく、単に戦争は誰にも益を及ぼさず、今後絶対に戦争を起こしてはいけないということを伝えているだけ、というのが一番の印象」と、「反省の姿勢が見られない」という声も多く寄せられた一方で、「このようなテーマのドラマが制作されるのは珍しい。小さな個人の観点から、戦争を描き、家族の愛や人情の大切さを伝えている」、「家族愛が詰まり、人情という角度から平和を呼び掛け、戦争の残忍さを明らかにしている。この点からして、積極的な印象を受けた。登場する中日両国の一般人に、いい人もいれば悪い人もいる。とても客観的。どこでも、いい人もいれば悪い人もいるもの」と肯定的な声も寄せられている。

新たな反戦ドラマは若者向け

毎年、終戦記念日の頃になると、日本の各テレビ局が戦争関連の番組を放送する。「毎日新聞」は、「今年はこの種類の番組の放送時間が長い。人気俳優や女優が起用され、若い視聴者をターゲットにしているのが特徴」と分析している。

日本のコラムニスト・作家の松野大介さんは、「各テレビ局が『戦後70年特別番組』を制作しているのは、安倍政権の安保法案改正と関係があるのではないか。安倍政権が、同法案を無理やり通そうとしているため、抗議デモなどが頻発している。反対者は、これは『戦争法案』で、可決すれば、日本の若者が戦争に巻き込まれる可能性があると考えている」と指摘している。このような政治的背景の下、国民の思いを反映した戦争に反対する番組が今後も増えるかもしれない。