中国の改革が中日の協力にチャンスをもたらす

政治関係の悪化の影響により、中日の経済・貿易協力には低迷の流れが見えたが、中国の日本問題専門家は「中日は重大改革を推進中だ。産業構造のアップグレード、省エネ・環境保護、高齢化社会への対応などで、両国は幅広い協力の可能性を持つ」と判断している。経団連の代表団は5月末に訪中した際に、「経団連は日本最大の経済団体として、これまで通り日中関係の正常な発展の回復のため貢献していく」と表明した。

 

 

経済・貿易協力の貴重な成果

税関の統計データによると、2013年の中日貿易額は前年比5.1%減の3125億5000万元(約5兆1000万円)となった。中国商務部が6月に発表した統計データによると、日本の今年1~5月の対中投資額は、前年同期比42.2%減となった。

両国の貿易の低迷について、中国商務部研究院アジア・アフリカ研究所研究員の宋志勇氏は、「これはさまざまな要因によるものだ。まずは、中日の政治関係の悪化だ。それから中国国内の人件費の高騰により、一部の日本の労働力集約型企業が影響を受け、東南アジア・南アジアへの移転を始めている。中日の経済・貿易関係が今日の規模と水準まで発展できたのは、両国の長年に渡る取り組みの結果で、非常に得難いものだ。両国はこれを共に守っていくべきだ」と指摘した。

宋氏は、「中日の2013年の投資額・貿易額は共に減少したが、中日の民間の経済界は依然として良好な関係を維持している。中国経済が今後も高い成長率を維持し、市場規模が拡大を続け、産業の開放が進み、経営環境が改善を続ければ、日本企業は対中投資を増やすだろう」と述べた。

清華大学現代国際関係研究院副院長の劉江永氏は、「日本の対中投資の減少は、新規投資の減少であり、残高は減少していない。日本企業が中国から全面撤退するとは考えにくい。中国のインフラと人材の素養は競争力を持ち、日本企業にとって依然として魅力的だ」と分析した。

 

中日の経済協力が世界経済を刺激

清華大学中国・世界経済研究センター教授の袁綱明氏は、「中日経済・貿易関係は世界で最も重要な経済・貿易関係の一つであり、両国経済は高い相互補完性を持つ。この相互補完は、依然として高い潜在力を持っている。日本の消費者はコストパフォーマンスの高い中国製品、例えば衣料品などを好む。日本の家電、自動車、精密機器などの企業も、中国を主要な海外市場としている」と語った。

宋氏は、「中国は長年に渡り日本にとって最大の貿易パートナーとなっている。両国は現在、各自の経済構造調整の時期にある。両国は今後、グリーン経済、高齢者産業、中小企業、現代農業、技術貿易などで協力を推進し、両国の経済・貿易協力のモデルチェンジ・アップグレードを促すことができる」と話した。

宋氏はまた、「日本の対中投資は設備投資が中心で、技術移転では保守的だ。ゆえに日本の対中輸出の潜在力は、まだ完全には引き出されていない。日本企業と日本の対中投資は、中国の経済構造調整の中で重要な作用を発揮できる」と指摘した。

元在大阪総領事の王泰平氏は、「中日は金融協力、環境保護・省エネなどで幅広い協力の可能性を残している。中日韓自由貿易区の協議が影響を受けずに推進されれば、双方、アジア、世界の経済に積極的な影響をもたらす。日本の経済界の関係者は、両国の経済・貿易関係の安定と発展の維持を切に願っており、中国側と一致している。昨年下半期より、中日の経済・貿易界の交流が活発になり始めた。この良い流れは今後も維持するべきだ」と述べた。

宋氏は、「世界2位・3位の経済体である中日が、経済・貿易協力の水準を高めていけば、両国の企業と国民に利益をもたらすほか、世界経済の成長が緩慢に進む中、アジア・世界経済に大きな希望と自信をもたらす」と期待した。

 

中国の改革が中日経済協力にチャンス

経済構造と発展モデルの調整とモデルチェンジ・アップグレードは、中国経済の基調になろうとしている。約7.5%というやや高めの成長率は、マクロ経済の新たな状態になりつつある。

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏はこのほど東京で、「中国のGDP成長率は近年低下しているが、産業構造の調整が雇用と消費をけん引している。今後一定期間に渡り、経済は高度成長を維持するだろう」と予想した。

中国商務部の沈丹陽報道官は6月17日、「中日貿易には現在回復の流れが見えており、両国の経済協力の環境は前よりは改善された」と述べた。

元駐日中国大使の徐敦信氏は、「中国は1978年に改革開放を始めた。この36年の間に、両国の貿易額は当初の50億ドルから現在の3000億ドル以上の規模に発展した。中国は現在、改革の全面的な深化を始めており、日本企業がこのチャンスを逃すことはない」と分析した。

宋氏は、「中国の新たな改革開放のシンボルである、新設された上海自由貿易区は現在、体制・メカニズムの革新に取り組んでおり、外資系企業の対中投資の利便性を高めることになる。中国はサービス貿易の開放を進めていくが、日本はこの分野で高い競争力を持つ。日本企業はサービス業を今後の中国市場開拓の重要な立脚点とするべきだ。例えば日本が長年に渡り小売業・流通業で形成した、成熟した経営モデルは、中国のサービス業に経験と参考を提供できる」と提案した。

袁氏も、「日本企業は中国経済のモデルチェンジ・アップグレードのチャンスをつかみ、中国市場の開拓を進めるべきだ。日本は中国を単なる生産と組み立ての拠点とするのではなく、消費・研究開発の拠点としての役割を重視し、中国への技術移転と資本集約型産業の進出を加速するべきだ」と主張した。

宋氏は、「中国市場の変化は速く、特に欧米・韓国企業が中国で急速に発展している。日本企業が積極的に中国市場を開拓しなければ、その市場シェアが低下し、淘汰される可能性がある」と警鐘を鳴らした。