日中韓3カ国のテレビマンたちの熱い交流

ドラマのテンポは遅くなる

日本の『とんび』、韓国の『学校2013』、中国の『北京青年』を見て、中国のテレビ関係者たちの多くは、ドラマのテンポとモチーフにはっきりした違いがあると感じたという。『とんび』は突然妻を亡くした父親が、1人で子育てをする物語で、テンポはゆるやかであり、登場人物も少なく、人物の内面の感情を中心として、こまやかな描写を重んじている。『北京青年』は4人の青年が青春を振り返るストーリーで、テンポも話の展開も速く、場面転換も多い。『学校2013』は、2人の高校教師とクラスの生徒たちのそれぞれの物語を描き、上に挙げた二つのドラマの場面の展開とテンポの中間に位置する。

ドキュメンタリーも似たような状況である。中国が出品した『遠方の家:北緯30度中国行―徒歩のメドッグ(チベット自治区の県名)』を制作した周朝永ディレクターによると、これは「スピードドキュメンタリー」であり、CCTV中国語国際チャンネル『遠方の家』シリーズはすでに600回を撮影し、日本が出品した『東北の冬』と同様、撮影地の真実の生活に焦点を合わせたものである。しかし、2つの番組の形態は異なっている。『遠方の家』は記者の視点で、1つの場所で自身が見聞した、躍動感、活気を記録しただけのものだ。日本で制作されるドキュメンタリーは数量的には多くないが、伝統的なスタイルを守っている。『東北の冬』は5、6カ所で数人を撮影し、その後に編集してまとめたものだ。大雪に閉ざされた北国の厳寒にも元気いっぱいな老人たちを、スローテンポに描き、生活の味を伝えている。

中国伝媒大学の張雅欣教授は、「3カ国のドラマとドキュメンタリーは、それぞれの国の社会の歩みを映し出している。日本はすでに先進国であり、ゆったりと静かに待つことができる。しかし、私たちは中国のあわただしい現実の中にいる。この機会に先進国社会の人びとの生活を見ることもできるだろう」と述べている。

 

ドラマの放映回数は短縮化

日本の『とんび』は全10回、韓国の『学校2013』は全16回しかない。それに対し、中国ドラマ『北京青年』は36回である。『とんび』の演出を手がけた平川雄一郎氏によると、このドラマはTBS系列で週に1回、第1回の93分、第10回の73分を除くと、ほかは46分間の放映で、3カ月で終了した。『学校2013』を演出したイ・ミンホン氏は、このドラマは毎週月、火曜日の夜KBSテレビで放映され、1回70分、2カ月で終了したが、学校シリーズは1999年以来、すでに4作が制作されていると述べた。

『当代電視』社の劉原副社長は、日本と韓国のドラマはワンクール単位で、ワンクールが十数回であるが、撮影しながら放映する。これは日韓の国民の好みやテレビ鑑賞の習慣、テレビ局の放映システムから決められたものだとし、「日韓のドラマはアメリカのドラマのように視聴率が良ければどれくらい長くてもいい、というものではない。中国の放送局が放映するドラマはスポンサーがついており、広告収入はテレビ局の収益の40~50%を占めている。一般にドラマが放映される前にCM枠が販売されているので、長さは事前に決まっている」。さらに、「中国の視聴者は多いが、放映システムはまだ明確になっておらず、韓国には民放SBS、MBCや公共放送のKBSに分かれており、KBSにはCMがない。韓国の利益分配方法に学ぶべき点が多い」と述べている。

 

番組テーマの娯楽化

3カ国が出品したバラエティーの中では、韓国の『Dad, Where Are We Going?』に注目が集まった。これは湖南電視がこの番組のリメイク権を獲得し制作した、同タイトルの番組が放映開始とともにブレイクしたばかりのせいだろう。

中国が出品したCCTVのバラエティー『郷約―広西陽朔県』のプロデューサーで司会を務める肖東坡氏によると、日本の『YOUは何しに日本へ?』と韓国の『Dad,……』は娯楽性が高く、とりわけ『YOUは何しに日本へ?』にそれがはっきり現れているという。この番組は日本の空港でカメラマンとインタビュアーが海外からの観光客に「何しに日本に来たのか?」と突撃インタビューする番組で、観光客はそれぞれバラエティーに富んだ答えをするので、気楽に楽しめる。しかし、番組に中国人観光客は登場していない。これについて番組ディレクターは、中国人観光客は多いが、彼らは従来型の観光で素朴な回答が多いため、まだ電波には乗っていないと説明した。

フォーラムでは、中国の出品作品はすべて人間の精神世界を振り返る内容であり、社会の発展の過程で生じたさまざまな問題について考察している。日韓のテレビ関係者は『北京青年』の理想主義、若者たちの精神的訴えに注目している点に驚いていた。『北京青年』を出品した?宝源公司発行広告部の?薪羽副部長は、『北京青年』は他の愛情ドラマや青春アイドルドラマに比べ、テーマが先進性を持っており、ヒューマニズム色が強いと指摘している。

10年来、肖東坡氏は毎週地方を訪ねて1人の農民にインタビューし、番組を制作している。「農民を理解しなければ、中国は理解できない」と彼は言う。週に1回、50分間の『郷約』はすでに10年間作られてきた。今回の『郷約―広西陽朔県』は現地の風土や人情を描くとともに、民宿を経営している女性が8カ国語をマスターし、世界中に友達を持っているというストーリーだった。

肖東坡氏は、来年の『郷約』は改編し、家族の物語についてインタビューしたものにする予定であり、娯楽性が強くなるはずだと語った。

 

誰が誰に何を学ぶのか

この30年来、中国では『赤い疑惑』や『姿三四郎』、『燃えろアタック』などの日本ドラマが人気となり、日本原作の『流星花園(花より男子)』も大変な人気となった。韓国ドラマもまた、『チャングム』や『フルハウス』、『風呂屋の息子たち』、『人魚姫』などが猛烈な韓流ブームを巻き起こした。しかし、中国のテレビドラマは日韓両国において、このような影響力をほとんどもたない。

中国芸術研究院ドラマ研究所の丁亜平所長は、日本のテレビドラマはフォーラムにおいて広く支持され、中国が文化交流の中でいかに民族性を保持するかという点について重要な啓示を与えてくれたとした。

3カ国の制作手法、撮影、編集方法、素材の活用能力、感情や情緒を把握する力などはほとんど差がないものの、「オリジナルを生み出すソフトパワーはまだ不足している」と肖東坡氏は言う。?薪羽副部長は、日本ドラマを高く評価し、日本のドラマはアジアの先頭を走り続けており、韓国ドラマは特に外国からの「取り入れ」が得意だとし、中国はそういった点に学ぶべきだと述べた。

日中韓テレビドラマ制作者フォーラムは2001年に始まって以来、10数年来互いの理解を深めてきており、3カ国のテレビ界の同業者団体として、相互交流・学習や、クリエーターとして励まし合う場を提供し、番組制作における提携の基礎を築いた。イ・ミンホン氏は、学校シリーズ第五弾の『学校2014』の撮影を準備中で、今回はインターナショナルスクールで撮影し、日中韓3カ国の17、8歳の若者たちを主役にして3カ国で共同制作し、世界に向けてアジア人の文化を発信したいと希望している。これに対して日中のテレビマンたちにも、合作の気運はすでに高まっている。克服すべき壁があるにせよ、実現に向けて見通しを立てる意義がある。