ごまかしのきかない日本留学


埼玉大学の中国人留学生

「日本人は苦学を賛美します。日本への留学で、意志と人格が磨かれます」。本誌の呂娟顧問は、日本留学についてこのように述べた。彼女は1990年代に日本文化女子大学で日本文化を学んだ。彼女の印象では、日本に留学経験のある人は皆、多かれ少なかれ、勤勉、気配りがある、真面目といった日本人の生活スタイルの影響を受けていると言う。

「中国人の日本留学にはもともと利点があります。欧米と比べて、食習慣の差異が小さい、文化の共通点が多い、文字が通じ合う、学費が手頃、地理的に近いなどです。留学生活を始めたばかりの頃に受ける衝突や不適応も小さく、留学費用についても普通の家庭で無理がありません。とは言え、日本と中国では多くの点で違いもあり、注意が必要です」。

まず、日本人は、本音で話し中身で勝負するということだ。列に割り込ませない、試験にごまかしがきかない、教師に賄賂など送ろうものなら笑い者になる。ありのままの自分で努力して信用を守る。一度名声に傷が付けば回復するのは非常に難しい。また、礼儀を重んじ法を遵守する。朝だろうが夜だろうが、外出前には身なりを整え、顔見知りに逢えば自分から挨拶をする。「こんにちは」「ありがとう」「ごめんなさい」を常に口にする。人の話をよく聞き、よく見て、よく学び、よく覚えている。特に印象的なのは、機に乗じて得をしようとしないことだ。ワンマン電車で無賃乗車をしている留学生や観光客を目にすると恥ずかしい。呂娟氏は、日本人には他人の利益を決して我が物にしないという考え方があると言う。例えば友人に贈り物をすると、友人も頃合をみて相応のお返しをするか食事に招く。したがって、経済状況が厳しい友人に高価な贈り物をすることは、かえって相手を困らせる失礼な行為となる。

地域に溶け込むには社会活動に参加するとよい。学校やコミュニティでは毎年、記念日や祭日の催しがある。公民館では無料講座や展示会を行っており、時間があればできるだけ参加すべきである。また、きちんとした職場でアルバイトをすることを勧めたい。呂娟氏が留学していた当時、中国人の平均月収は100元(約1600円)ほどで、日本の東京のそれは約2万元(約32万円)であった。授業のないとき、彼女は皿洗いをして生活費、学費、帰省費用のすべてをまかなった。現在、中日の収入格差は縮まったとはいえ、アルバイトは生活費の足しになる。留学生の大半は社会と接触し働く経験をすべき年代に達しているため、アルバイトを通じて日本の風習・文化や、日本人との付き合い方を学ぶこともできる。

ただし、現代社会は誘惑も多い。留学生は意識を正していく必要があると呂娟氏は助言する。留学の成否は、その地の文化を好きになれるか、その中に、求めるものを見つけられるかどうかにかかっている。