東京オリンピック開催決定で日中関係改善なるか

東京がオリンピック開催地に決定後、アメリカ行き飛行機に乗る山口那津男公明党党首は、成田空港でのインタビューに答え、「東京オリンピックは日本の震災からの復興を世界にアピールすることになるだろう」と語った。この言葉は、2011年3月11日の東日本大震災が中日関係に与えた影響を筆者に思い出させた。まさにこの地震は2010年9月7日「船舶衝突事件」が原因で「凍りついた」日中関係を溶かす契機となった。

 

 

大震災を機に関係が緩和

東日本大地震発生後、フェニックス・ネットの調査によれば、中国のネットユーザーの9割が、日本に人道的支援をすべきだと考えたという。多くのネットユーザーは、中国の善意は中日関係に友誼の種を蒔くと信じた。

3月18日,当時の胡錦濤中国国家主席が在中国日本大使館へ行き、被災者に対し弔慰を表した。同日、松本剛明外相は新華社の書面訪問を受け、菅直人政権が両国の各分野、各クラスの交流と協力を推進し、戦略的互恵関係を充実させることを提示した。各レベルでの危機管理システムを作って日中両国間の懸案を善処し、青少年を主とする民間交流により、両国の国民感情の改善を計るといったことであった。

翌日、楊潔?中国外相と松本剛明外相は、小一時間の単独会談に臨んだ。松本外相は中国の支援に感謝を表した。双方はさらに防災協力や放射能安全問題などを協議した。その年の11月13日、胡錦濤主席は横浜で菅直人首相と会談する約束をし、年末には、野田佳彦氏が中国を訪問した。中日関係は明らかに緩和に向かっていた。

 

「日中関係は極めて重要」

2012年9月の日本政府による釣魚島(尖閣諸島)の「国有化」以降、主権争いによって再び氷結した局面を打開する方法はないのだろうか。筆者はこの可能性が全くないわけではないと思う。鍵は安倍首相が重ねて表明しているように、本当に「日中関係は極めて重要である」と考えるかどうかである。

韓国の朴槿恵大統領が今年、中国を訪れたとき、「東北アジアには私が『アジアの対立』と呼ぶ1つの現象が現れています。各国間の経済面での相互依存がますます強まっている一方で、領土主権と歴史問題がこの地域を緊張させています」と表明した。

「アジアの対立」はどのように形成されたのか。筆者は、日本の五百旗頭真元防衛大学学長が『選択』誌上に発表した「アメリカが最も心配しているのは東アジア国家が同盟を結ぶことで、それをこの地域から排除しなければならない。そのためには東アジアの国家間にいろいろ摩擦を生じさせることで、この地に立脚するのが有益である。この『氷結』(領土問題)はアメリカの戦略から生じたものだが、いま日本は引き受けなければならない」という文章が一番明解であると思う。中国のことわざで解釈するなら、「シギと蛙が争っている間に、漁夫の利を得る」ことである。

 

「棚上げ」を受け入れるべき

上記の認識に基づき、筆者は釣魚島(尖閣諸島)問題で、「東京新聞」8月4日の栗山尚一前外務次官が公開で提案した「争いをいったん置くことが唯一の方法である」を、安倍首相は受け入れるべきだと考える。

実際、これは中国側の提案であるだけでなく、かつて双方が共通認識に達していたものだ。靖国神社問題を核心的な歴史問題とすることに関しては、2006年3月、宮本雄二氏が駐中国大使に赴任した時、「政治指導者がいったん決断したら、靖国神社問題は最終的に解決方法が見つかる」と言ったことにたとえられる。たとえ一時的な解決法がなくても、日本政府が靖国神社を参拝しなければ、中国、韓国の両国国民感情を傷つけずにすみ、それ自体が1つの方法であると、筆者は考える。

安倍首相が現実を正視すれば、中日関係の「硬い氷」は問題なく打ち砕けるだろう。そうでなければ「日中関係は極めて重要」という言葉は空論である。なぜなら、中国は核心的利益と国民感情という2つの鍵となる問題に関わっており、いかなる譲歩の余地もないからである。

「安全」は、国際オリンピック委員会が最終的に東京を選んだ根本的な理由である。もし東海情勢が緩和に向かわなければ、どうして安全が守られようか。

(『日本新華僑報網』より抜粋)