日本では持ち家か賃貸か

華僑華人は日本にいる外国人の中で一番多い。日本人の配偶者は別にして、若い華僑の多くは長く賃貸で生活し、住宅を購入するかどうか決めかねている。

経済的負担から賃貸が主流

毎年4月になると、東京には大勢の華僑華人が各地から勉強や仕事にやってくる。日本では大学の寮は経済状況の苦しい学生が対象で、留学生の寮にも制限があり、住める期間も決まっている。大学生は部屋を借りることが一般的で、若い華僑たちもその例外ではなく、学生の時は多くの人が部屋を借りることになる。日本で生活を始めようとする彼らにとっては、賃貸は節約になるし、いつでも引っ越せるという気軽さがあり、大半の人の選択肢となっている。

ある団体が18歳から29歳の在日華人100人に家賃の調査を実施したところ、大多数の人は月に5~6万円だった。大学生の平均家賃は5万8000円で、サラリーマンの家賃の平均は6万4000円。土地の高い東京では、高い家賃は若い華僑にはかなり負担になる。それでも、多くの人は賃貸を選んでいる。

日本の企業は地方にある支社に社員を数年間転勤させることが多い。社員にとっては、早く家を購入してしまうと割に合わなくなってしまうことがある。

名古屋にある企業に入社したばかりの張さんは「今借りている家は、交通の便がよく、家賃も手頃です。それに会社からも近いので、とりあえずここに住むことにしました。将来、他に行きたいところができたら、引っ越せばいいです」と、記者に語った。

『日本新華僑報』が2012年に実施した20代から30代の在日華人600人に対するネット調査によれば、賃貸の方が割に合うと考える人は63%だった。その理由については、23%の人は家を購入すると経済的に負担になるから、77%の人は購入してからもリフォームなどに金がかかるが、賃貸なら引っ越したい時に引っ越すことができるというものであった。

 

決め手は永住するかどうか

日本では華僑華人が住宅を購入する際に優遇政策がなく、土地取得税や各種の手続きは日本人と同じだ。銀行には仕事に対する評価があるので、永住権を取得していない人や職場が安定していない人は審査に通らず、住宅ローンを借りる時に不利である。また、住宅価格も購入者の年収の5~7倍以内の物件でなければならない。

若い女性の李さんは「日本は地震がよく起きるし、災害も多いので、買った家がなくなってしまっても、ローンを払わなければならないと心配している人が多いようです。やはり借りた方が気は楽ですね」と記者に話した。

日中関係の影響で、企業で働く若い華僑たちは仕事の安定性を気にかけている。「人によっては長く日本に住むかどうか分からないし、日本では家を売る時は損をして売るようになるから、買わない人がほとんどですよ」と李さんは言う。

「安定した仕事に就けるかどうかで、将来は国に帰ってもいいと考えています。今は家を買うつもりはなく、2、3年は様子をみようと思います」。東京にあるハードウェアの会社に勤めている白さんは「国へ帰るいいチャンスがなかったり、帰ってもいい仕事に就けないようなら、仕方なく日本で家を買うことになるでしょう」と話した。

若い世代の華僑にとって、子どもの教育をどうするかが、住宅購入を決める際にかなりの割合を占めているようだ。子どもは中国語を話せなかったり、上手でなかったりして、子どもを小学校から日本の学校にあげる人もいる。子どもの教育のために日本に永住して家を購入しようとする家庭もある。

 

住宅購入にも様々なルート

賃貸を選ぶ人が多いが、家を買う人の住宅熱も衰えていない。東京の不動産会社勤務の李さんは記者に話してくれた。「中国の大都市の住宅価格は東京と変わらないか、場所によっては高い所もあります。日本は家の土地所有権があり、相続できますし、法律面でも整備され、価格も安定しています。在日の華僑華人だけでなく、中国国内のお客さんも投資にやって来ます」。

近年、日本の不動産会社は中国市場の開発に積極的に取り組んでいるが、在日の華僑華人を潜在的な顧客として注目しはじめた。

2011年3月5日、温州総商会主催の「在日中国人向け住宅フェア」が浅草の東京都立産業センターで開かれ、400名以上の中国人が来場した。

大手の住友不動産株式会社、東京建物株式会社、東武鉄道、日本エスリート株式会社がこの住宅フェアに出展した。各社はマンションの最新カタログを会場に準備し、よりよいサービスを在日華人に提供したいと思っている。

この住宅フェアでは中国人向け不動産購入講座も開かれ、来場の中国人に日本での不動産の買い方、選び方などについての情報が提供された。

昨年、日本最大の不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」は温州総商会と提携して、中国語のウェブサイトを立ち上げたという。ウェブページには、東京近郊で注目されている新築マンションの紹介以外に、中国人のローン借り入れ申請条件、住宅購入の際に必要となる各種手数料、日本の各銀行の住宅ローンの詳細が載っている。さらに、永住権を取得しているかどうかでも異なってくるので、住宅購入を考えている人は、それぞれ自分に適した条件で考えることができる。

このほか、在日の若い華僑には「融資を受けるのが難しい」という問題があり、中国銀行東京支店は華僑華人向け住宅ローンを提供するために、日本で住宅ローンの融資を開始した。