〈調査レポート&解説〉
中日韓自由貿易圏、3国には高い補完性がある

 

レポート

中日韓FTA(自由貿易協定)の枠組みの下で、三国は産業協力面で巨大な潜在力を有している。

中国と日本の両政府は産業協力を非常に重視しており、ハイレベルな経済対話の中でも重要なテーマである。すでに両国はさまざまな形式による対話と協力の枠組みを構築しており、情報通信技術及びその他の産業協力の面で共通の認識に達している。

中国は韓国とも産業協力の面で積極的な成果を収めている。『韓国-中国経済貿易協力の将来に関する共同研究レポート』は23の産業分野での具体的な協力について記載している。中韓両国は既に科学技術、環境、漁業やその他の産業分野で相互協定あるいは覚書を締結し、なかでもIT産業を、情報技術の飛躍的発展を考慮して、双方の産業協力の優先分野としている。

中日韓三国は今後の10年において、情報、電気通信、文化産業やその他の分野でさらなる協力を進める。協力の効率を高め、透明な政策環境を実現するために、三国は公共部門と民間部門のコミュニケーションを促進し、併せて重点分野での産業協力において政策と情報を共有し、ともにその恩恵を享受するべきだ。また、三国は中小企業の発展を促進し、科学技術分野での協力を拡大するべきだ。緊密な産業協力を通じて、三国はそれぞれが世界全体の産業構造の中で果たす役割と位置づけをよりいっそう明確にし、経済一体化の程度を高めることが出来る。(『その他の問題:産業協力』より抜粋)

解説

中日韓自由貿易圏を建設し、自由な商品流通を実現する根本的な目的は、三国を比較したときのそれぞれの優位性を十分に発揮し、生産要素面の差と産業構造の互換性を十分に利用しあうことだ。また、有効な相互補完を実現して資源の合理的な配置を促進し、三国の産業間で産業内専門化、分化を深め、産業協力による潜在力を有効に掘り起こすことにある。日本や韓国についていえば、技術集約型産業と情報産業が発達しており、中国は労働集約型産業と製造業が発達していて、経済構造の面で三国は非常に高い相互補完性を有している。

すでに三国は、国家間の産業協力を非常に重視し、一定の成果を収めて来た。中日間では省エネ・環境保護、情報通信の標準化分野で研究協力と情報交流が進められている。両国では100以上の省エネ・環境保護の協力プロジェクトを結んでおり、例えば日本の川崎重工と中国の海螺集団が協力した省エネ・環境保護プロジェクトは、セメント生産における電力消費量を効果的に削減し、二酸化炭素の排出量を減少させることができる。

また、中国国家発展改革委員会と日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構が共同で発表し、北京で実証検証中の新交通情報システム技術協力プロジェクトは高精度の交通情報を収集して、渋滞区間を避けて時間を節約する最短のルートを表示することができると同時に、省エネ運転のための有効な案の提供が可能となる。

中韓の産業協力分野はさらに幅広く、情報技術、電気通信、金融、エネルギーなどの分野に及んでいる。中でも情報産業での協力発展のスピードは著しく、2008年に設立したゲーム産業での協力の枠組みは、両国の政府、企業、業界、学校などを総動員して、健全で秩序あるゲーム産業の発展を共同で推進している。

今後、三国の産業協力分野はさらに拡がり、特に新技術分野での協力が強まるだろう。その理由は三国がともに新エネルギー、新素材、環境保護、新世代情報技術などを含む新興産業の発展に力を注いでいるためだ。

三国はレベルの向上のために共同の研究開発を促進すべきだ。そのために政府は、政策環境の透明性を実現し、効果的な産業保護政策を制定しなければならない。政策と情報の共有は、政府が「場を設ける」形で三国の企業の産業協力交流会や新技術情報交流会、資源協力フォーラムなどへの参加を促し、ある程度整備された市場情報を提供することで実現できる。

青島市を例にあげれば、日韓との地理的な優位性、気候も似通っている点が日韓と産業協力を行う「天然」の優位性となっている。改革開放後、特に1990年代以降、青島は日韓の企業が集積し、中国に投資する日韓企業のファーストチョイスの場所として、産業協力の歴史も長い。しかしこうした産業協力の多くは「垂直型」協力で、日韓の企業は中国の豊富な資源を利用し、中国市場が必要としている製品を製造してきた。今後の産業協力は「水平型」に変化し、中日韓それぞれの企業が協力して新技術、新製品を開発して、ともに市場に立ち向かうべきだ。

具体的な産業協力の面で青島市には3つの切り口がある。1つは青島市が都市としての総合力、産業構成などの面で似通った日韓両国の都市を選び、政府間で協力協議を結んで全面的な協力を進めること。、都市間で産業協力プロジェクトを選び出し、それに取り組む企業を組織し、政府がフォローしていくことで円滑な協力を確保する。2つ目は青島西海岸の中日産業パークと中韓産業パークの建設を加速して、日本と韓国の先端技術、先端産業の移転を積極的に受け容れること。特に日韓の海洋設備メーカー、海洋生物、海洋新素材、海洋新エネルギー、海上運輸などの先端プロジェクトの重点的な導入により、モデル的意義を持つ国際産業協力パークの建設を加速して、先駆者的役割を備えた中日韓産業協力基地を建設することだ。3つ目は青島市企業の「海外進出」を奨励し、日韓に対する投資を拡大し、日韓の企業と主体的に協力すること。日韓の先進的な技術、設備、手法、経験と管理面での人材などの優位性を十分に利用しながら自身の成長を促す。そのことで企業あるいは産業の国際競争力を高めることだ。(解説:青島科学技術大学李勛来教授)