“教科書はどこへ消えた?”
――海外で学ぶ中国人子女の苦悩

「我々は生来愚かだから、判断能力が必要である。出生した時になかった物、成長する時に必要な物は、すべて教育によって授けられる」と、ルソーは自著『エミール』で自身の教育思想を述べている。

人間にとっての教育の重要性は、現代における公民の権利として自明の理である。しかし、海外にいる中国系住民の教育にはさまざまな問題が潜んでいる。

 先ごろ、台湾出身の中国人学生がハーバード大学に願書を提出する際、差別されないよう出身国(national origin)の記入欄でアジア出身を隠したというニュースをAP通信が伝えた。

このことは、中国人学生が海外で教育を受ける際に差別が存在するという社会的論議を呼び起こした。確かに、アメリカのアイビー・リーグ(=アメリカ合衆国東部の世界屈指の名門私立大学 8校からなる連盟。世界中から各国のトップ層にランクされる優秀な学生を受け入れている)の中には、アジア系の学生に対する合格基準は他の出身国の学生よりも厳しい。

その証拠に、アジア系の学生のSATテスト(=アメリカの大学へ進学するために必要な試験。英語と数学があり、とくに英語はTOEFLとは比べものにならないほど難しい)の平均点は、白人学生を含んだ他の出身国の学生より高い。そのため、出身国を考慮しない有名校では、アジア系の学生数はアイビー・リーグの2倍になっている。

 中国系の学生が海外で学ぶ苦労は入学時だけではない。進級時にも同様の問題にぶつかる。あるメディアの報道によれば、「兵庫県在日外国人教育研究協会」が県内27市11町に対して調査を行ったが、2006年の全日制高校の進学率が90%以上だったのに対し、中国人学生の進学率は73%だった。言葉の問題や申請書類の複雑さが、多くの中国人学生にとって進学を高き門にしていると分析している。

 また、中国人学生の正当な権利をいかに保護するかは、とくに重視しなければならない問題だ。最近、ニューヨーク市ブルックリンで、13歳の中国系生徒が学校で白人の男子に虐められ、メガネを壊されて鼻血を出した。

保護者は子どもの権益を守るため、何度も学校と交渉したがムダだった。しかたなく、壊れた物の弁償と相手方の謝罪を得るために、地元の市議会議員に助けを求めた。

中国人学生がその国の子どもと同様の保護を受けられ、心身ともに健康で、勉強し生活できる環境を得られるようになるには、まだ遠い道のりを歩まなければならない。

(編集部註:表題の“教科書はどこへ消えた?”は、時代や環境の変化を受け入れるには自分自身が変わらなければ事体は決して好転しない!とのメッセージ性で一世風靡したスペンサー・ジョンソンのベストセラー小説「チーズはどこへ消えた?」を文字って中国現代社会に問題提起している)