「日中友好促進は中国進出日系企業の責務」
横浜ゴム株式会社・野地彦旬代表取締役社長にインタビュー

来年2012年は日中国交正常化40周年の佳節である。この40年の間、特に中国の改革開放以降、日中間には貿易、投資、文化、教育、人材交流などで驚くべき変化があった。中国が「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げるにつれて、ますます多くの日本企業が中国で工場を開業するようになった。

「中国市場」や「中国特需」は日本経済の復興を推進する重要なスプリングボードとなっている。世界第2位の経済大国である中国が、日本経済の発展にとって重要なことは言うまでもない。先日、筆者は中国で成功している日本の上場企業、横浜ゴム株式会社の野地彦旬社長を取材した。

 

横浜ゴム株式会社は1917年に創立され、高分子化学によるゴム製品の生産からスタートした。約100年後の今日では、世界規模でタイヤ、工業用ゴム製品、ゴルフ用品などのゴム製品を生産・販売し、金属、軽量複合材、航空部品、特殊複合材といった製品の開発、生産を行っている。横浜ゴムは現在、世界ランキング7位のタイヤ・ゴム製品メーカーで、タイヤのブランド名「YOKOHAMA」は世界的にも有名である。また、チューブレスタイヤの研究開発と生産を世界に先駆けて行った企業であり、タイヤ産業と自動車産業に一大革命をもたらした。

 横浜ゴム有限公司(中国)は横浜ゴム株式会社が中国で全額出資した子会社だ。2005年11月に上海市で設立され、2006年4月に運営をスタートした。同公司は主に横浜ゴム傘下のタイヤやゴム製品の生産工場、販売会社など計8社を経営・管理し、中国プロジェクトにおける投資や拡張を行っている。

これまでに中国で30の省、自治区、直轄市で2000カ所近いYOKOHAMAタイヤ販売サービスネットワークがつくられ、中国全土をカバーしている。現在、対中投資額は3億米ドルを超え、今後もさらに拡大することが予想される。

 野地社長は「中国は現在、世界でタイヤの使用量が最も多い市場の一つであり、中国の経済発展と国民生活のレベル向上に伴って、中国のタイヤ使用量およびタイヤ販売市場はより大きな発展を遂げるでしょう。横浜ゴムのグローバル戦略は中国を中心に立てられています。中国の国内市場だけを対象にするのではなく、中国から世界全体へ広げていくことも考えています。横浜ゴムが着目しているのは、20年後、30年後、50年後の中国市場と世界における中国の役割です」と語った。

 横浜ゴムの市場を制する秘訣は「製品が売れる場所での生産・販売」にある。たとえば、中国は今、世界で各種車両のタイヤがもっとも売れている国だ。今後、中国の自動車工業の発展と国民生活の向上に伴い、高品質、低燃費の横浜ゴムのタイヤはもっと売れるだろう。中国のタイヤ市場は大きな将来性がある。 

現在、中国国内には販売会社と生産拠点など8社の子会社を保有している。今後、環境保護、エコカーなどの需要に応じて、中国市場での拡大が加速されるだろう。タイヤの走行抵抗を軽減することにより、燃料の効率を高くし、二酸化炭素の排出量を抑えることができる。

このようなタイヤは環境にもよい。環境保護の面から、野地社長は会社の高い技術で生産されたタイヤに自信を持っている。「BluEarth」理念の新タイヤも上海の自動車展示会で発表し、注目された。ボストン博物館にも展示され、その品質の良さは高い評価を得ている。

 野地社長は「来年は日中国交回復正常化40周年の佳節であり、横浜ゴムが中国で順調に発展していくことが日中友好につながります」と語った。さらに「中国で事業展開していく中で、地方政府と関係者が協力してくれました。中国の従業員たちは横浜ゴム(中国)の主力軍です。日中の経済交流も日中友好であり、多くの日本人が中国を訪れ、さらに多くの中国人が日本を訪問する。経済交流を通じて相互理解と友好を深めていけるのです」と述べた。

 横浜ゴムの中国での戦略について話が及ぶと、野地社長は「企業の目的は利益追求にありますが、お金儲けのためだけではビジネスは順調にいきません」と指摘した。中国で失敗した外国企業は、おそらくこの点に原因があるだろう。

横浜ゴムでは、自分たちも中国社会の一員と考え、現地の地方政府、団体のさまざまな社会活動に積極的に参加したり、地元の人々との交流を通して社会に溶け込む努力をしてきた。

日中友好の促進は、両国政府、両国人民の責務であり、さらには中国における日系企業の責務である。中国の日系企業はもっと積極的に日中友好を推し進めるべきであり、そうすることが日本企業の中国での発展を促すことにもつながる。

 野地社長は、2017年の横浜ゴム株式会社創業100周年を迎えるにあたり、国内外の生産拠点に50万本の苗木を植えるという「YOKOHAMA千年の杜」プロジェクトについて次のように語った。

「このプロジェクトは2007年から始まりました。今年の夏、中国のトランスミッションの生産、販売会社である山東横浜ゴム工業製品有限公司の工場で、第1回植樹祭が行われました。すでに各生産拠点で20万本が植樹されました。このプロジェクトは世界各地の子会社で、それぞれの土地で育った樹木の苗を植樹するというものです。多種類の苗を自然林に近い状態で育て、自然災害に強い環境防災保全林を造ろうとするものです。この樹林は二酸化炭素を吸収、空気を浄化、環境を美化し、従業員のための職場美化や健康のための環境づくりに役立ち、地元社会にも貢献することになるのです」。

 横浜ゴムの経営理念は、「安全」と「環境」を最大限に考慮し、先進技術をリードして、高品質の製品を社会に提供することにより、社会に還元することなのである。