TPP加入――日米の同床異夢

本来1月10日に行われる予定だった日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉加入を宣言するはずの記者会見は、野田佳彦首相の強力な推進にもかかわらず、国内の大きな反対に遭って、延期せざるを得なかった。

 TPPは2002年に準備が始まった多国間自由貿易協定で、その目的はアジア太平洋地域の貿易自由化であり、アメリカ主導の下で現在9カ国が参加している。日本政府が国内の大きな反対の声を押し切って、この時期にTPP加入を探っているのは、いったいどんな目的があるのだろうか。

 寄らば大樹の陰。日本がTPP加入を検討しているひとつの重要な理由は、アメリカの力を借りて日本のアジア地域での地位を向上させることだ。しかし、日本の意図がこれだけにあるのではないことは明らかだ。

専門家は、日本政府の今回の行動は、①アメリカが日本との関係をおろそかに出来ないようにする、②アメリカに対する一種のアピールだと指摘している。TPPはその成立以来一向に拡大していない。

もし日本政府がこの時期にTPP加入を宣言すれば、アメリカにとっては助け舟になる。日本政府はアメリカの要望に応える以上、当然アメリカからの何らかの見返りを望んでおり、ある種の問題での支持を当て込んでいる。

 では、アメリカの意図はどこにあるのか。イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』は、アメリカがTPPを積極的に推進するのは、アジア太平洋地域の主導権を掌握することがさらに重要な目的だ、と報道している。

専門家は、アメリカはTPPを通じて“アジアでの復権”を実現し、アメリカを中心としたアジア太平洋地域の新しい秩序を作り上げようとしていると指摘している。他にも、TPP協定の締結を通じて、アメリカの輸出を促進しようという考えもある。日本の京都大学教授、中野剛志氏は、オバマ米大統領が日本のTPP加入を迫るのは来年の大統領選挙を考えてのことにほかならず、これによって外交成果を誇示したいのだと指摘している。

 ある分析では、もし日本が加入すれば、日米両国の経済規模がTPP加盟国全体の91%を占め、TPPは事実上の「日米自由貿易協定(FTA)」になってしまう。そうなると日米両国が主導するところとなるのを避けられないと指摘している。一部の国々はこの点を懸念している。日本とアメリカにはそれぞれ思惑があるにせよ、最終的には「同床異夢」であり、果たして日米がそれぞれの思惑を実現できるかどうかは、今後も観察が必要だ。