東アジアの地域協力こそ進むべき道
シンポジウム「転換過程の国際システム――中国と東アジア」

アメリカが再びアジアへの強力なコミットメントを示し、インドが(ベトナムとの共同石油開発を通じて)南中国海問題に介入し、中日朝韓には領土紛争が絶えない。北京の秋は雲淡く、吹く風は爽やかだが、東アジアの空は晴れとも曇りとも言い難い状況だ。

10月22日、アメリカ、日本、韓国、インドと中国の60人以上の国際政治分野の著名な専門家、研究者が一堂に会し、国際学術シンポジウム「転換時期の国際システム――中国と東アジア」に参加。異なった角度と視野に基づいた建設的な発言を行った。このシンポジウムは中国政法大学政治公共管理学部が主催し、国際政治学部が運営に当たった。

 

現実は「協力」と「衝突」が混在

 ソ連が解体して冷戦が終結した後、東アジアの枠組には大きな転換が生じた。飛躍を続けている地域大国として、中国と東アジア各国の関係にも微妙な変化が生じており、協力もすれば衝突もするという状況だ。 「遠い親戚より近くの他人」という古い諺が中国と東アジア各国の関係の重要性を適切に表現している。

この地域には既に「ASEAN 10+3」、「東アジアサミット」などの協力の枠組が形成されており、東アジア各国の協力が多くの分野で一定の進展を遂げていることを示している。中国政法大学の張桂琳教授は、全世界的な国際システムの転換過程で、協力による繁栄の促進が各国共通の選択になっていると考えている。

 協力と衝突が同時に存在していることもまた否定出来ない。まず挙げられるのは東アジア各国の中国の発展に対する懸念だ。国防大学の唐永勝教授は、日増しに強まる経済面の実力が中国の安全戦略の変更と国家利益拡大をもたらしていることが、東アジア各国の中国に対する不信の要因と考えている。

さらには互いの利益の衝突も背景になっており。中国政法大学の孫承教授は朝鮮半島問題、人権問題、テロなど、従来とは異なる安全上の脅威も東アジア地域の協力の道筋に横たわる障害だと指摘している。このほか、地域外の国の参入や干渉もまた東アジア地域の国々の関係発展に影響する重要な要素になっている。外交学院の泰亜青教授は「アメリカの東アジア政策、中米関係の動向が直接、東アジアの協力と発展に影響を及ぼしている」と指摘している。

  

「調和」と「責任」が重要テーマ

 中国は社会が転換する過程で生じる多くの深刻な課題に直面しているとはいえ、国際的な影響力が日増しに高まっているのもまた明らかだ。中国現代国際関係研究院の林利民研究員は「飛躍を遂げた中国は既に東アジアの枠組を変換する重要な要素になっている」と指摘する。

国防大学の朱成虎教授は「中国は“でしゃばらず”、“他国の内政に干渉しない”外交政策を堅持するとともに、成長中の大国が必ず直面する局面に応えることで、“利害関係者”の立場から積極的に“国際責任”を果たすという転換を実現しなければならない」と考えている。

 日本の愛知大学・高橋五郎教授は、中国の対外的な影響力を研究テーマとする「国際中国学」が確立されて来たことが中国の国際的な地位の上昇を示していると紹介した。中国の前駐ミャンマー、インド大使・程瑞声氏は「中国は『実力+道義』という原則を堅持するにより、各国が異なったベースで自身の優勢を発揮することを尊重し、東アジア地域の協力に貢献すべきだ」と指摘した。

また中国の前インドネシア大使・陳士球氏は「地域差と不信感を排除し、東アジア各国間の交流と協力を強めることが必要だ」と述べた。吉林大学の劉清才教授は「政治、経済、軍事面などの総合力を重点的に発展させることが大国として飛躍する前提条件であり、自らの実力と国際的な道義に見合う責任と任務を積極的に担うことが国際的な地位を向上させる重要な道筋だ」と提起している。

 

相互信頼と協力で未来を切り開く

 初めて東アジア共同体構想を唱えた「マハティール提議」から20年を経ても、ASEANのシステム構築は未だにぼやけたまま実質的な進展を見せていない。日本・名古屋大学の定形衛教授は「東アジア各国は地域のアイデンティティーの概念を育み、東アジア共同体建設を地域協力の重点に据えるべきだ」との考えを述べた。

 北京大学の梁守徳教授は「東アジア共同体の建設には多くの有利な要素がある。例えば東アジア各国が長い歴史的発展の過程で形成してきた儒教文化に基づく共通の価値観、潜在する共通利益と外部リスクを防ぎ止めるという適切なニーズ、そして東アジア各国が求めている公正で平等な国際的地位への願望などがそれだ」と述べた。

中国政法大学の常保国教授はシンポジウムを総括し、中国と東アジア各国の交流協力と安定し調和の取れた東アジアの新秩序建設に楽観的な見通しを述べた。中国と東アジア各国はすべて良好な関係によって共に発展していかねばならない。世界各国も中国の発展を客観的、公正に評価し、古い考えに基づいた戦略の判断ミスは避けねばならない。調和のとれた世界を実現するには多くの共同の努力が必要であり、手を携えて協力してこそ美しい未来が訪れる。