野田「どじょう内閣」は日本を救えるか?!

日本の新首相、野田佳彦氏は自らを「どじょう」にたとえ「金魚」ではないと述べた。自分は庶民の出身で地道な人柄で政界に活力をもたらす力があると表明した。うなぎを飼ったことのある人はわかるが、うなぎの群れのなかに数匹のどじょうを入れれば活気を帯びるようになり、窒息死を防ぐことができる。

 「どじょう」首相が「どじょう内閣」をつくる

「好きな言葉があります。どじょうはどじょうの持ち味がある。どじょうが金魚のまねをしてもしようがない。どじょうは泥臭く、国民のために汗をかいて働いて政治を前進させる。どじょうの政治をとことんやり抜いていきたい」。

これは海江田万里氏との民主党代表選決選を前に野田氏が語った言葉である。

9月2日に誕生した新内閣は17人中10人が初入閣であり、内閣官房長官、財務大臣、外務大臣、防衛大臣など重要なポストは初めての閣僚によって担われる。野田氏は自らを質素な「どじょう」にたとえたばかりでなく、新しい内閣は知名度の高い顔が少なく、メディアは新内閣を「どじょう内閣」と呼んでいる。

新しく防衛大臣となった一川保夫氏は農業政策の専門家だが、防衛省を管轄することを任されメディアを驚かせた。安住淳新財務相は、前民主党国会対策委員長でメディア対策を行っていた。自分が任命されたことを「サプライズ」と語った。

このほか民主党指導部の人事では、野田総理は75歳の参議院議員会長の輿石東氏を民主党幹事長に任命した。中間派の人物、元国会対策委員長の樽床伸二氏(52歳)を輿石氏を輔佐する幹事長代行に、「反小沢」の急先鋒である元外相の前原誠司氏(49歳)を政策調査会長に、元官房長官の平野博文氏(62歳)を国会対策委員長に任じた。

心を砕いた内閣の人選

この新内閣について『読売新聞』は次のように書いている。「大物が消えてしまった。留任した鹿野道彦氏、細野豪志氏、蓮舫氏、玄葉光一郎氏以外は、あまり政治に関心のない国民は『いったい誰なの?』と聞くであろう」。

野党陣営は新内閣の顔ぶれには冷ややかな反応である。ある自民党議員は、野田首相が起用したのは中間派と実務派だが、多くが入閣の経歴がない。しかも、財務相、外相をはじめとして重要な閣僚が職務を担う能力があるかどうか疑わしいと述べている。

民主党内部の反応は様々である。小沢一郎氏と平野博文氏は「党内の団結を考慮した」結果とみている。しかし、一部の民主党議員は「新内閣の顔ぶれは新鮮でも意外でもない」と考えている。このような人事で、民主党は反撃できるのだろうか。

専門家は次のように分析している。野田新内閣は彼の言うところの「挙党一致」を実現した。民主党政権が誕生して以来、党内の紛争が絶えず、それに多大の精力を費やし、政策の決定や実施に大きな障害となってきた。野田首相は「挙党一致」によって党内からの牽制を少なくすることができると分かっている。 

また、新内閣の人事は前内閣の構成を配慮したものである。日本は国難に直面している。目前の課題を解決しなければならない環境大臣、復興大臣は留任している。文部科学大臣、厚生労働大臣などは前副大臣である。

活力はもたらされるのか

専門家は分析している。民主党が新しい顔ぶれで組閣したのは、野田首相の党内での苦しい立場を反映している。しかも、閣僚の多くがぎりぎりの時点で決まっているのは、民主党内の「人材不足」を反映するものである。

次のように分析する人もいる。野田首相の党内の調和、各派の利益や配慮は、実際に大した新味はなく、内閣を大きな「オードブル」に仕立てただけだ。首相は上手にまとめていく力があるのだろうか。

輿石氏が8月30日、小沢氏の党員資格の一時停止を再び考慮するだろうという表明は、小沢氏への処分とその政策路線が党の内外に禍根を残しているということであろう。

野田首相は、著書「わが政権構想 今こそ『中庸』の政治を」の文中で、与野党が一致協力することを提起し、連合政権あるいは「閣外合作」を実現したいと述べている。

この提案は野党の自民党と公明党に受け入れられなかった。新内閣には国民新党の閣僚(留任)が一人しかいない。谷垣自民党総裁は、国会で2011年度第3次補正予算案が通過したら衆議院が解散選挙を行うことを望んでいる。このことも動き出したばかりの野田新内閣を覆っている暗い影である。